このページは「等加速度直線運動」「等加速度直線運動(2)」の続きです。速度の式 v = v0 + at、位置の式 x = v0t + 12at2、時間を使わない式 v2 − v02 = 2ax を使います。
公式
2〜4行目は、空気の抵抗を考えず、静かに放したとき(自由落下)の式です
空気の抵抗を考えずに、静かに放した物体が落ちる運動を、自由落下といいます。
同じ高さから、重い球と軽い球を、同時に静かに放します。重い球のほうが速く落ちそうな気がします。下の動画で確かめます。
空気の抵抗とは、物体が空気の中を動くときに、空気にじゃまされて動きにくくなることです。このページでは、空気の抵抗は考えません。空気の抵抗は、あとの単元で扱います。
「静かに放す」とは、押したり投げたりせずに、手を開いて放すことです。放した瞬間の速度は 0 です。つまり、初速度が v0 = 0 です。
このように落ちる運動を自由落下といいます。
下の動画では、重い球と軽い球を同じ高さから同時に放し、0.10 s ごとの位置を薄い残像で残しています。落ちるようすは、実際の 8 分の 1 の速さ(スローモーション)にしています。実際には、4.9 m を 1.0 s で落ちます。
やってみよう
動画を最後まで再生して、終わりの画面を見てください。(1) 同じ時刻の残像は、横の点線で結んであります。重い球と軽い球の残像は、同じ高さに並んでいますか。(2) 残像の間隔は、上のほうと下のほうで、どちらが広いですか。
(1) どの残像も、2つの球で同じ高さに並んでいます。2つの球は、どの時刻でも同じ位置にあり、同時に床に着きます。(2) 下のほうが広いです。最初の 0.10 s は約 5 cm、最後の 0.10 s は約 93 cm 落ちます。同じ 0.10 s の間に落ちる距離が長くなっていくので、球はだんだん速くなっています。
確認
手で下へ軽く押し出してから放した球の運動は、自由落下ですか。
いいえ。初速度が 0 ではないからです。
自由落下の加速度は、どの物体でも同じ 9.8 m/s² で、これを重力加速度といいます。
糸におもりをつるしたときの、糸の向きを鉛直といいます。真下の向きを鉛直下向き、真上の向きを鉛直上向きといいます。自由落下する物体は、鉛直下向きにまっすぐ落ちます。
この資料では、自由落下の問題で、鉛直下向きを正の向きとします。物体を放した点を原点、放した時刻を 0 とします。「等加速度直線運動(2)」のページで斜面に沿って上向きを正の向きにしたように、正の向きは問題に合わせて決める約束です。
縦の向きの位置は、横の位置 x と区別して、y で表すことが多いです。y は「ワイ」と読みます。このページの y は、「放した点から下へ何 m の所にいるか」を表します。たとえば y = +4.9 m は、放した点から 4.9 m 下にいるということです。自由落下では、物体はずっと下へ進みます。だから y は、放してからそれまでに落ちた距離と同じです。
球を静かに放したときの、1 秒ごとの速度は、次の表のようになります。
| 時刻 t(s) | 0 | 1.0 | 2.0 | 3.0 |
|---|---|---|---|---|
| 速度 v(m/s) | 0 | +9.8 | +19.6 | +29.4 |
速度が + なのは、下向き(正の向き)に進んでいるからです。速度は、1 秒ごとに 9.8 m/s ずつ増えています。
1 秒ごとに速度が同じだけ増えるので、加速度は一定です。加速度を a = Δv / Δt で求めます。0 〜 3.0 s で、Δv = 29.4 − 0 = 29.4 m/s、Δt = 3.0 s です。a = 29.4 ÷ 3.0 = 9.8 m/s² です。加速度が一定のまま、まっすぐ下へ進むので、自由落下は等加速度直線運動です。
自由落下の加速度を重力加速度といいます。地球の重力によって物体が落ちるときの加速度です。重力加速度の大きさは、記号 g で表します。g は「ジー」と読みます。
このページでは下向きを正の向きにしたので、加速度は a = +g = +9.8 m/s² です。
上の表を、v-t グラフに点として打ちます。横軸が時刻 t、縦軸が速度 v です。たとえば点(2.0 s, 19.6 m/s)は、「放してから 2.0 s 後に、下向きに速さ 19.6 m/s で落ちている」という意味です。位置ではありません。点は、原点を通る右上がりの1本の直線の上に並びます。横に 1.0 s 進むと、縦に 9.8 m/s 上がります。だから傾きは 9.8 ÷ 1.0 = 9.8 m/s² で、加速度 g と同じです。グラフの線は、球が通った道ではありません。球は、まっすぐ下へ落ちているだけです。
下向きを正の向きとしています。
項目1で見たように、重い球も軽い球も、同じように落ちました。だから、どの物体でも、自由落下の加速度は同じ g = 9.8 m/s² です。
放した瞬間、速度は 0 ですが、加速度は 9.8 m/s² です。0 ではありません。もし加速度が 0 なら、速度は 0 のまま変わらず、球は空中に止まったままになるはずです。加速度が 9.8 m/s² なので、放した次の 1 秒で、速度は 0 から 9.8 m/s に増えます。「等加速度直線運動(2)」のページで、折り返す瞬間の台車の速度は 0 でも、加速度は 0 ではなかったのと同じ考え方です。
確認
球を放した瞬間、速度は 0 です。このとき、加速度も 0 ですか。
いいえ。加速度は 9.8 m/s² です。
等加速度直線運動の3つの式に v0 = 0、a = g を入れると、自由落下の式 v = gt、y = 12gt2、v2 = 2gy になります。
自由落下は等加速度直線運動なので、前のページまでの3つの式がそのまま使えます。式は、次の3つのように変えます。
速度の式 v = v0 + at に、v0 = 0、a = g を入れます。v = 0 + gt なので、v = gt です。gt は g × t のことです。
確かめます。t = 2.0 s なら、v = 9.8 × 2.0 = 19.6 m/s で、項目2の表と同じです。
位置の式 x = v0t + 12at2 で、x を y に書き換え、v0 = 0、a = g を入れます。y = 0 × t + 12gt2 なので、y = 12gt2 です。
時間を使わない式 v2 − v02 = 2ax で、x を y に書き換え、v0 = 0、a = g を入れます。v2 − 02 = 2gy なので、v2 = 2gy です。
1 秒ごとの速度と位置を、v = gt と y = 12gt2 で求めると、次の表のようになります。
| 時刻 t(s) | 0 | 1.0 | 2.0 |
|---|---|---|---|
| 速度 v(m/s) | 0 | +9.8 | +19.6 |
| 位置 y(m) | 0 | +4.9 | +19.6 |
たとえば t = 2.0 s では、y = 12 × 9.8 × 2.02 = 12 × 9.8 × 4.0 = 19.6 m です。放してから 2.0 s 後に、放した点から 19.6 m 下にいるということです。
時間が 1.0 s から 2.0 s へ2倍になると、速さは 9.8 m/s から 19.6 m/s へ2倍になります。v = gt なので、速さは時間に比例します。
時間が 1.0 s から 2.0 s へ2倍になると、落ちた距離は 4.9 m から 19.6 m へ4倍になります。y = 12gt2 なので、落ちた距離は t2 に比例します。時間が2倍なら、落ちた距離は 2 × 2 = 4 倍です。
下向きを正の向き、放した点を原点としています。空気の抵抗は考えません。紫の矢印は速度、橙の矢印は加速度です。単位が違うので、紫と橙の矢印の長さは比べられません。
やってみよう
時刻 t を 1.0 s から 3.0 s に変えてください。時間は3倍になります。位置 y の表示は何倍になりましたか。
+4.9 m から +44.1 m で、9倍です。時間が3倍なら、落ちた距離は 3 × 3 = 9 倍です。加速度の矢印は、どちらの時刻でも同じ長さです。
確認
自由落下の3つの式 v = gt、y = 12gt2、v2 = 2gy には、v0 が出てきません。なぜですか。
静かに放すので、初速度が v0 = 0 だからです。v0 = 0 を入れると、v0 のついた部分(v0、v0t、v02)が 0 になって消えます。
例題
高い所から球を静かに放しました。放してから 1.5 s 後の速さと、それまでに落ちた距離を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とし、空気の抵抗は考えません。
答え: 速さ 15 m/s、落ちた距離 11 m
地面から高い所で放したときは、地面までの高さを y = 12gt2 の y に入れて落ちるまでの時間を求め、その時間を v = gt に入れて着く直前の速さを求めます。
地面から高さ 19.6 m の所から、球を静かに放します。高さは、記号 h で表すことが多いです。h は「エイチ」と読みます。ここでは h = 19.6 m です。放した点が原点で、下向きが正の向きなので、地面は y = +19.6 m の所にあります。だから、球が地面に着くのは、y = h になったときです。
位置の式 y = 12gt2 に、y = 19.6 m を入れます。19.6 = 12 × 9.8 × t2 なので、19.6 = 4.9 × t2 です。両辺を 4.9 で割ると、t2 = 19.6 ÷ 4.9 = 4.0 です。2 乗して 4.0 になる数は、2.0 と −2.0 です。時刻は 0 より後なので、正の 2.0 を選びます。t = 2.0 s です。
2 乗して 4.0 になる正の数を、√4.0 と書きます。√ は「ルート」と読みます。√4.0 = 2.0 です。文字で同じ計算をすると、h = 12gt2 の両辺を 2 倍して 2h = gt2、両辺を g で割って t2 = 2h / g です。だから、t = √2h / g です。数値で確かめると、t = √2 × 19.6 ÷ 9.8 = √4.0 = 2.0 s で、上と同じです。この形は覚えなくてもかまいません。y = 12gt2 に y = h を入れれば、いつでも求められます。
地面に着いたあとは、球は止まります。そこで、地面に着く直前の速さを求めます。落ちるまでの時間が分かったので、速度の式 v = gt が使えます。v = 9.8 × 2.0 = 19.6 m/s です。時間を使わない式 v2 = 2gy でも求められます。v2 = 2 × 9.8 × 19.6 = 384.16 です。19.6 × 19.6 = 384.16 なので、2 乗して 384.16 になる正の数は 19.6 です。v = 19.6 m/s で、v = gt と同じ答えになります。時間を先に求めていないときは、v2 = 2gy を使うと、時間を求めずに速さが分かります。
下向きを正の向き、放した点を原点としています。空気の抵抗は考えません。
やってみよう
高さ h が 4.9 m のまま「放す」を押し、落ちるまでの時間を読んでください。次に、高さ h を 44.1 m に変えて、もう一度「放す」を押してください。高さは 9 倍になります。落ちるまでの時間は何倍になりましたか。
1.0 s から 3.0 s で、3倍です。落ちた距離は時間の 2 乗に比例するので、高さが 9 倍でも時間は 3 倍です。
確認
高さを2倍にすると、落ちるまでの時間も2倍になりますか。
いいえ。時間が2倍になるのは、高さが4倍のときです。高さが2倍なら、時間は約 1.4 倍です(19.6 m で 2.0 s、39.2 m で約 2.8 s)。
例題
地面から高さ 4.9 m の所から、球を静かに放しました。地面に着くまでの時間と、地面に着く直前の速さを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とし、空気の抵抗は考えません。
答え: 時間 1.0 s、着く直前の速さ 9.8 m/s
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とし、空気の抵抗は考えません。どの問題も、鉛直下向きを正の向き、物体を放した点を原点、放した時刻を 0 とします。
問1高い所から小石を静かに放しました。放してから 0.50 s 後の速さと、それまでに落ちた距離を求めなさい。
速さ 4.9 m/s、落ちた距離 1.2 m
v0 = 0、a = +9.8 m/s²、t = 0.50 s。速さは v = gt = 9.8 × 0.50 = 4.9 m/s。落ちた距離は y = 12gt2 = 12 × 9.8 × 0.502 = 4.9 × 0.25 = 1.225 m ≒ 1.2 m
問2高い所から小石を静かに放しました。放してから 1.0 s 後から 2.0 s 後までの 1.0 s 間に、小石が落ちる距離を求めなさい。
15 m
1.0 s 後の位置は y = 12 × 9.8 × 1.02 = 4.9 m。2.0 s 後の位置は y = 12 × 9.8 × 2.02 = 19.6 m。この 1.0 s 間に落ちる距離は、後の位置 − 前の位置 = 19.6 − 4.9 = 14.7 m ≒ 15 m。最初の 1.0 s(4.9 m)より長いのは、だんだん速くなっているから
ボタンを押すと、図は時刻 t = 1.0 s(位置 +4.9 m)になります。
そのあと時刻 t を 2.0 s にすると、位置は +19.6 m になります。
問3地面から高さ 78.4 m の所から、ボールを静かに放しました。地面に着くまでの時間と、地面に着く直前の速さを求めなさい。
時間 4.0 s、着く直前の速さ 39 m/s
地面に着くとき y = 78.4 m。y = 12gt2 に入れて 78.4 = 12 × 9.8 × t2 = 4.9 × t2。t2 = 78.4 ÷ 4.9 = 16 なので t = 4.0 s。着く直前の速さは v = gt = 9.8 × 4.0 = 39.2 m/s ≒ 39 m/s(v2 = 2gy でも、v2 = 2 × 9.8 × 78.4 = 1536.64 = 39.22 で同じ)
問4ある高さから小石を静かに放したところ、地面に着くまでに 2.5 s かかりました。放した点は、地面から何 m の高さにありましたか。
31 m
放した点から地面までの距離が、2.5 s で落ちた距離。y = 12gt2 = 12 × 9.8 × 2.52 = 4.9 × 6.25 = 30.625 m ≒ 31 m。時間から高さを求めるので、y = 12gt2 にそのまま t を入れればよい
図の位置 +30.6 m は、2.5 s で落ちた距離です。答えは2桁に丸めて 31 m です。
問5小石を静かに放しました。小石の速さが 14 m/s になるまでに、小石が落ちる距離を求めなさい。
10 m
時間が分かっておらず、聞かれてもいないので、v2 = 2gy を使う。142 = 2 × 9.8 × y なので、196 = 19.6 × y。y = 196 ÷ 19.6 = 10 m
問6地面から高さ 50 m のビルの屋上から、小石を静かに放しました。小石が地面から 10 m の高さを通るときの速さを求めなさい。
28 m/s
地面から 10 m の高さは、放した点から 50 − 10 = 40 m 下なので、y = 40 m(地面からの高さ 10 m を y に入れないこと)。v2 = 2gy = 2 × 9.8 × 40 = 784。28 × 28 = 784 なので、v = 28 m/s
公式
2〜4行目は、空気の抵抗を考えず、静かに放したとき(自由落下)の式です