要点
2つの物体が力を及ぼし合うだけなら、2つの物体の運動量の和は、衝突の前と後で変わりません。
摩擦のない、なめらかな水平のレールの上に、台車 A と台車 B を置きます。A の質量は 2.0 kg、B の質量は 1.0 kg です。B を止めておき、A を右向きに 3.0 m/s で走らせて、B にぶつけます。
記号の右下の小さい A・B は、どちらの台車の量かを区別するための印です。mA は A の質量、vB は B の速度です。衝突の後の速度には「′」(ダッシュ)を付けます。「′」は「後」の印で、vA′(ブイ・エー・ダッシュ)は衝突の後の A の速度です。
このページでは右を正の向きとします。速度は符号つきで書き、左向きに動けば負です。運動量は質量 × 速度で、p = mv と書きます(単位 kg·m/s)。左向きに動く物体の運動量は負になります。この場面では、mA = 2.0 kg、mB = 1.0 kg、vA = +3.0 m/s、vB = 0 m/s です。A の運動量は 2.0 × 3.0 = 6.0 kg·m/s、B の運動量は 0 kg·m/s です。
次の動画で、衝突している間に A と B が受ける力と、運動量の移り方を確かめます。重い A と軽い B では、衝突している間に強く押されるのはどちらだと思いますか。予想してから動画を見てください。
やってみよう
見出しが「衝突の間(ゆっくり再生)」の間(2.5 秒から 8.5 秒)を見てください。(1) 「B が A を押す力」と「A が B を押す力」の矢印の長さを比べてください。どちらが長いですか。それとも同じですか。(2) A の運動量の棒は何 kg·m/s 減りましたか。B の棒は何 kg·m/s 増えましたか。(3) 2本の力の矢印がいちばん長くなったとき(5.5 秒ごろ)に止めて、A・B・和の棒の値を読んでください。
(1) 2本の矢印は、どのときも同じ長さでした。重い A も軽い B も、同じ強さで押されます。(2) A は 6.0 から 2.0 へ 4.0 kg·m/s 減り、B は 0.0 から 4.0 へ 4.0 kg·m/s 増えました。A が減らした分を、B がそのまま受け取っています。(3) A は約 4.0、B は約 2.0(止めた時刻で少し違います)、和は 6.0 kg·m/s です。衝突の途中でも、和は 6.0 kg·m/s のままです。
衝突している間、A は B から左向きに押され、B は A から右向きに押されます。この2つの力は作用・反作用(A が B を押すと、B も A を押し返す、1組の力)なので、大きさは時間とともに変わっても、どの瞬間も同じ大きさで逆向きです。2つの力がはたらくのは、2台が接している間だけです。だから、力がはたらく時間も同じです。
力積は、力 F × 力がはたらいた時間 Δt(デルタ・ティー)で、FΔt と書きます。力積は力と時間で決まるので、A が受ける力積と B が受ける力積も、同じ大きさで逆向きです。物体の運動量の変化は、その物体が受けた力積に等しくなります(mv′ − mv = FΔt)。だから、A の運動量の変化と B の運動量の変化も、同じ大きさで逆向きです。
衝突の後、A は +1.0 m/s、B は +4.0 m/s で動きました。運動量を表にすると、次のようになります。
| 衝突の前 | 衝突の後 | 変化(後 − 前) | |
|---|---|---|---|
| A | 2.0 × 3.0 = 6.0 kg·m/s | 2.0 × 1.0 = 2.0 kg·m/s | −4.0 kg·m/s |
| B | 1.0 × 0 = 0 kg·m/s | 1.0 × 4.0 = 4.0 kg·m/s | +4.0 kg·m/s |
| 和 | 6.0 kg·m/s | 6.0 kg·m/s | 0 kg·m/s |
A が受けた力積は −4.0 N·s、B が受けた力積は +4.0 N·s です。2つの運動量の和は、衝突の前も後も 6.0 kg·m/s です。和は、符号を付けたまま足します。
A と B の2つをひとまとまりとして考えます。A と B が互いに及ぼし合う力を内力といいます。この場面では、「B が A を押す力」と「A が B を押す力」が内力です。2つの物体の外にある物(地球やレールなど)から受ける力を外力といいます。この場面では、重力とレールからの垂直抗力が外力です。重力と垂直抗力は縦の向きで、台車ごとにつり合っています。レールはなめらかなので、横の向きには外力がはたらきません。運動量の和を変えられるのは、外力だけです。
外力の和が 0 のとき(この場面のように、外力がはたらいてもつり合っているときも含みます)、2つの物体の運動量の和は変わりません。これを運動量保存則といいます。記号で書くと、次の式になります。左辺が衝突の前、右辺が衝突の後の運動量の和です。
この場面の値を入れると、2.0 × 3.0 + 1.0 × 0 = 2.0 × 1.0 + 1.0 × 4.0 で、両辺とも 6.0 kg·m/s です。
確認
衝突している間に、A が受けた力積と B が受けた力積を足すと、いくつになりますか。
0 です。2つの力積は同じ大きさで逆向きだからです。
例題
なめらかな水平のレールの上で、質量 1.0 kg の台車 A が右向きに 4.0 m/s で進み、止まっている質量 3.0 kg の台車 B にぶつかりました。衝突の後、A は左向きに 2.0 m/s ではね返りました。衝突の後の B の速度を求めなさい。右を正の向きとします。
答え: +2.0 m/s(右向きに 2.0 m/s)
2つの物体がぶつかってくっつくと、衝突の後は2つが同じ速度で動くので、求める速度は1つだけになります。
台車 A の前に粘土を付けて、止まっている台車 B にぶつけると、2台はくっつき、1つになって動きます。このように、ぶつかってくっつくことを合体といいます。くっついた2台は、同じ速度で動きます。この速度を v′ と書きます(A・B の印は付けません)。
動きの速さは実際とは違います。
運動量保存則の右辺は、vA′ と vB′ がどちらも v′ になるので、mAv′ + mBv′ = (mA + mB)v′ です。
くっついた後は、質量 mA + mB の1つの物体として、衝突の前と同じ運動量を持って動きます。
質量 2.0 kg の A が +3.0 m/s で進み、止まっている質量 2.0 kg の B にぶつかってくっつく場合を考えます。衝突の前の運動量の和は、2.0 × 3.0 + 2.0 × 0 = 6.0 kg·m/s です。くっついた後の質量は 2.0 + 2.0 = 4.0 kg です。運動量の和は 6.0 kg·m/s のままなので、4.0 × v′ = 6.0 です。v′ = 6.0 ÷ 4.0 = +1.5 m/s です。A の速さ 3.0 m/s の半分になります。
次の図で、ぶつけられる台車 B の重さを変えて、くっついた後の2台の速さがどう変わるかを確かめます。
レールはなめらかで、台車 A は 2.0 kg、衝突の前の速度は +3.0 m/s です。B の台車は 1.0 kg で、おもりを1個積むごとに 1.0 kg 重くなります。点は、くっついた後の 0.5 秒ごとの位置です。くっついてから 2.0 秒で図の動きを止めます(実際には進み続けます)。
やってみよう
B の質量を 1.0 kg から 1.0 kg ずつ重くして、そのつど「走らせる」を押してください。くっついた後の速度が +1.00 m/s になるのは、B の質量が何 kg のときですか。
4.0 kg のときです。くっついた後の質量は 2.0 + 4.0 = 6.0 kg で、6.0 kg × 1.00 m/s = 6.0 kg·m/s です。
確認
くっついた後の2台の運動量の和は、衝突の前の和より小さくなりますか。
いいえ。外力の和が 0 なので、衝突の前と同じです。
例題
なめらかな水平のレールの上で、質量 2.0 kg の台車 A が右向きに 5.0 m/s で、質量 3.0 kg の台車 B が左向きに 2.0 m/s で進み、正面からぶつかってくっつきました。くっついた後の速度を求めなさい。右を正の向きとします。
答え: +0.80 m/s(右向きに 0.80 m/s)
止まっていた物体が2つに分かれるとき、運動量の和は分かれた後も 0 なので、2つは逆向きに動き、軽いほうが速く動きます。
なめらかなレールの上に、質量 1.0 kg の台車 A と質量 2.0 kg の台車 B を、間に縮めたばねをはさんで並べ、糸でしばっておきます。A が左、B が右です。2台は止まっています。糸を切ると、ばねが2台を押し離し、2台は逆向きに動き出します。このように、1つの物体(ここでは、しばってひとまとまりになった2台)が2つに分かれることを分裂といいます。ばねはとても軽いので、ばねの運動量は考えなくてよく、A と B の2つだけを考えます。ばねを通して A と B が押し合う力は内力です。横の向きに外力ははたらかないので、運動量保存則が使えます。
動きの速さは実際とは違います。
分かれる前、2台は止まっているので、運動量の和は 0 kg·m/s です。だから、分かれた後の運動量の和も 0 です。和が 0 になるには、2台の運動量が同じ大きさで逆向き(一方が正、もう一方が負)でなければなりません。
分かれた後、A は −2.0 m/s、B は +1.0 m/s で動きました。A の運動量は 1.0 × (−2.0) = −2.0 kg·m/s、B の運動量は 2.0 × 1.0 = +2.0 kg·m/s で、和は 0 kg·m/s です。運動量の大きさは同じ 2.0 kg·m/s なので、質量が 2 倍の B は、速さが A の半分になります。
次の図は、スケートリンクのなめらかな氷の上で、止まっていたあなたと友だちが、手で押し合って離れる場面です。友だちの体重(質量)を変えて、押し合った後の2人の離れる速さがどう違うかを確かめます。
氷はなめらかで、摩擦は考えません。押し合う強さは、この図では、2人がどちらも 60 N·s の力積を受けるように決めています(あなたは左向き、友だちは右向き)。点は、押し合った後の 0.5 秒ごとの位置です。押し合ってから 2.0 秒で図の動きを止めます(実際にはすべり続けます)。
やってみよう
友だちの質量を 60 kg から 10 kg ずつ軽くして、そのつど「押し合う」を押してください。友だちの離れる速さが、あなたの速さの 2 倍になるのは、友だちの質量が何 kg のときですか。そのときの2人の速度を読んでください。
30 kg のときです。あなたは −1.00 m/s、友だちは +2.00 m/s です。0.5 秒ごとの点の間隔も、友だちのほうが 2 倍です。
確認
押し合う前の、あなたと友だちの運動量の和はいくつですか。押し合った後はどうですか。
どちらも 0 kg·m/s です。押し合う前は2人とも止まっていて、押し合う力は内力だからです。
例題
なめらかな氷の上に、質量 50 kg の人が、質量 2.0 kg のボールを持って止まっています。人がボールを、水平に右向きに 10 m/s で投げました。投げた後の人の速度を求めなさい。右を正の向きとします。
答え: −0.40 m/s(左向きに 0.40 m/s)
平面上の衝突では、運動量の x 成分の和と y 成分の和が、それぞれ衝突の前と後で変わりません。
なめらかな水平の台の上をすべる2つの球を、真上から見て考えます。この項目では、図の右を x の正の向き、図の上を y の正の向きとします。真上から見た図なので、図の上は鉛直上向きではなく、台の上の1つの向き(たとえば北)です。
運動量はp = mv で、速度と同じ向きの矢印で表せます(文字の上の矢印は、向きを持つ量の印です)。平面の上では、運動量を x 成分と y 成分に分けて考えます。A の運動量のベクトルを pA、B の運動量のベクトルを pB と書きます。
質量 1.0 kg の球 A が x の正の向きに 4.0 m/s で、質量 1.0 kg の球 B が y の正の向きに 3.0 m/s ですべってきて、交差点のような所でぶつかり、くっつきます。A の運動量は x 成分 1.0 × 4.0 = +4.0 kg·m/s、y 成分 0 kg·m/s です。B の運動量は x 成分 0 kg·m/s、y 成分 1.0 × 3.0 = +3.0 kg·m/s です。
| x 成分 | y 成分 | |
|---|---|---|
| A の運動量 | +4.0 kg·m/s | 0 kg·m/s |
| B の運動量 | 0 kg·m/s | +3.0 kg·m/s |
| 和(衝突の前) | +4.0 kg·m/s | +3.0 kg·m/s |
衝突している間、A と B は作用・反作用で、同じ大きさで逆向きの力を及ぼし合います。この力を x 成分と y 成分に分けると、どちらの向きでも、A と B が受ける力積は同じ大きさで逆向きです。だから、x 成分の和と y 成分の和が、それぞれ変わりません。この場面では、衝突の後も、運動量の x 成分の和は +4.0 kg·m/s、y 成分の和は +3.0 kg·m/s です。
運動量の和をベクトルで表すときは、pA の矢印の先に pB の矢印の根元をつなぎ、pA の根元から pB の先へ矢印を引きます。この矢印は、横 4.0、縦 3.0 の直角三角形の斜辺なので、大きさは √4.02 + 3.02 = √25 = 5.0 kg·m/s です。
(b) の方眼の1目盛りは 1.0 kg·m/s です。pA の先に pB をつないで足しています。
確認
平面上の衝突で、運動量の「大きさの和」(A の大きさ + B の大きさ)は、衝突の前と後で変わりませんか。
変わることがあります。この図の衝突では、前は 4.0 + 3.0 = 7.0 kg·m/s、後はくっついた球の運動量の大きさで 5.0 kg·m/s です。
例題
上の図の2つの球(A は 1.0 kg、x の正の向きに 4.0 m/s。B は 1.0 kg、y の正の向きに 3.0 m/s)が、ぶつかってくっつきました。くっついた後の速度の x 成分と y 成分、速さを求めなさい。
答え: x 成分 +2.0 m/s、y 成分 +1.5 m/s、速さ 2.5 m/s
床・レール・氷・台はどれもなめらかで、摩擦は考えません。一直線の運動は右を正の向きとします。平面の運動は、右を x の正の向き、図の上を y の正の向きとします。重力加速度は使いません。
問1前に粘土を付けた質量 2.0 kg の台車 A が、右向きに 3.0 m/s で進み、止まっている質量 3.0 kg の台車 B にぶつかってくっつきました。くっついた後の速度を求めなさい。
+1.2 m/s(右向きに 1.2 m/s)
衝突の前の運動量の和は 2.0 × 3.0 + 3.0 × 0 = 6.0 kg·m/s。くっついた後の質量は 2.0 + 3.0 = 5.0 kg。5.0 × v′ = 6.0 から、v′ = 6.0 ÷ 5.0 = +1.2 m/s
問2質量 4.0 kg の台車 A が右向きに 3.0 m/s で、質量 2.0 kg の台車 B が左向きに 3.0 m/s で進み、正面からぶつかりました。衝突の後、A は左向きに 1.0 m/s で動きました。衝突の後の B の速度を求めなさい。
+5.0 m/s(右向きに 5.0 m/s)
右を正とすると、vA = +3.0 m/s、vB = −3.0 m/s、vA′ = −1.0 m/s。衝突の前の運動量の和は 4.0 × 3.0 + 2.0 × (−3.0) = 12 − 6.0 = 6.0 kg·m/s。運動量保存則から 6.0 = 4.0 × (−1.0) + 2.0 × vB′、2.0 × vB′ = 6.0 + 4.0 = 10、vB′ = +5.0 m/s
問3なめらかな氷の上で、質量 60 kg のあなたと質量 40 kg の友だちが、向かい合って止まっています。2人が手で押し合うと、あなたは左向きに 1.0 m/s で動き出しました。友だちの速度を求めなさい。
+1.5 m/s(右向きに 1.5 m/s)
押し合う前の運動量の和は 0 kg·m/s。あなたの運動量は 60 × (−1.0) = −60 kg·m/s。友だちの速度を v とすると、−60 + 40 × v = 0、v = 60 ÷ 40 = +1.5 m/s
問4なめらかな水平の床の上を、質量 60 kg の人が乗った質量 30 kg の台車が、右向きに 1.0 m/s で進んでいます。人が台車の後ろから水平に跳び降りたところ、人の速度は、床から見て左向きに 0.50 m/s になりました。跳び降りた後の台車の速度を求めなさい。水平の向きの運動だけを考えます。
+4.0 m/s(右向きに 4.0 m/s)
水平の向きには外力がはたらかないので、水平の向きの運動量の和は変わらない。跳び降りる前は、人と台車が一緒に +1.0 m/s で動いているので、運動量の和は (60 + 30) × 1.0 = 90 kg·m/s。跳び降りた後の人の運動量は 60 × (−0.50) = −30 kg·m/s。台車の速度を v とすると、90 = −30 + 30 × v、30 × v = 120、v = +4.0 m/s
問5なめらかな水平の台の上で、質量 3.0 kg の球 A が x の正の向きに 2.0 m/s で、質量 2.0 kg の球 B が y の正の向きに 4.0 m/s ですべってきて、ぶつかってくっつきました。くっついた後の速度の x 成分と y 成分、速さを求めなさい。
x 成分 +1.2 m/s、y 成分 +1.6 m/s、速さ 2.0 m/s
衝突の前の運動量の和は、x 成分 3.0 × 2.0 = 6.0 kg·m/s、y 成分 2.0 × 4.0 = 8.0 kg·m/s。くっついた後の質量は 3.0 + 2.0 = 5.0 kg。x 成分 6.0 ÷ 5.0 = +1.2 m/s、y 成分 8.0 ÷ 5.0 = +1.6 m/s。速さは √1.22 + 1.62 = √4.0 = 2.0 m/s
問6なめらかな水平の台の上で、質量 1.0 kg の球 A が x の正の向きに 5.0 m/s ですべってきて、止まっている質量 2.0 kg の球 B に当たりました。衝突の後、A は y の正の向きに 2.0 m/s で動きました(直角に曲がりました)。衝突の後の B の速度の x 成分と y 成分を求めなさい。
x 成分 +2.5 m/s、y 成分 −1.0 m/s
衝突の前の運動量の和は、x 成分 1.0 × 5.0 = 5.0 kg·m/s、y 成分 0 kg·m/s。衝突の後の A の運動量は、x 成分 0 kg·m/s、y 成分 1.0 × 2.0 = 2.0 kg·m/s。x 成分: 5.0 = 0 + 2.0 × (B の x 成分) から、B の x 成分 = +2.5 m/s。y 成分: 0 = 2.0 + 2.0 × (B の y 成分) から、B の y 成分 = −2.0 ÷ 2.0 = −1.0 m/s(図の下向き)
要点
物理 第3章 運動量