要点
物をつくる粒子が持つエネルギーの合計を内部エネルギーといい、同じ物質なら、温度が高いほど、量が多いほど大きくなります。
コップに水を 100 g、バケツに水を 2000 g 入れて、しばらく部屋に置いておきます。どちらの水も、部屋と同じ 20 ℃ になりました。温度は同じですが、水の量はまったく違います。
水は、分子というとても小さな粒子が集まってできています。粒子は止まっていることがなく、いつも不規則に動き回っています。この動きを熱運動といいます。動いている物は、運動エネルギーを持っています。だから、熱運動をしている粒子の1つ1つも、運動エネルギーを持っています。温度が高いほど、粒子の熱運動は激しく、粒子1つあたりの運動エネルギーは大きくなります。
粒子どうしは、互いに引き合っています。引き合う物どうしは、離れている距離に応じた位置エネルギーを持ちます。粒子どうしも、この位置エネルギーを持っています。
物をつくる粒子が持つ、熱運動の運動エネルギーと、粒子どうしの位置エネルギーの合計を、その物の内部エネルギーといいます。記号は U、単位は J(ジュール)です。J はエネルギーの単位です。同じ水なら、温度が高いほど、粒子1つあたりの運動エネルギーが大きいので、内部エネルギーは大きくなります。同じ温度なら、量が多いほど、粒子の数が多いので、内部エネルギーは大きくなります。コップの水とバケツの水は、同じ 20 ℃ ですが、内部エネルギーはバケツの水のほうがずっと大きくなります。
温度の違う物どうしが触れると、温度の高い物から低い物へエネルギーが移ります。このエネルギーを熱といい、移った量を熱量 Q(単位 J)といいます。水に熱を加えると、水の内部エネルギーが増えます。状態が変わらない間は、粒子の熱運動が激しくなり、温度が上がります。
内部エネルギーの変化を、記号 ΔU で表します。Δ(デルタ)は「変化」を表す記号で、ΔU は「後の内部エネルギー − 前の内部エネルギー」です。増えたら正、減ったら負になります。
確認
同じ 20 ℃ の水 100 g と水 200 g では、内部エネルギーはどちらが大きいですか。
200 g の水です。温度が同じでも、粒子の数が多いからです。
熱を加えなくても、こする・かき混ぜるなどの仕事で、物の内部エネルギーが増え、温度が上がります。
寒い日に、両手をこすり合わせると、手が温かくなります。火やストーブに当てたわけではありません。手を動かしてこすっただけです。
手をこするとき、手は、手と手の間の摩擦力に逆らって動いています。力を加えて物を動かすことを、物理では仕事をするといいます。仕事は「力 × 力の向きに動いた距離」で求め、単位は J です。手をこする仕事によって、手の粒子の熱運動が激しくなり、手の内部エネルギーが増えます。だから、手の温度が上がります。自転車のブレーキをかけ続けると、ブレーキの部品が熱くなるのも同じです。内部エネルギーを増やす方法は、熱を加えることだけではありません。こすったり、かき混ぜたりする仕事でも、内部エネルギーは増えます。
仕事がどれだけ内部エネルギーになるかを調べたのが、ジュールという科学者の実験です。下の図は、その実験を簡単にした装置です。熱を通さない容器に水を入れ、中に羽根車を入れます。羽根車の軸に巻いた糸の先に、おもりをつるします。おもりが落ちると、糸が引かれて羽根車が回り、水がかき混ぜられます。かき混ぜられた水は、温度が上がります。おもりが落ちきったら、糸を巻き戻しておもりを上へ戻し、また落とします。
質量 10 kg のおもりが、3.0 m 落ちる場合を考えます。高さ h の所にある質量 m の物は、重力による位置エネルギー mgh を持っています。g は重力加速度の大きさ 9.8 m/s² です。mgh の m には、おもりの質量を kg の値で入れます。おもりが 3.0 m 落ちると、位置エネルギーは 10 × 9.8 × 3.0 = 294 J 減ります。おもりがゆっくり落ちるとき、この 294 J は、羽根車が水をかき混ぜる仕事になり、水の内部エネルギーになります。
熱で温めるとき、熱量は Q = mcΔT で求めます。m は質量(g)、c は比熱(物質 1 g の温度を 1 K 上げるのに要る熱量)、ΔT は温度の変化です。水の比熱は 4.2 J/(g·K) です。水 100 g の温度を 1 K 上げるには、100 × 4.2 = 420 J が要ります。294 J の仕事は、水に 294 J の熱を加えたのと同じだけ、水の温度を上げます。おもりを 2 回落とすと、仕事は 294 × 2 = 588 J です。上がる温度は、588 ÷ 420 = 1.4 K です。熱と仕事は、どちらもエネルギーの移り方で、単位はどちらも J です。
下の図で、おもりを落とした回数と、水の温まり方を比べます。
おもりはゆっくり落ち、失った位置エネルギーは、すべて水の内部エネルギーになるとします。容器や羽根車が温まる分は考えません。水は、はじめ 20 ℃ です。
やってみよう
落とした回数を 0 回にしてから、「落とす」を押して 10 回まで落としてください。水の温度の変化 ΔT は何 K になりましたか。そのとき、おもりが失った位置エネルギーの合計は何 J ですか。
ΔT は 7.0 K、位置エネルギーの合計は 2940 J です。100 g の水を 7.0 K 上げる熱量は 100 × 4.2 × 7.0 = 2940 J なので、おもりが失った位置エネルギーの分だけ、水が温まりました。
確認
針金を同じ所で何度も折り曲げると、曲げた所が熱くなります。針金を温めたのは、熱ですか、仕事ですか。
仕事です。手が針金を曲げる仕事で、針金の内部エネルギーが増えました。
例題
質量 5.0 kg のおもりを 3.0 m 落とすことを 20 回くり返し、羽根車で水 200 g をかき混ぜました。おもりが失った位置エネルギーが、すべて水の内部エネルギーになるとき、水の温度は何 K 上がりますか。重力加速度の大きさは 9.8 m/s²、水の比熱は 4.2 J/(g·K) とします。
答え: 3.5 K
内部エネルギーの変化は、受け取った熱量と、された仕事の和になります(ΔU = Q + W)。
自転車の空気入れで、タイヤに空気を入れ続けると、空気入れの筒の下のほうが温かくなります。ピストンを押し込んで、筒の中の空気を押し縮めているからです。
空気のような気体の内部エネルギーを増やす方法は、2つあります。1つは、熱を加えることです。もう1つは、外から仕事をすること(ピストンで押し縮めること)です。空気入れでは、ピストンを押し込む仕事によって、中の空気の内部エネルギーが増え、温度が上がっています。
気体が外から受け取った熱量を Q、外からされた仕事を W とします。気体の内部エネルギーは、受け取った熱量と、された仕事の分だけ増えます。
この関係を熱力学第1法則といいます。エネルギーは、熱や仕事として出入りしても、なくなったり、急に生まれたりはしない、ということを表しています。
このページでは、Q も W も、気体が受け取ったら正、気体が出したら負とします。気体が熱を出したら、Q は負です。気体がふくらんでピストンを押し上げたときは、気体が外へ仕事をしています。このとき、外から「された」仕事 W は負です。
気体が 300 J の熱を受け取り、同時にピストンを押し込まれて 100 J の仕事をされたとします。Q = +300 J、W = +100 J です。ΔU = 300 + 100 = 400 J です。内部エネルギーは 400 J 増えます。今度は、同じ 300 J の熱を受け取りながら、気体がふくらんでピストンを押し上げ、外へ 100 J の仕事をしたとします。外へした仕事なので、W = −100 J です。ΔU = 300 + (−100) = 200 J です。受け取った熱の一部が、外への仕事に使われたので、内部エネルギーの増え方は 200 J に減ります。
気体の内部エネルギーが増えると、気体の温度は上がります。内部エネルギーが減ると、温度は下がります。ΔU が 0 なら、温度は変わりません。
下の図で、受け取った熱量 Q と、された仕事 W を変えて、ΔU と気体の温度がどう変わるかを見ます。
実線の枠が熱量 Q、破線の枠がされた仕事 W、斜線が内部エネルギーの変化 ΔU です。どれも、気体が受け取ったら正、出したら負です。
やってみよう
受け取った熱量 Q を 200 J にしてください。次に、温度計の液の柱が「はじめ」の線から動かないように、された仕事 W を合わせてください。W は何 J ですか。そのとき、ピストンは押し込まれましたか、押し上げられましたか。
W は −200 J で、ΔU は 0 J です。ピストンは押し上げられました。気体は受け取った 200 J と同じだけの仕事を外へしたので、内部エネルギーも温度も変わりません。
確認
気体に熱を加えているのに、気体の温度が下がることはありますか。
あります。受け取った熱量より多くの仕事を外へすると、ΔU が負になるからです。
例題
気体が 500 J の熱を受け取り、ふくらんでピストンを押し上げ、外へ 200 J の仕事をしました。気体の内部エネルギーの変化 ΔU を求めなさい。
答え: 300 J(内部エネルギーは 300 J 増える)
熱を受け取って仕事をする装置を熱機関といい、受け取った熱量のうち仕事になった割合を熱効率といいます。
自動車のエンジンは、燃料を燃やして、とても温度の高いガスをつくります。そのガスがエンジンの中のピストンを押して、車を動かす仕事をします。仕事に使われなかったエネルギーは、熱い排気ガスや、エンジンを冷やす水を通して、まわりの空気へ捨てられます。
熱を受け取って、その一部を仕事に変える装置を熱機関といいます。自動車のエンジンや、火力発電所で蒸気を使って発電機を回す装置は、熱機関です。熱機関は、温度の高い所から熱を受け取り、仕事をして、残りの熱を温度の低い所へ捨てます。自動車のエンジンなら、温度の高い所は燃えたガス、温度の低い所はまわりの空気です。
熱機関が高温の所から受け取る熱量を Q1、低温の所へ捨てる熱量を Q2 と書きます。小さい数字は、2つの熱量を区別するための番号です。熱機関が外へした仕事を W′ と書きます。W′ は「ダブリュー ダッシュ」と読みます。項目3 の W は、気体が外から「された」仕事でした。熱機関がするのは、その逆向きの「外へした」仕事なので、′ を付けて区別します。Q1、Q2、W′ は、どれも正の数で入れます。
熱機関は、同じ動きを何度もくり返します。1回ごとに元の状態に戻るので、熱機関の内部エネルギーは、1回では増えも減りもしません。だから、入ったエネルギー Q1 は、出ていったエネルギー W′ と Q2 の和に等しくなります。
ある熱機関が、高温の所から 1000 J の熱を受け取り、外へ 250 J の仕事をしたとします。捨てた熱量は、Q2 = Q1 − W′ = 1000 − 250 = 750 J です。
受け取った熱量のうち、仕事になった割合を熱効率といいます。記号は e です。
1000 J を受け取って 250 J の仕事をした上の熱機関では、e = 250 ÷ 1000 = 0.25 です。0.25 は、百分率(%)で表すと 25 % です。受け取った熱の 25 % が仕事になり、残りの 75 % は捨てられたということです。
実線の帯は熱、破線の帯は仕事です。帯の太さは、エネルギーの量に比例しています。
確認
熱機関AとBが、同じ量の熱を受け取りました。低温の所へ捨てた熱量は、Aのほうが多くなりました。熱効率が大きいのは、どちらですか。
Bです。捨てた熱が少ないほど、仕事になった分が多いからです。
例題
ある熱機関が、高温の所から 500 J の熱を受け取り、外へ 150 J の仕事をしました。(1) 熱効率を求めなさい。(2) 低温の所へ捨てた熱量を求めなさい。
答え: (1) 0.30(30 %) (2) 350 J
熱が高温の物から低温の物へ移るように、ひとりでには元の状態に戻らない変化を不可逆変化といいます。
いれたての熱いお茶を、テーブルに置いておきます。しばらくすると、お茶は冷めて、まわりの空気と同じ温度になります。
お茶が冷めるのは、温度の高いお茶から、温度の低いまわりの空気へ、熱が移るからです。熱は、高温の物から低温の物へ移ります。ひとりでに、低温の物から高温の物へ移ることはありません。
床の上をすべる箱は、床との摩擦で、やがて止まります。止まるまでに、箱の運動エネルギーは、床と箱の内部エネルギーに変わり、床と箱がわずかに温まります。床と箱の内部エネルギーが集まって、止まっていた箱がひとりでに動き出すことはありません。
お茶が冷めることも、箱が止まることも、ひとりでには元の状態に戻らない変化です。このような変化を不可逆変化といいます。一方、空気の抵抗や摩擦がまったくなければ、振り子は同じ高さまで上がる往復をいつまでもくり返し、何度でも元の状態に戻ります。このように、ひとりでに元の状態に戻ることのできる変化を可逆変化といいます。身のまわりで起こる変化は、ほとんどが不可逆変化です。
仕事と熱の間の変化にも、向きがあります。ジュールの実験では、おもりがした仕事は、すべて水の内部エネルギーになりました。しかし逆に、くり返し動く熱機関で、受け取った熱をすべて仕事に変えることはできません。熱機関は、受け取った熱の一部を、必ず低温の所へ捨てます。Q2 は 0 にならないので、熱効率 e = W′ / Q1 は、必ず 1 より小さくなります。
確認
床に落としたボールが、何度かはねて止まりました。床とボールは、わずかに温まっています。床とボールに移ったエネルギーが集まって、ボールがひとりでに、またはね上がることはありますか。
ありません。止まるまでの変化は不可逆変化で、ひとりでには元に戻らないからです。
重力加速度の大きさは 9.8 m/s²、水の比熱は 4.2 J/(g·K) とします。熱は外へ逃げないものとします。
問1質量 10 kg のおもりを 3.0 m 落とすことを 6 回くり返し、羽根車で水 100 g をかき混ぜました。おもりが失った位置エネルギーが、すべて水の内部エネルギーになるとき、水の温度は何 K 上がりますか。
4.2 K
1 回で失う位置エネルギーは mgh = 10 × 9.8 × 3.0 = 294 J。6 回で 294 × 6 = 1764 J。100 g の水の温度を 1 K 上げるには 100 × 4.2 = 420 J。ΔT = 1764 ÷ 420 = 4.2 K
問2質量 2.0 kg の箱が、床の上を速さ 6.0 m/s ですべっていて、摩擦で止まりました。箱の運動エネルギーが、すべて箱と床の内部エネルギーになったとします。箱と床の内部エネルギーは、合わせて何 J 増えましたか。ただし、速さ v で動く質量 m の物の運動エネルギーは ½mv2 です(m は kg で入れます)。
36 J
運動エネルギーは ½mv2 = ½ × 2.0 × 6.02 = ½ × 2.0 × 36 = 36 J。止まると運動エネルギーは 0 なので、36 J がすべて箱と床の内部エネルギーになる
問3ピストン付きの容器に入った気体が、ピストンを押し込まれて 300 J の仕事をされ、同時に、まわりへ 200 J の熱を出しました。気体の内部エネルギーの変化 ΔU を求めなさい。気体の温度は上がりますか、下がりますか。
ΔU = 100 J、温度は上がる
熱を出したので Q = −200 J。仕事をされたので W = +300 J。ΔU = Q + W = (−200) + 300 = 100 J。ΔU が正なので温度は上がる
問4気体が熱を受け取り、ふくらんでピストンを押し上げて、外へ 300 J の仕事をしました。このとき、気体の内部エネルギーは 200 J 増えました。気体が受け取った熱量 Q を求めなさい。
500 J
外へ 300 J の仕事をしたので、された仕事は W = −300 J。内部エネルギーが 200 J 増えたので ΔU = +200 J。ΔU = Q + W から Q = ΔU − W = 200 − (−300) = 500 J
問5ある熱機関が、高温の所から 1200 J の熱を受け取り、外へ 420 J の仕事をしました。この熱機関の熱効率を求めなさい。百分率でも答えなさい。
0.35(35 %)
e = W′ / Q1 = 420 ÷ 1200 = 0.35。百分率で 35 %
問6熱効率 0.40 の熱機関が、外へ 800 J の仕事をしました。(1) 高温の所から受け取った熱量 Q1 を求めなさい。(2) 低温の所へ捨てた熱量 Q2 を求めなさい。
(1) 2000 J (2) 1200 J
(1) e = W′ / Q1 から Q1 = W′ ÷ e = 800 ÷ 0.40 = 2000 J (2) Q1 = W′ + Q2 から Q2 = Q1 − W′ = 2000 − 800 = 1200 J
要点
物理基礎 第4章 熱