ゼロからの高校物理 / 物理基礎 / 仕事とエネルギー

力学的エネルギー保存の法則(保存される運動)

要点

力学的エネルギーE = K + U
保存(重力)12mv12 + mgh1 = 12mv22 + mgh21 ははじめ、2 は後の場面です。h は基準面からの高さです。
保存(弾性力)12mv12 + 12kx12 = 12mv22 + 12kx22x1・x2 は、はじめと後の位置です(自然の長さが 0、伸びた側が正)。
成り立つ条件重力・弾性力のほかの力が、仕事をしないとき

1自由落下と力学的エネルギー

運動エネルギーと位置エネルギーの和を力学的エネルギーといい、自由落下では、ボールが落ちても力学的エネルギーは変わりません。

質量 m の物体の運動エネルギーは K = 12mv2(v は速さ)、重力による位置エネルギーは U = mgh です。g = 9.8 m/s2 は重力加速度の大きさです。U = mgh の h は、基準面(高さ 0 と決めた面)からの高さです。この項目では、地面を基準面とします。

運動エネルギーと位置エネルギーの和を、力学的エネルギーといいます。力学的エネルギーは、記号 E で表します。

E = K + U
単位は、K・U と同じ J(ジュール)です。

地面から高さ 25 m の所から、質量 1.0 kg のボールを静かに放します。このページでは、空気の抵抗は考えません。だから、ボールは自由落下します。自由落下では、放してから t 秒間に落ちる距離は 12gt2、t 秒後の速さは gt です。放してから 1.0 s 後には、ボールは 12 × 9.8 × 1.02 = 4.9 m 落ちています。だから、地面からの高さは 25 − 4.9 = 20.1 m です。速さは v = 9.8 × 1.0 = 9.8 m/s です。

高い建物の屋上の横、高さ 25 m の所でボールを静かに放す場面。ボールは壁から少し離れた所をまっすぐ下へ落ち、0 s で高さ 25 m、1.0 s で 20.1 m、2.0 s で 5.4 m の所を通る 地面(基準面) ここで静かに放す 0 s 高さ 25 m 1.0 s 高さ 20.1 m 2.0 s 高さ 5.4 m
時刻 t 2.26 s 高さ h 0.0 m

時刻は実際の時刻です(1/2 の速さで動きます)。空気の抵抗は考えません。

0 s、1.0 s、2.0 s と、地面に着く直前(約 2.26 s)のときの、高さ・速さと3つのエネルギーは、次の表のようになります。エネルギーは、1 J 単位に丸めています。計算の流れを見せるため、高さは丸めずに書きます。

時刻 t [s]01.02.02.26
(地面に
着く直前)
高さ h [m]25.020.15.40.0
速さ v [m/s]09.819.622.1
運動エネルギー K [J]048192245
位置エネルギー U [J]245197530
力学的エネルギー E [J]245245245245

たとえば 1.0 s の列では、K = 12 × 1.0 × 9.82 = 48.02 ≒ 48 J、U = 1.0 × 9.8 × 20.1 = 196.98 ≒ 197 J です。和は E = 48 + 197 = 245 J です。

0 s から 1.0 s の間に、K は 0 J から 48 J へ、48 J 増えました。同じ間に、U は 245 J から 197 J へ、48 J 減りました。1.0 s から 2.0 s の間も、K は 144 J 増え、U は 144 J 減りました。2.0 s から地面に着く直前までは、K は 53 J 増え、U は 53 J 減りました。K が増えた分と、U が減った分が同じなので、和の E は 245 J のまま変わりません。

0 s から 1.0 s の間に、ボールは重力(下向きに 1.0 × 9.8 = 9.8 N)の向きに 4.9 m 動きました。仕事は「力の大きさ × 力の向きに動いた距離」なので、重力がボールにした仕事は、W = 9.8 × 4.9 = 48.02 ≒ 48 J です。物体の運動エネルギーは、された仕事の分だけ変わります(12mv2 − 12mv02 = W。v0 は仕事をされる前の速さ)。だから K は 48 J 増えます。一方、高さが 4.9 m 下がったので、U = mgh は 1.0 × 9.8 × 4.9 ≒ 48 J 減ります。重力がした仕事の分だけ、U が K に移ったと考えることができます。

このように、重力だけが仕事をするとき、力学的エネルギーは一定に保たれます。これを力学的エネルギー保存の法則といいます。「保存」とは、変わらずに保たれることです。

保存の法則を式で書くときは、はじめの場面と後の場面を、小さな数字で区別します。v1・h1 ははじめの速さと高さ、v2・h2 は後の速さと高さです。小さい数字は、区別するための番号です。

はじめの力学的エネルギーと、後の力学的エネルギーが等しいので、次の式が成り立ちます。

12mv12 + mgh1 = 12mv22 + mgh2
左辺がはじめ、右辺が後の力学的エネルギーです。
地面から高さ 25 m の所から静かに放した 1.0 kg のボールの、時刻ごとの高さと、運動エネルギー・位置エネルギー・力学的エネルギーの棒グラフ 高さ [m] 地面(基準面)h = 0 放した点 1.0 kg エネルギー [J] 運動エネルギーK 位置エネルギーU 力学的エネルギーE

地面を基準面としています。空気の抵抗は考えません。

運動エネルギー K J 位置エネルギー U J 力学的エネルギー E J

やってみよう

時刻 t を 0.5 s から 1.5 s に変えてください。運動エネルギー K と位置エネルギー U は、それぞれ増えましたか、減りましたか。力学的エネルギー E はどうなりましたか。

分かること

K は 12 J から 108 J に増え、U は 233 J から 137 J に減りました。増えた分も減った分も 96 J で、E は 245 J のままです。

確認

ボールが落ちていくと、位置エネルギーは減ります。減った分は、どこへ行きますか。

答え

運動エネルギーになります。減った分と同じだけ、運動エネルギーが増えます。

例題

地面から高さ 10 m の所から、質量 2.0 kg のボールを静かに放しました。ボールが地面から高さ 5.0 m の所を通るときの速さを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とし、空気の抵抗は考えません。

  1. 地面を基準面とします。はじめは放した点(高さ 10 m、速さ 0)、後は高さ 5.0 m の所です。
  2. はじめの力学的エネルギーは、E = 0 + 2.0 × 9.8 × 10 = 196 J です。
  3. 後の位置エネルギーは、U = 2.0 × 9.8 × 5.0 = 98 J です。
  4. 力学的エネルギーは 196 J のままなので、後の運動エネルギーは K = 196 − 98 = 98 J です。
  5. 12 × 2.0 × v2 = 98 なので、v2 = 98 です。v = √98 = 9.89… m/s です。√98(ルート 98)は、2 乗すると 98 になる正の数です。
  6. 与えた数(10、5.0、2.0、9.8)が 2 桁なので、答えも 2 桁にそろえて ≒ 9.9 m/s とします。

答え: 9.9 m/s

2なめらかな面をすべる物体

なめらかな面をすべる物体でも、力学的エネルギーは保存されます。静かにすべらせたときの下での速さは、すべり始めの高さだけで決まります。

なめらかな(摩擦のない)面の上に小さな物体を置き、静かにすべらせます。物体にはたらく力は、重力と、面からの垂直抗力の2つです。

左上から右下へ下りる、なめらかな曲がった面の上の方に、小さな箱が置いてある場面。箱から面に沿って下向きに、すべる向きを示す点線の矢印がある 静かにすべらせる すべる向き なめらかな面(摩擦がない) 床

垂直抗力は、いつも面に垂直な向きにはたらきます。物体は、面に沿って動きます。だから、垂直抗力の向きと、物体が動く向きは垂直です。力の向きと動く向きが垂直なら、物体は力の向きには少しも動かないので、その力がする仕事は 0 です。曲がった面でも、面の各点で、垂直抗力は動く向きと垂直です(下の図)。

左上から右下へ下りる、へこんだ形のなめらかな曲面。上のほうの急な所と、下のほうのゆるやかな所に同じ小さな物体があり、どちらでも垂直抗力の矢印は、面に沿った動く向きの点線の矢印と直角になっている。重力の矢印は、どちらも真下で同じ長さ 垂直抗力 動く向き 重力 垂直抗力 動く向き 重力

緑の矢印が垂直抗力、赤の矢印が重力、点線の矢印が動く向きです。

仕事をする力は、重力だけです。だから、なめらかな面をすべる物体でも、力学的エネルギーは保存されます。

物体を、床から高さ h の所から静かにすべらせ、床(面のいちばん下)まで下りたときの速さを v とします。床を基準面とします。はじめは K = 0、U = mgh です。床では K = 12mv2、U = 0 です。保存の法則から、mgh = 12mv2 です。両辺に m があるので、両辺を m で割ると、gh = 12v2 です。両辺を 2 倍して、v2 = 2gh です。だから、v = √2gh です。

v = √2gh
なめらかな面を、高さ h の所から静かにすべらせたときの、下での速さです。

高さ 4.0 m なら、v2 = 2 × 9.8 × 4.0 = 78.4 なので、v = √78.4 ≒ 8.9 m/s です。式に m が残らなかったので、下での速さは物体の質量によりません。

v = √2gh には、面の傾きや形が入っていません。だから、高さ h が同じなら、急な斜面でも、ゆるやかな斜面でも、曲面でも、下での速さは同じです。ただし、下に着くまでの時間は、面の形によって違います。

曲面では、面の傾きが場所によって変わるので、加速度も場所によって変わります。だから、加速度が一定のときの式(等加速度直線運動の式)は使えません。力学的エネルギー保存の法則なら、はじめと後の高さと速さだけで、途中の形を考えずに速さが求められます。

急な斜面・ゆるやかな斜面・曲面のどれかを選び、高さ h の所から静かにすべらせた物体が、床に着いたときの速さを表示する図 高さ [m] 床(基準面) 速さ v

面はなめらか(摩擦がない)で、空気の抵抗は考えません。床を基準面としています。

下での速さ v —

やってみよう

高さ h を 2.0 m にし、「急な斜面」のボタンを押してから「すべらせる」を押し、下での速さを読んでください。次に「曲面」のボタンを押して、もう一度「すべらせる」を押してください。下での速さは変わりましたか。

分かること

どちらも 6.3 m/s で、変わりません。

確認

なめらかな面の上をすべる物体に、垂直抗力は仕事をしますか。

答え

しません。垂直抗力の向きは、物体が動く向きと垂直だからです。

例題

なめらかな曲面の、床から高さ 4.5 m の所に小さな物体を置き、静かにすべらせました。物体が床から高さ 2.0 m の所を通るときの速さを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

  1. 仕事をする力は重力だけなので、力学的エネルギーは保存されます。
  2. 床を基準面とし、物体の質量を m とします。はじめは高さ 4.5 m・速さ 0、後は高さ 2.0 m・速さ v です。
  3. 保存の法則から、0 + m × 9.8 × 4.5 = 12mv2 + m × 9.8 × 2.0 です。
  4. 両辺を m で割ると、9.8 × 4.5 = 12v2 + 9.8 × 2.0 です。
  5. 12v2 = 9.8 × (4.5 − 2.0) = 9.8 × 2.5 = 24.5 なので、v2 = 49 です。
  6. 7.0 × 7.0 = 49 なので、v = 7.0 m/s です。

答え: 7.0 m/s

3ばねにつけた物体

弾性力だけが仕事をするときも、運動エネルギーと弾性力による位置エネルギーの和 12mv2 + 12kx2 は一定に保たれます。

なめらかな水平の床の上で、ばね定数 20 N/m のばねの左の端を壁に固定し、右の端に質量 0.20 kg の台車をつなぎます。ばね定数 k は、伸び 1 m あたりの弾性力の大きさです(k = 20 N/m なら、0.10 m 伸びたときの弾性力は 20 × 0.10 = 2.0 N)。

台車の位置は、ばねが自然の長さのときの位置を 0 とし、記号 x で表します。このページでは、右(ばねが伸びる向き)を正の向きとします。x = +0.10 m は 0.10 m 伸びた位置、x = −0.10 m は 0.10 m 縮んだ位置です。ばねが x だけ伸び縮みしているとき、ばねは弾性力による位置エネルギー 12kx2 をたくわえています。12kx2 は x を 2 乗するので、伸びても縮んでも、同じ長さなら同じ値です。

台車を x = +0.10 m まで引いて、静かに放します。台車にはたらく力は、重力・垂直抗力・弾性力です。重力と垂直抗力は、どちらも動く向き(水平)と垂直なので、仕事をしません。仕事をするのは、弾性力だけです。

左の壁につないだばね定数 20 N/m のばねの先に、0.20 kg の台車がある場面。台車を +0.10 m まで引いて静かに放すと、台車は −0.10 m と +0.10 m の間を往復する k = 20 N/m 往復する範囲 0.20 kg −0.10 m 0(自然の長さ) +0.10 m 正の向き
台車の位置 x +0.10 m

床はなめらかです。動きは 1/4 の速さで見せています。

弾性力だけが仕事をするときも、力学的エネルギーは保存されます。

12mv12 + 12kx12 = 12mv22 + 12kx22
x1・x2 は、はじめと後の台車の位置です。

台車が x = +0.10 m、+0.060 m、0 の位置を通るときの、エネルギーと速さは、次の表のようになります。

位置 x [m]+0.10+0.0600
弾性力による位置エネルギー U [J]0.1000.0360
運動エネルギー K [J]00.0640.100
力学的エネルギー E [J]0.1000.1000.100
速さ v [m/s]00.801.0

はじめ(x = +0.10 m)は止まっているので、K = 0 です。U = 12 × 20 × 0.102 = 0.100 J です。x = +0.060 m では、U = 12 × 20 × 0.0602 = 0.036 J です。E は 0.100 J のままなので、K = 0.100 − 0.036 = 0.064 J です。12 × 0.20 × v2 = 0.064 から、v2 = 0.64 なので、v = 0.80 m/s です。

台車は x = 0 を通り過ぎると、ばねを縮めながら左へ進み、だんだん遅くなります。K が 0 になるのは、U が 0.100 J に戻る所です。12 × 20 × x2 = 0.100 から x2 = 0.010 なので、x = −0.10 m(0.10 m 縮んだ位置)です。だから、台車は x = +0.10 m と x = −0.10 m の間を往復します。

ばね定数 20 N/m のばねにつけた 0.20 kg の台車の位置と、運動エネルギー・弾性力による位置エネルギー・力学的エネルギーの棒グラフ k = 20 N/m 0.20 kg 自然の長さ x = 0 正の向き エネルギー [J] 運動エネルギー K 弾性力による位置エネルギー U 力学的エネルギー E

床はなめらかです。台車を x = +0.10 m まで引いて静かに放し、台車が往復している途中の、ある位置を通るときのようすを表します。

運動エネルギー K J 弾性力による位置エネルギー U J 力学的エネルギー E J

やってみよう

台車の位置 x を +0.08 m から +0.02 m に変えてください。運動エネルギー K と、弾性力による位置エネルギー U は、それぞれ増えましたか、減りましたか。力学的エネルギー E はどうなりましたか。

分かること

U は 0.064 J から 0.004 J に減り、K は 0.036 J から 0.096 J に増えました。どちらも 0.060 J 変わり、E は 0.100 J のままです。

確認

往復している台車がいちばん速くなるのは、どの位置ですか。

答え

自然の長さの位置(x = 0)です。U が 0 になり、K がいちばん大きくなるからです。

例題

なめらかな水平の床の上で、ばね定数 90 N/m のばねの左の端を壁に固定しました。右の端に質量 0.40 kg の物体を押し当てて、ばねを 0.20 m 縮め、静かに放しました。ばねは自然の長さに戻ったところで物体から離れます。ばねを離れた後の物体の速さを求めなさい。

  1. 物体にはたらく力のうち、仕事をするのは弾性力だけなので、力学的エネルギーは保存されます。
  2. はじめは、速さ 0、縮み 0.20 m です。U = 12 × 90 × 0.202 = 1.8 J、K = 0 です。
  3. ばねを離れるときは、自然の長さなので U = 0 です。速さを v とすると、K = 12 × 0.40 × v2 です。
  4. 保存の法則から、1.8 = 12 × 0.40 × v2 なので、v2 = 1.8 ÷ 0.20 = 9.0 です。
  5. 3.0 × 3.0 = 9.0 なので、v = 3.0 m/s です。離れた後は、なめらかな床の上を 3.0 m/s のまま進みます。

答え: 3.0 m/s

4保存の法則を使った解き方

力学的エネルギー保存の法則で解くときは、① 仕事をする力を確かめ、② 基準面を決め、③ はじめと後の場面のエネルギーを等号で結びます。

力学的エネルギー保存の法則で問題を解くときは、次の3つの手順で進めます。

① 物体にはたらく力を描き、重力・弾性力のほかに仕事をする力がないことを確かめます。
② 重力による位置エネルギーを使うときは、基準面を決めます。
③ はじめの場面と後の場面を決め、それぞれの K と U を書いて、和を等号で結びます。

① で、重力・弾性力のほかに仕事をする力があれば、力学的エネルギー保存の法則は使えません。

地面から、ボールを真上に速さ v0 で投げ上げたときの、最高点の高さ h を、この手順で考えます。v0 は投げ上げた速さです。① ボールにはたらく力は重力だけです。だから、力学的エネルギーは保存されます。② 地面を基準面とします。

地面からボールを真上に速さ v₀ で投げ上げる場面。等しい時間ごとのボールの位置が、上へ行くほど間を詰めて並び、いちばん上の最高点でボールは一瞬止まる。位置は最高点までの時間を4等分した時刻のもので、地面と最高点のボールが濃く、間の3つは薄く、地面から最高点まで細い縦の点線がある 地面(基準面) ここから真上に投げ上げる 最高点(一瞬止まる) 速さ v0

③ はじめの場面は、投げた瞬間です。高さは 0 なので、K = 12mv02、U = 0 です。後の場面は、最高点です。真上に投げたボールは、最高点で一瞬止まります。だから、K = 0、U = mgh です。2つの和を等号で結ぶと、12mv02 + 0 = 0 + mgh です。この式から h を求めます。時刻を使わずに、高さが求められます。

左は、地面から速さ v0 で真上に投げた瞬間のボールで、K は 2分の1 m v0 の2乗、U は 0。右は、地面から高さ h の最高点で速さ 0 のボールで、K は 0、U は mgh。2つの場面の力学的エネルギーは等しい はじめ(投げた瞬間) 地面(基準面) 速さ v0 K = ½mv02 U = 0 = 力学的エネルギーは等しい 後(最高点) 地面(基準面) h 速さ 0 K = 0 U = mgh

真上に投げ上げたボールです。

確認

地面から真上に投げ上げたボールが、地面に戻ってきたときの速さは、投げたときの速さと比べてどうですか。

答え

同じです。E が変わらず、高さが同じで U も同じなので、K も同じになるからです。

例題

地面から、ボールを真上に 4.2 m/s で投げ上げました。最高点の高さ(地面からの高さ)を、力学的エネルギー保存の法則で求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とし、空気の抵抗は考えません。

  1. ① ボールにはたらく力は重力だけなので、力学的エネルギーは保存されます。
  2. ② 地面を基準面とし、ボールの質量を m、最高点の高さを h とします。
  3. ③ はじめ(投げた瞬間)は K = 12m × 4.22、U = 0 です。最高点では一瞬止まるので K = 0、U = m × 9.8 × h です。
  4. 12m × 4.22 = m × 9.8 × h です。両辺を m で割ると、8.82 = 9.8 × h です。
  5. h = 8.82 ÷ 9.8 = 0.90 m です。
  6. 時間を使わない式 v2 − v02 = −2gy(上向きが正、y は投げた点からの高さ、最高点では v = 0)で解いても、0 − 4.22 = −2 × 9.8 × y から y = 17.64 ÷ 19.6 = 0.90 m で、同じ答えになります。

答え: 0.90 m

練習問題

重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とし、空気の抵抗は考えません。面や床は、どれもなめらか(摩擦がない)とします。

パターン1 落下・投げ上げ(重力だけが仕事をする)

問1地面から高さ 3.6 m の所から、ボールを静かに放しました。地面に着く直前の速さを求めなさい。

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8.4 m/s

重力だけが仕事をするので、力学的エネルギーは保存される。地面を基準面、ボールの質量を m とする。はじめは K = 0、U = m × 9.8 × 3.6。地面に着く直前は K = 12mv2、U = 0。m × 9.8 × 3.6 = 12mv2 の両辺を m で割り、v2 = 2 × 9.8 × 3.6 = 70.56。8.4 × 8.4 = 70.56 なので、v = 8.4 m/s

問2地面から、ボールを真上に 6.4 m/s で投げ上げました。ボールが地面から高さ 1.5 m の所を通るときの速さを求めなさい。

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3.4 m/s

重力だけが仕事をするので、力学的エネルギーは保存される。地面を基準面、ボールの質量を m とする。12m × 6.42 + 0 = 12mv2 + m × 9.8 × 1.5。両辺を m で割り、2 倍すると、6.42 = v2 + 2 × 9.8 × 1.5。v2 = 40.96 − 29.4 = 11.56。3.4 × 3.4 = 11.56 なので、v = 3.4 m/s。保存の式には向きが入らないので、高さ 1.5 m を上がっていくときも、落ちてくるときも、速さは同じ 3.4 m/s

パターン2 なめらかな面

問3なめらかな曲面の、床から高さ 3.0 m の所に、質量 0.50 kg の物体を置いて静かにすべらせました。床まで下りたときの速さを求めなさい。

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7.7 m/s

重力と垂直抗力がはたらくが、垂直抗力は動く向きと垂直なので仕事をしない。床を基準面とすると、0.50 × 9.8 × 3.0 = 12 × 0.50 × v2。両辺を 0.50 で割り、v2 = 2 × 9.8 × 3.0 = 58.8。v = √58.8 = 7.66… ≒ 7.7 m/s(2 桁に丸めて)

質量は両辺から消えるので、質量を入れない図でも同じ速さになります。

問4なめらかな床の上を 5.6 m/s ですべってきた物体が、そのまま、床につながる十分に高い、なめらかな曲面を上っていきます。物体は、床から何 m の高さまで上れますか。

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1.6 m

仕事をするのは重力だけなので、力学的エネルギーは保存される。床を基準面、物体の質量を m とする。はじめ(床)は K = 12m × 5.62、U = 0。いちばん高い所では、一瞬止まるので K = 0、U = m × 9.8 × h。12m × 5.62 = m × 9.8 × h の両辺を m で割り、15.68 = 9.8 × h。h = 15.68 ÷ 9.8 = 1.6 m

パターン3 ばね

問5なめらかな水平の床の上で、ばね定数 100 N/m のばねの左の端を壁に固定しました。右の端に質量 0.25 kg の物体を押し当てて、ばねを 0.10 m 縮め、静かに放しました。ばねは自然の長さに戻ったところで物体から離れます。ばねを離れた後の物体の速さを求めなさい。

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2.0 m/s

仕事をするのは弾性力だけなので、力学的エネルギーは保存される。はじめは K = 0、U = 12 × 100 × 0.102 = 0.50 J。離れるとき(自然の長さ)は U = 0、K = 12 × 0.25 × v2。0.50 = 12 × 0.25 × v2 なので、v2 = 0.50 ÷ 0.125 = 4.0。v = 2.0 m/s

問6なめらかな水平の床の上を、質量 0.50 kg の物体が左へ 2.0 m/s で進み、左の端を壁に固定したばね定数 200 N/m のばねの右の端に当たりました。物体はばねを縮めながら遅くなり、やがて一瞬止まります。このとき、ばねは自然の長さから何 m 縮んでいますか。

答えを見る

0.10 m

仕事をするのは弾性力だけなので、力学的エネルギーは保存される。はじめ(当たる直前)は、ばねは自然の長さで U = 0、K = 12 × 0.50 × 2.02 = 1.0 J。いちばん縮んだときは、物体が一瞬止まるので K = 0、U = 12 × 200 × x2。1.0 = 12 × 200 × x2 なので、x2 = 1.0 ÷ 100 = 0.010。0.10 × 0.10 = 0.010 なので、x = 0.10 m

つまずきやすいところ

まとめ

要点

力学的エネルギーE = K + U
保存(重力)12mv12 + mgh1 = 12mv22 + mgh21 ははじめ、2 は後の場面です。h は基準面からの高さです。
保存(弾性力)12mv12 + 12kx12 = 12mv22 + 12kx22x1・x2 は、はじめと後の位置です(自然の長さが 0、伸びた側が正)。
成り立つ条件重力・弾性力のほかの力が、仕事をしないとき

物理基礎 第3章 仕事とエネルギー

  1. 仕事と仕事率
  2. 運動エネルギーと位置エネルギー
  3. 力学的エネルギー保存の法則(保存される運動)
  4. 力学的エネルギー保存の法則(振り子,保存力)
  5. 力学的エネルギー保存の法則(非保存力,2物体)

高校物理の単元の一覧