要点
1つの物体にはたらく力の合力が 0 のとき、力はつり合っているといいます。
止まっている物体では、はたらく力の合力は 0 です。2つの場面で確かめます。机の上に、質量 1.0 kg の本が置いてあります。本には、地球が本を引く力(重力)が下向きにはたらきます。大きさは、質量 m と重力加速度の大きさ g(9.8 m/s²)を掛けた mg で、mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N です。机が本を押す力(垂直抗力)は、上向きに 9.8 N です。天井から、質量 1.0 kg のおもりを糸でつるします。おもりには、地球がおもりを引く力(重力)が下向きに 9.8 N はたらきます。糸がおもりを引く力(張力)は、上向きに 9.8 N です。どちらも、上向きと下向きの力が同じ大きさで、合力は 0 です。
このように、1つの物体にはたらく力の合力が 0 のとき、物体にはたらく力はつり合っているといいます。この状態を力のつり合いといいます。止まっている物体にはたらく力は、つり合っています。このページでは、止まっている物体だけを考えます。
物体にはたらく力が3つ以上あるときも、つり合いは「全部の力を合わせて 0」という意味です。どれか2つを選んで合わせても、0 になるとは限りません。
矢印の長さは力の大きさを表します。
確認
あらい床の上の箱を、あなたが横から押しています。箱は動きません。箱にはたらく力は、つり合っていますか。
つり合っています。箱は止まっているので、重力・垂直抗力・摩擦力・手が箱を押す力の4つを全部合わせた合力が 0 です。
物体にはたらく力は、① 重力、② 物体が触れている物から受ける力、の順に探すと、もれなく見つかります。
つり合いを使って力の大きさを求めるには、物体にはたらく力を、1つも落とさずに見つける必要があります。1つでも落とすと、合力を正しく求められません。そこで、次の手順で探します。
まず、重力を描きます。重力は、地球が物体を引く力です。向きは鉛直下向き(真下)で、矢印は物体の中心から描きます。
次に、物体が触れている物を、全部挙げます。触れている物それぞれから、物体が受ける力を描きます。
触れていない物から受ける力には、重力のほかに磁石の力などもありますが、このページの力の図には描きません。
描くのは、その物体が受ける力だけです。その物体がほかの物に加える力は、描きません。たとえば、床の上の箱の力を描くとき、矢印の根元はどれも箱にあります。
矢印の長さは大きさを表しません。向きと、どの物から受ける力かだけを見てください。
やってみよう
手順の「② 触れている物から受ける力」のボタンを押してください。箱が触れている物はいくつありますか。それぞれから、箱はどんな力を受けていますか。
触れている物は、床と糸の2つです。床から垂直抗力と摩擦力を、糸から張力を受けています。手は箱に触れていないので、手から直接の力は受けません。
確認
床に置いた箱にはたらく力を描くとき、「箱が床を押す力」も描きますか。
描きません。その力は床が受ける力で、箱が受ける力ではないからです。
例題
天井からばねでおもりをつるし、あなたが手でおもりを下から支えて止めています(ばねは伸びています)。おもりにはたらく力を、「〇〇が△△を押す力」のように、すべて挙げなさい。
答え: 地球がおもりを引く力(重力、下向き)、ばねがおもりを引く力(弾性力、上向き)、手がおもりを押す力(上向き)の3つ
力が一直線上にないときは、力を x 成分と y 成分に分け、「x 成分の合計 = 0」「y 成分の合計 = 0」の2つの式を立てます。
右を x 軸の正の向き、上を y 軸の正の向きとします。力 F を、x 軸との間の 90° 以下の角 θ(シータ)で表すと、x 成分の大きさは F cos θ、y 成分の大きさは F sin θ です(cos はコサイン、sin はサインと読みます)。符号は向きで付けます(右・上が +、左・下が −)。このページで使う三角比は、sin 30° = 0.500、cos 30° ≒ 0.866、sin 45° = cos 45° ≒ 0.707、sin 60° ≒ 0.866、cos 60° = 0.500 です。
合力が 0 なら、合力の x 成分も y 成分も 0 です。だから、つり合っている物体では、次の2つが成り立ちます。
質量 1.0 kg のおもりを、左右に同じ長さの2本の糸でつるします。2本の糸は、どちらも水平から 30° 上を向いています。おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(重力)9.8 N と、左の糸がおもりを引く力、右の糸がおもりを引く力の3つです。
左の糸の張力の大きさを T1、右の糸の張力の大きさを T2 とします。3つの力の成分を表にします。
| x 成分 | y 成分 | |
|---|---|---|
| 左の糸がおもりを引く力 | −T1 cos 30° | +T1 sin 30° |
| 右の糸がおもりを引く力 | +T2 cos 30° | +T2 sin 30° |
| 地球がおもりを引く力 | 0 | −9.8 N |
x 成分の合計 = 0 から、−T1 cos 30° + T2 cos 30° = 0 です。だから T1 = T2 です。左右の張力は同じ大きさです。この大きさを T と書きます。
y 成分の合計 = 0 から、T sin 30° + T sin 30° − 9.8 = 0 です。sin 30° = 0.500 なので、T × 0.500 + T × 0.500 = 9.8 です。だから T = 9.8 N です。
藍の矢印が2本の糸の張力、赤の矢印が重力です。矢印の長さは力の大きさを表します。
やってみよう
質量 m を 2.0 kg にし、糸の角の「90°」のボタンを押してください。次に「30°」のボタンを押してください。1本の糸の張力 T は、いくつからいくつになりましたか。
T は 9.8 N から 19.6 N になりました。2本の y 成分の合計は、どちらも 19.6 N(mg)のままです。
確認
2本の糸が鉛直(θ = 90°)のとき、1本の糸の張力は、おもりの重力の何倍ですか。
半分(0.5 倍)です。2本の糸が、どちらも真上へ同じ大きさで引いて、合わせて mg を支えるからです。
例題
質量 1.0 kg のおもりを、左右対称の2本の糸でつるしたところ、おもりは止まりました。2本の糸は、どちらも水平から 45° 上を向いています。1本の糸の張力の大きさを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: 約 6.9 N
物体 A が物体 B に力を加えると、B も A に、同じ大きさで逆向きの力を加えます。これを作用・反作用の法則といいます。
あなたと友だちが、それぞればねはかりを持ち、2つのばねはかりのフックを引っかけて引き合います。あなたのばねはかりを A、友だちのばねはかりを B とします。A が B を引くと、B も A を引き返します。
物体 A が物体 B に力を加えると、B も A に力を加えます。2つの力は、同じ大きさで、逆向きで、同じ直線の上にあります。これを作用・反作用の法則といいます。「さよう・はんさよう」と読みます。2つの力の一方を作用、もう一方を反作用といいます。どちらを作用と呼んでもかまいません。
「A が B を引く力」は B にはたらき、「B が A を引く力」は A にはたらきます。作用と反作用は、いつも別々の物体にはたらきます。
だから、力を言うときは、「A が B を引く力」のように、誰が・誰に加える力かを必ず言います。こう言うと、反作用は「B が A を引く力」と、言葉を入れかえるだけで分かります。このページでは、ここから先も、この言い方で力を書きます。
作用・反作用は、触れていない物体の間でも成り立ちます。地球がりんごを引く力(重力)の反作用は、りんごが地球を引く力です。2つは同じ大きさです。地球の質量はとても大きいので、りんごに引かれても、動く様子は見えません。
赤の矢印はりんごにはたらく力、藍の矢印は地球にはたらく力で、地球の中に描いています。
ばねはかりの引き合いに戻ります。下の図で、あなたと友だちのばねはかりの読みを比べます。
上から見た図です。2つのフックは離して描き、点線でつないでいます。実線の矢印はばねはかり B にはたらく力で、B のフックから描いています。破線の矢印はばねはかり A にはたらく力で、A のフックから描いています。
やってみよう
あなたが引く強さを 4.0 N から 10.0 N に変えてください。2つのばねはかりの読み(A が B を引く力、B が A を引く力)は、それぞれいくつになりましたか。
どちらも 10.0 N になりました。友だちがどう引いても、A と B がフックで引き合っている間は、2つの読みはいつも同じです。
確認
磁石が鉄のクリップを引く力の反作用は、どんな力ですか。
クリップが磁石を引く力です。「磁石がクリップを引く力」の「誰が」と「誰に」を入れかえた力だからです。
同じ大きさで逆向きの2つの力が、同じ物体にはたらいていればつり合いの組、2つの物体が互いに加え合っていれば作用・反作用の組です。
水平な床の上に、箱が止まっています。この場面には、次の3つの力が出てきます。
3つとも同じ大きさです。
「地球が箱を引く力」と「床が箱を押す力」は、どちらも箱にはたらく力です。箱は止まっているので、この2つの合力は 0 です。この2つは、つり合いの組です。
「床が箱を押す力」と「箱が床を押す力」は、「誰が」と「誰に」を入れかえた力です。1つは箱に、もう1つは床にはたらきます。この2つは、作用・反作用の組です。
つり合いの組も作用・反作用の組も、2つの力は同じ大きさで逆向きです。大きさと向きだけでは見分けられないので、どの物体にはたらく力かで見分けます。2つの力が同じ物体にはたらいているなら、つり合いの組です。2つの力が別々の物体にはたらき、「A が B に」と「B が A に」の関係なら、作用・反作用の組です。
太い実線の2本が、選んだ組です。太い枠は、その組の力がはたらく物体です。糸とおもりを離して描き、点線でつないでいます。この図では、糸の下の端の近くの力だけを描いています。
やってみよう
「作用・反作用の組」のボタンを押してください。太くなった2つの力は、それぞれどの物体にはたらいていますか。
糸がおもりを引く力はおもりに、おもりが糸を引く力は糸にはたらいています。はたらく物体が別々です。
確認
あなたが手で壁を押すとき、「手が壁を押す力」と「壁が手を押す力」は、つり合いの組ですか。
いいえ、作用・反作用の組です。1つは壁に、もう1つは手にはたらき、はたらく物体が違うからです。
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。糸はどれも軽い糸(重さを考えない糸)とします。右を x 軸の正の向き、上を y 軸の正の向きとします。三角比は、sin 30° = 0.500、cos 30° ≒ 0.866、sin 45° = cos 45° ≒ 0.707、sin 60° ≒ 0.866、cos 60° = 0.500 を使います。
問1なめらかな斜面の上に箱を置き、斜面に沿って上へ張った糸で止めています。箱にはたらく力を、「〇〇が△△を押す力」のように、すべて挙げなさい。また、それぞれの向きを答えなさい。
地球が箱を引く力(重力、鉛直下向き)、斜面が箱を押す力(垂直抗力、斜面に垂直で斜面から離れる向き)、糸が箱を引く力(張力、斜面に沿って上向き)の3つ
手順①で重力。手順②で、箱が触れている物は斜面と糸の2つ。斜面からは垂直抗力を受ける。なめらかな斜面なので、摩擦力はない。糸からは、糸に沿って引く張力を受ける
矢印の長さは大きさを表しません。
問2水平な床の上に箱 A を置き、その上に箱 B を重ねました。2つの箱は止まっています。下の箱 A にはたらく力を、「〇〇が△△を押す力」のように、すべて挙げなさい。また、それぞれの向きを答えなさい。
地球が A を引く力(重力、下向き)、床が A を押す力(垂直抗力、上向き)、B が A を押す力(下向き)の3つ
手順①で、地球が A を引く力。手順②で、A が触れている物は床と B の2つ。床は A を上へ押す。B は A の上にのっていて、A を下へ押す。地球が B を引く力は B にはたらく力なので、A の力には入れない
矢印の長さは大きさを表しません。この図では、A にはたらく力だけを描いています。
問3質量 1.5 kg のおもりを、左右対称の2本の糸でつるしたところ、おもりは止まりました。2本の糸は、どちらも水平から 60° 上を向いています。1本の糸の張力の大きさを求めなさい。
約 8.5 N
地球がおもりを引く力は mg = 1.5 × 9.8 = 14.7 N。左右対称なので、2本の張力は同じ大きさ T。y 成分の合計 = 0 から、T sin 60° + T sin 60° − 14.7 = 0。2T × 0.866 = 14.7 で、T = 14.7 ÷ 1.732 = 8.48… ≒ 8.5 N
問4質量 0.50 kg のおもりを、2本の糸でつるしたところ、おもりは止まりました。糸1は左上へ、水平から 30° 上を向いて天井に付いています。糸2は右へ水平に張って、壁に付いています。糸1の張力 T1 と糸2の張力 T2 の大きさを求めなさい。
T1 = 9.8 N、T2 ≒ 8.5 N
地球がおもりを引く力は mg = 0.50 × 9.8 = 4.9 N(下向き)。糸1がおもりを引く力の成分は、x が −T1 cos 30°、y が +T1 sin 30°。糸2がおもりを引く力の成分は、x が +T2、y が 0。y 成分の合計 = 0 から、T1 sin 30° − 4.9 = 0。T1 × 0.500 = 4.9 で、T1 = 9.8 N。x 成分の合計 = 0 から、−T1 cos 30° + T2 = 0。T2 = 9.8 × 0.866 = 8.48… ≒ 8.5 N
問5天井からばねでおもりをつるし、おもりは止まっています。次の4つの力のうち、(1) つり合いの組と、(2) 作用・反作用の組(2組)を答えなさい。
ア 地球がおもりを引く力
イ ばねがおもりを引く力
ウ おもりがばねを引く力
エ おもりが地球を引く力
(1) アとイ (2) イとウ、アとエ
アとイは、どちらもおもりにはたらく力で、おもりが止まっているので合力は 0。つり合いの組。イとウは、「ばねが」「おもりを」を入れかえた力で、1つはおもりに、もう1つはばねにはたらく。作用・反作用の組。アとエは、「地球が」「おもりを」を入れかえた力で、1つはおもりに、もう1つは地球にはたらく。作用・反作用の組
問6水平な床の上に箱 A を置き、その上に箱 B を重ねました。2つの箱は止まっています。
(1) 上の箱 B にはたらく力を、「〇〇が△△を押す力」のようにすべて挙げなさい。また、そのうち、地球が B を引く力とつり合っている力はどれですか。
(2) (1) で答えた「つり合っている力」の反作用は、どんな力ですか。
(1) 地球が B を引く力(下向き)と、A が B を押す力(上向き)の2つ。つり合っているのは A が B を押す力 (2) B が A を押す力
(1) 手順①で、地球が B を引く力。手順②で、B が触れている物は A だけで、A は B を上へ押す。B は止まっているので、この2つの力はつり合っている。(2) 「A が B を押す力」の「誰が」と「誰に」を入れかえると、「B が A を押す力」。A が B を押す力は、地球が B を引く力とはつり合いの組、B が A を押す力とは作用・反作用の組。1つの力が、2つの組に入ることがある
要点
物理基礎 第2章 力と運動の法則