ゼロからの高校物理 / 物理 / 運動量

運動量と力積

公式

運動量p = mv単位は kg·m/s。向きは速度と同じです。
力積FΔt単位は N·s。1 N·s = 1 kg·m/s です。
運動量の変化mv′ − mv = FΔt運動量の変化(後 − 前)は、受けた力積に等しくなります。
F-t グラフ力積 = グラフの下の面積力積 = 平均の力 × 時間です。

1運動量

動いている物体の勢いは、質量 × 速度で表します。これを運動量といいます。

野球のボール(0.15 kg)と、ボウリングの球(6.0 kg)が、どちらも速さ 1.0 m/s で転がってきたとします。手で止めるとき、止めにくいのはボウリングの球です。同じ速さなら、質量が大きい物ほど止めにくくなります。

床の上を、6.0キログラムのボウリングの球と0.15キログラムの野球のボールが、どちらも右へ1.0メートル毎秒で転がってくる。右で手を構えて、止めようとしている 1.0 m/s ボウリングの球 6.0 kg 1.0 m/s 野球のボール 0.15 kg

同じ野球のボールでも、1.0 m/s で転がってくるボールと、40 m/s で飛んでくるボールでは、40 m/s のほうがずっと止めにくいです。同じ質量なら、速い物ほど止めにくくなります。

そこで、物体の勢いを、質量と速さの掛け算で表します。1.0 m/s のボウリングの球は 6.0 × 1.0 = 6.0 です。40 m/s の野球のボールは 0.15 × 40 = 6.0 です。同じ時間で止めるのに要る力で比べると、この2つは同じになります。そのわけは項目2 で分かります。

質量 × 速度で表した物体の勢いを、運動量といいます。運動量の記号は p で、「ピー」と読みます。

p = mv
m は質量(kg)、v は速度(m/s)です。

単位は、kg と m/s を掛けたものなので kg·m/s で、「キログラム・メートル毎秒」と読みます。

運動量には、速度と同じ向きがあります。このページでは、右を正の向きとします。右向きに動く物体の運動量は正、左向きに動く物体の運動量は負(マイナス)です。たとえば、質量 2.0 kg の台車が左向きに 1.5 m/s で動いているとき、速度は −1.5 m/s です。運動量は 2.0 × (−1.5) = −3.0 kg·m/s です。

次の図で、3つの物体の運動量の向きと大きさを、矢印の長さで比べます。

0.15キログラムで右へ40メートル毎秒の野球のボール、6.0キログラムで右へ1.0メートル毎秒のボウリングの球、2.0キログラムで左へ1.5メートル毎秒の台車の運動量を、矢印の長さで比べた図 右が正の向き → 速度 +40 m/s 0.15 kg 運動量+6.0 kg·m/s 速度 +1.0 m/s 6.0 kg 運動量+6.0 kg·m/s 速度 −1.5 m/s 2.0 kg 運動量−3.0 kg·m/s

太い実線の矢印が運動量、細い破線の矢印が速度の向きです。運動量の矢印の長さは運動量の大きさに比例しますが、速度の矢印の長さは速さに比例させていません。

質量 m [kg]速度 v [m/s]運動量 mv [kg·m/s]
野球のボール0.15+40+6.0
ボウリングの球6.0+1.0+6.0
台車2.0−1.5−3.0

確認

駐車場に止まっている大きなトラックの運動量はいくつですか。

答え

0 kg·m/s です。速度が 0 なので、質量が大きくても mv = 0 です。

例題

質量 0.50 kg の台車が、左向きに速さ 4.0 m/s で動いています。この台車の運動量を求めなさい。右を正の向きとします。

  1. 左向きなので、速度は v = −4.0 m/s です。
  2. p = mv = 0.50 × (−4.0) = −2.0 kg·m/s です。

答え: −2.0 kg·m/s(左向きに 2.0 kg·m/s)

2力積と運動量の変化

力 × 力がはたらいた時間を力積といい、物体の運動量は、受けた力積の分だけ変わります。

なめらかな氷の上に、質量 2.0 kg の箱が止まっています。摩擦力ははたらかないとします。重力と垂直抗力は上下でつり合います。横向きの力は、手が押す力だけです。この箱を、手で右へ一定の力 6.0 N で、0.50 s だけ押します。押し終わったら、手を離します。

リンクの縁の床に立った人が、なめらかな氷の端に置いた2.0キログラムの箱を、両手で右へ押している。6.0ニュートンの力で0.50秒押す なめらかな氷 2.0 kg 6.0 N で 0.50 s 押す

運動方程式 ma = F(質量 × 加速度 = 力)から、2.0 × a = 6.0 です。加速度は a = 6.0 ÷ 2.0 = 3.0 m/s² です。速度が 1 秒ごとに 3.0 m/s ずつ増えるということです。

0.50 s 押すと、速度は 3.0 × 0.50 = 1.5 m/s 増えます。止まっていたので、押した後の速度は +1.5 m/s です。押す前の運動量は 2.0 × 0 = 0 kg·m/s です。押した後の運動量は 2.0 × 1.5 = +3.0 kg·m/s です。手を離した後は、横向きの力がないので、箱は +1.5 m/s のまま、まっすぐすべっていきます。

押した力と押した時間を掛けると、6.0 × 0.50 = 3.0 です。これは、運動量の増えた分 3.0 − 0 = 3.0 kg·m/s と同じ数です。

一般の式にするために、記号を決めます。v は力を受ける前の速度、v′ は力を受けた後の速度です。v′ は「ブイ・ダッシュ」と読みます。「′」は「後」の印です。動摩擦係数 μ′ の「′」とは関係ありません。Δt は、力がはたらいた時間です。Δ(デルタ)は「後の値 − 前の値」を表す記号で、Δt は「押し終わった時刻 − 押し始めた時刻」です。

加速度は、速度の変化を時間で割ったものなので、a = (v′ − v) ÷ Δt です。運動方程式 ma = F の F は、物体が受ける力の合力です。このページの場面では、横向きの力は1つだけです。加速度の式を運動方程式に入れると、m × (v′ − v) ÷ Δt = F です。両辺に Δt を掛けて、mv′ − mv = FΔt になります。

mv′ − mv = FΔt
左辺は運動量の変化(後 − 前)、右辺は力 × 力がはたらいた時間です。

力 × 力がはたらいた時間 FΔt を、力積といいます。力積の単位は、N と s を掛けたものなので N·s(ニュートン秒)です。1 N は 1 kg·m/s² なので、1 N·s = 1 kg·m/s です。力積と運動量は、同じ単位の量です。

止まっている物体でなくても、同じ式が使えます。上で +1.5 m/s になった箱を、さらに右へ 6.0 N で 0.50 s 押すと、速度は 1.5 + 3.0 × 0.50 = 3.0 m/s になります。運動量は +3.0 kg·m/s から 2.0 × 3.0 = +6.0 kg·m/s になり、増えた分は 6.0 − 3.0 = 3.0 kg·m/s です。受けた力積 6.0 × 0.50 = 3.0 N·s と同じです。

項目1 の野球のボール(+6.0 kg·m/s)とボウリングの球(+6.0 kg·m/s)を止めるには、どちらも運動量を 6.0 kg·m/s 減らす力積が要ります。だから、同じ時間で止めるには、同じ大きさの力が要ります。

次の図で、押す力と押す時間を変えて、力積が同じなら押した後の速度も同じになることを確かめます。

なめらかな氷の上の2.0キログラムの箱を、手で一定の力で決めた時間だけ押す図。押す力と押す時間を変えて押すと、力積と、押した後の箱の速度と運動量が表示される なめらかな氷 運動量 p 2.0 kg 手が押す力 F

藍の矢印は手が押す力で、押している間だけ描いています。紫の矢印は箱の運動量です。「押す」のボタンを押すと、選んだ時間だけ同じ力で押し、その後は手を離します。

力積 FΔt 押した後の速度 v′ — 押した後の運動量 p′ —

やってみよう

押す力 F を 4.0 N、押す時間 Δt を 1.00 s にして「押す」のボタンを押し、押した後の速度 v′ を読んでください。次に、F を 2.0 N に下げて、押した後の速度が同じになる押す時間を探してください。何 s にすればよいですか。

分かること

4.0 N・1.00 s で押した後の速度は +2.0 m/s です。2.0 N のときは、Δt を 2.00 s にすると同じ +2.0 m/s になります。どちらも力積は +4.0 N·s です。

確認

同じ力で、2倍の時間押すと、運動量の変化は何倍になりますか。

答え

2倍です。力積 FΔt が2倍になるからです。

例題

止まっている質量 0.40 kg のボールを、足でけりました。足がボールに触れていた 0.050 s の間、ボールには一定の力 80 N がはたらいたとします。けった後のボールの速さを求めなさい。

  1. ボールが受けた力積は、FΔt = 80 × 0.050 = 4.0 N·s です。
  2. けった向きを正にすると、ける前の運動量は 0、けった後の運動量は 0.40 × v′ です。
  3. mv′ − mv = FΔt から、0.40 × v′ − 0 = 4.0 です。
  4. v′ = 4.0 ÷ 0.40 = 10 m/s です。

答え: 10 m/s

3向きが変わるときの力積

はね返るときも、速度に符号を付ければ mv′ − mv = FΔt がそのまま使えます。力積が負なら、力は左向きです。

質量 0.20 kg のボールが、右向きに 10 m/s で飛んできて、右にある壁に当たり、左向きに 8.0 m/s ではね返りました。右が正なので、当たる前の速度は v = +10 m/s、はね返った後の速度は v′ = −8.0 m/s です。

右へ10メートル毎秒で飛んできたゴムボールが、右の壁に当たって少しつぶれ、左へ8.0メートル毎秒ではね返る 右が正の向き → 当たる前 +10 m/s −8.0 m/s
ボールのようす 速度 −8.0 m/s

動きの速さは実際とは違います。

当たる前の運動量は、mv = 0.20 × (+10) = +2.0 kg·m/s です。はね返った後の運動量は、mv′ = 0.20 × (−8.0) = −1.6 kg·m/s です。

運動量の変化は、後 − 前で、−1.6 − (+2.0) = −3.6 kg·m/s です。mv′ − mv = FΔt から、ボールが壁から受けた力積は −3.6 N·s です。

力積が負なのは、力 F が負(左向き)だからです。Δt(時間)は負になりません。ボールは、壁から左向きに押されて、右向きの運動量を失い、さらに左向きの運動量を得ました。

次の図で、運動量が +2.0 から −1.6 へ変わる幅が、力積の矢印になることを数直線の上で確かめます。

右へ飛んできた0.20キログラムのボールが壁ではね返る図。運動量はプラス2.0からマイナス1.6キログラムメートル毎秒に変わり、その差の力積マイナス3.6ニュートン秒が左向きの矢印で示されている 右が正の向き → 当たる前 当たっている間 はね返った後 mv = +2.0 kg·m/s 壁がボールを押す力 mv′ = −1.6 kg·m/s 運動量 [kg·m/s] 前 mv 後 mv′ 力積 FΔt = −3.6 N·s

紫の矢印は運動量、藍の矢印は力と力積です。力積の矢印は、前の運動量の点から後の運動量の点へ向かいます。

確認

0.20 kg のボールが右向きに 10 m/s で壁に当たり、はね返らずに止まりました。ボールが受けた力積は正と負のどちらですか。力積の大きさは、はね返ったとき(3.6 N·s)より大きいですか、小さいですか。

答え

負で、−2.0 N·s です。大きさは、はね返るときより小さくなります。

例題

質量 0.20 kg のボールが、左向きに 20 m/s で飛んできました。これをバットで打ち返したら、右向きに 30 m/s で飛んでいきました。右を正の向きとします。
(1) ボールがバットから受けた力積を求めなさい。
(2) ボールとバットが触れていた時間は 0.010 s でした。この間、力が一定だったとみなして、その力を求めなさい。

  1. 打つ前の速度は v = −20 m/s、打った後の速度は v′ = +30 m/s です。
  2. 打つ前の運動量は 0.20 × (−20) = −4.0 kg·m/s、打った後の運動量は 0.20 × (+30) = +6.0 kg·m/s です。
  3. 力積は、後 − 前で、+6.0 − (−4.0) = +10 N·s です。
  4. FΔt = +10 で Δt = 0.010 s なので、F = 10 ÷ 0.010 = 1000 N です。
  5. 与えられた数(0.20、20、30、0.010)が 2 桁なので、答えも 2 桁で書きます。1000 と書くと何桁目まで意味のある数か分からないので、1.0 × 103 N と書きます。

答え: (1) +10 N·s(右向きに 10 N·s) (2) +1.0 × 103 N(右向きに 1.0 × 103 N)

4F-t グラフと平均の力

力積は、F-t グラフの下の面積です。同じ力積なら、力がはたらく時間が長いほど、平均の力は小さくなります。

横軸に時刻 t、縦軸に力 F をとったグラフを、F-t グラフといいます。項目2 の箱(6.0 N で 0.50 s 押した)では、グラフは高さ 6.0 N の横の線が、0 s から 0.50 s まで続きます。力積 6.0 × 0.50 = 3.0 N·s は、縦 6.0 N、横 0.50 s の長方形の面積と同じです。F-t グラフでは、下の面積が力積になります。

ボールが壁に当たるときのような短い衝突では、力は一定ではありません。触れた瞬間は小さく、強く押しつぶされた所でいちばん大きくなり、離れるときにまた 0 に戻ります。たとえば、ある衝突の力を 0.010 s ごとに調べると、次の表のようになったとします。

時刻 t [s]00.0100.0200.0300.040
力 F [N]02040200

この表の点を F-t グラフに打ち、直線でつなぐと、山の形(三角形)になります。点 (0.020 s, 40 N) は、「触れてから 0.020 s 後に、力が 40 N である」ことを表します。グラフの山は、力の大きさが時間とともにどう変わったかを表しています。

力が変わるときも、グラフの下の面積が力積になります。時間を細かく分けると、それぞれの短い間では力がほぼ一定なので、細い長方形の面積を足し合わせたものが力積になるからです。この三角形の面積は、12 × 0.040 × 40 = 0.80 N·s です。これが、この衝突で受けた力積です。

時刻0から0.040秒まで力が山の形に変わるF-tグラフ。表の5点を打ってつないだ三角形で、山の高さは40ニュートン、三角形の面積0.80ニュートン秒が力積 力 F [N] 時刻 t [s] (0.020 s, 40 N) 面積 = 力積 0.80 N·s

表の5点を直線でつないだグラフです。塗った三角形の面積が力積です。

同じ 0.040 s の間に、同じ 0.80 N·s の力積を与える一定の力を、平均の力といいます。平均の力 = 力積 ÷ 時間 なので、0.80 ÷ 0.040 = 20 N です。グラフでは、高さ 20 N、横 0.040 s の長方形の面積が、三角形の面積 0.80 N·s と同じになります。項目2・3 の例題で一定とした力(80 N、1.0 × 103 N)は、この平均の力のことです。

時刻0から0.040秒まで力が山の形に変わるF-tグラフに、高さ20ニュートンの長方形を重ねた図。三角形と長方形の面積はどちらも0.80ニュートン秒で、長方形の高さが平均の力 力 F [N] 時刻 t [s] 平均の力 20 N 三角形の面積 0.80 N·s

実線の三角形が実際の力、破線の長方形が平均の力です。2つの面積は同じ 0.80 N·s です。

卵を投げて受け止める場面で考えます。この項目では、力積と力の大きさだけを考えます(向きは考えません)。物体が止まるまでに受ける力積は、物体の運動量の変化で決まります。0.060 kg の卵が 5.0 m/s から止まるなら、力積の大きさは 0.060 × 5.0 = 0.30 N·s です。受け止めるものが固いか柔らかいかでは、力積は変わりません。変わるのは、止まるまでの時間です。力積が同じなら、平均の力 = 力積 ÷ 時間 なので、時間が長いほど平均の力は小さくなります。グラフでは、同じ面積のまま、山が低く横に広がります。

次の図で、受け止めるものを柔らかくして(止まるまでの時間を長くして)、卵が割れなくなる時間を探します。

0.060キログラムの卵を5.0メートル毎秒でシーツに投げる図と、そのときの力のF-tグラフ。止まるまでの時間を変えると、力積0.30ニュートン秒のまま山の高さと平均の力が変わり、平均の力が12ニュートンを超えると卵が割れる 投げた速さ 5.0 m/s(0.060 kg) 力 F [N] 時刻 t [s] 12 N(割れる線) 平均の力 面積 = 力積 0.30 N·s

この図では、破線の平均の力が 12 N の線を超えると卵が割れるとします。図のための仮の値で、本物の卵の強さではありません。藍の三角形の面積が、卵が受けた力積です。

力積の大きさ 0.30 N·s 平均の力

やってみよう

止まるまでの時間を 0.010 s から 0.010 s ずつ長くしていき、卵が割れなくなるいちばん短い時間を探してください。そのとき、平均の力はいくつですか。

分かること

0.030 s で割れなくなり、平均の力は 10.0 N です。

確認

自動車のエアバッグは、ぶつかったときの人の運動量の変化を小さくしますか。

答え

いいえ。運動量の変化は同じで、止まるまでの時間を長くして、力を小さくしています。

例題

質量 0.15 kg のボールが、速さ 20 m/s で飛んできました。これを、手を引きながら 0.10 s かけて受け止めました。ボールが手から受けた平均の力の大きさを求めなさい。

  1. 受け止める前の運動量の大きさは、0.15 × 20 = 3.0 kg·m/s です。
  2. 止まった後の運動量は 0 なので、ボールが受けた力積の大きさは 3.0 N·s です。
  3. 平均の力 = 力積 ÷ 時間 = 3.0 ÷ 0.10 = 30 N です。

答え: 30 N

5平面上の力積

平面では、運動量も力積も矢印(ベクトル)で表し、x 成分と y 成分ごとに「後 − 前 = 力積」を計算します。

項目4 までは、一直線の上の運動を、符号(+、−)で表してきました。平面の上では、向きが右・左だけではないので、運動量を矢印で表します。運動量の矢印は p と書き、「ピー・ベクトル」と読みます。文字の上の矢印は、「向きと大きさをもつ量」という印です。大きさだけを表すときは、矢印を付けずに p と書きます。

平面の上では、右を x の正の向き、上を y の正の向きとします。なめらかな床の上で、質量 0.10 kg の球が、右(x の正の向き)へ 3.0 m/s で転がっています。この球を横から打ったら、上(y の正の向き)へ 4.0 m/s で転がるようになりました。

なめらかな床を上から見た図。0.10キログラムの球が右へ3.0メートル毎秒で転がってきて、ある点で打たれ、上へ4.0メートル毎秒で転がっていく 3.0 m/s ここで打った 4.0 m/s 0.10 kg x y

打つ前の運動量 p は、右向きに 0.10 × 3.0 = 0.30 kg·m/s です。打った後の運動量 p′ は、上向きに 0.10 × 4.0 = 0.40 kg·m/s です。

運動量の変化は「後 − 前」で、p′ − p です。矢印の引き算は、「逆向きの矢印を足す」と考えます。p と同じ長さで逆向きの矢印を −p と書きます(「マイナス・ピー・ベクトル」)。p′ の先に −p をつなぐと、p′ の根元から −p の先へ向かう矢印が p′ − p です。この矢印が、球が受けた力積 FΔt です。

mv′ − mv = FΔt
矢印の向きまで含めて、運動量の変化が力積に等しいという式です。

次の図で、方眼を数えて、力積の矢印が左右・上下にそれぞれ何目盛り分かを確かめます。

方眼の上に、右向き3目盛りの打つ前の運動量、上向き4目盛りの打った後の運動量、その先から左へ3目盛りの逆向きの矢印をつなぎ、原点から左へ3目盛り・上へ4目盛りの点へ向かう力積の矢印を描いた図 x y O −p 力積 FΔt= p′ − p p(打つ前) p′(打った後) 1目盛り = 0.10 kg·m/s

紫の矢印は運動量、藍の矢印は力積です。破線の −p は、p と同じ長さで逆向きの矢印です。

x 成分 [kg·m/s]y 成分 [kg·m/s]
打つ前 p+0.300
打った後 p′0+0.40
変化(後 − 前)= 力積0 − 0.30 = −0.300.40 − 0 = +0.40

表のとおり、力積の x 成分は −0.30 N·s、y 成分は +0.40 N·s で、図5 の矢印(左へ 3 目盛り、上へ 4 目盛り)と合っています。平面では、x 成分と y 成分のそれぞれで、一直線のときと同じ「後 − 前 = 力積」を使います。

確認

今度は、0.10 kg の球が上へ 4.0 m/s で転がってきて、打たれて右へ 3.0 m/s で転がるようになったとします。本文の場面と、打つ前と打った後が入れ替わっています。力積の矢印は、左上・右上・左下・右下のどれを向きますか。

答え

右下です。力積は p′ − p で、右向きの p′ に、下向きの −p をつなぐからです。

例題

図5 の球(0.10 kg、右へ 3.0 m/s から、上へ 4.0 m/s に変わった)が受けた力積の大きさを求めなさい。力積の成分は、x 成分 −0.30 N·s、y 成分 +0.40 N·s です。

  1. 力積の矢印は、x 成分と y 成分を2辺とする直角三角形の、斜めの辺です。
  2. 三平方の定理から、大きさは √0.302 + 0.402 = √0.09 + 0.16 = √0.25 です。
  3. √0.25 = 0.50 なので、大きさは 0.50 N·s です。

答え: 0.50 N·s

練習問題

右を正の向きとします。

パターン1 運動量と力積の関係(一直線)

問1なめらかな氷の上に、質量 2.0 kg の箱が止まっています。この箱を、右へ一定の力 6.0 N で 1.5 s 押しました。押した後の箱の速度を求めなさい。

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+4.5 m/s(右向きに 4.5 m/s)

力積は FΔt = 6.0 × 1.5 = 9.0 N·s。押す前の運動量は 0。mv′ − mv = FΔt から、2.0 × v′ − 0 = 9.0、v′ = 9.0 ÷ 2.0 = 4.5 m/s

問2質量 1.0 × 103 kg の自動車が、右向きに 20 m/s で走っています。ブレーキをかけたら、3.0 s 後に右向きに 8.0 m/s になりました。
(1) 自動車が受けた力積を求めなさい。
(2) 自動車が受けた平均の力を求めなさい。

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(1) −1.2 × 104 N·s(左向きに 1.2 × 104 N·s) (2) −4.0 × 103 N(左向きに 4.0 × 103 N)

(1) 前の運動量は 1.0 × 103 × 20 = 2.0 × 104 kg·m/s、後の運動量は 1.0 × 103 × 8.0 = 8.0 × 103 kg·m/s。力積は後 − 前で、8.0 × 103 − 2.0 × 104 = −1.2 × 104 N·s (2) 平均の力 = 力積 ÷ 時間 = (−1.2 × 104) ÷ 3.0 = −4.0 × 103 N。負なので、進む向きと逆の左向き

パターン2 向きが変わる運動

問3質量 0.050 kg のボールが、右向きに 12 m/s で飛んできて壁に当たり、左向きに 8.0 m/s ではね返りました。ボールが壁から受けた力積を求めなさい。

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−1.0 N·s(左向きに 1.0 N·s)

当たる前の運動量は 0.050 × (+12) = +0.60 kg·m/s、はね返った後の運動量は 0.050 × (−8.0) = −0.40 kg·m/s。力積は後 − 前で、−0.40 − (+0.60) = −1.0 N·s

問4なめらかな床の上で、質量 0.20 kg の球が、右(x の正の向き)へ 4.0 m/s で転がっています。この球を打ったら、左上へ転がるようになりました。打った後の速度は、x 成分が −2.0 m/s、y 成分が +4.5 m/s です。球が受けた力積の大きさを求めなさい。

x y O −2.0 +4.5 打つ前の速度 4.0 m/s 打った後の速度 1目盛り = 1.0 m/s
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1.5 N·s

打つ前の運動量は x 成分 0.20 × 4.0 = +0.80 kg·m/s、y 成分 0。打った後の運動量は x 成分 0.20 × (−2.0) = −0.40 kg·m/s、y 成分 0.20 × 4.5 = +0.90 kg·m/s。力積の x 成分は −0.40 − (+0.80) = −1.2 N·s、y 成分は 0.90 − 0 = +0.90 N·s。大きさは √1.22 + 0.902 = √1.44 + 0.81 = √2.25 = 1.5 N·s

パターン3 F-t グラフ

問5なめらかな床の上に止まっている質量 0.50 kg の物体に、右向きの力を加えました。力は 0 から一様に増えて 0.025 s 後に 40 N になり、そこから一様に減って 0.050 s 後に 0 になりました(F-t グラフは、底辺 0.050 s、高さ 40 N の三角形)。力を受けた後の物体の速さを求めなさい。

力 F [N] 時刻 t [s] 40 N
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2.0 m/s

力積は三角形の面積で、12 × 0.050 × 40 = 1.0 N·s。前の運動量は 0。mv′ − mv = FΔt から、0.50 × v′ − 0 = 1.0、v′ = 1.0 ÷ 0.50 = 2.0 m/s

問6質量 0.40 kg のボールが、速さ 15 m/s で飛んできました。これを止めるのに、A さんは手を動かさずに 0.020 s で受け止め、B さんは手を引きながら 0.10 s かけて受け止めました。
(1) どちらの場合も、ボールが受けた力積の大きさを求めなさい。
(2) A さん、B さんの場合の平均の力の大きさをそれぞれ求め、A さんの場合は B さんの場合の何倍かを答えなさい。

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(1) どちらも 6.0 N·s (2) A さん 3.0 × 102 N、B さん 60 N、5.0 倍

(1) 運動量の大きさは 0.40 × 15 = 6.0 kg·m/s から 0 になるので、力積の大きさはどちらも 6.0 N·s (2) A さん: 6.0 ÷ 0.020 = 3.0 × 102 N。B さん: 6.0 ÷ 0.10 = 60 N。300 ÷ 60 = 5.0 倍(止まるまでの時間が 0.10 ÷ 0.020 = 5.0 倍違うため)

つまずきやすいところ

まとめ

公式

運動量p = mv単位は kg·m/s。向きは速度と同じです。
力積FΔt単位は N·s。1 N·s = 1 kg·m/s です。
運動量の変化mv′ − mv = FΔt運動量の変化(後 − 前)は、受けた力積に等しくなります。
F-t グラフ力積 = グラフの下の面積力積 = 平均の力 × 時間です。

物理 第3章 運動量

  1. 運動量と力積
  2. 運動量保存則
  3. 反発係数
  4. 運動量とエネルギーの応用

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