要点
力の大きさの単位は N(ニュートン)です。
力は矢印で表します。矢印の長さが力の大きさ、矢印の向きが力の向き、矢印の根元が力のはたらく点です。
床に置いた箱を手で押すと、止まっていた箱が動き出します。ばねを手で引くと、ばねが伸びます。このように、物の動きを変えたり、物の形を変えたりするはたらきを力といいます。
箱を押すとき、強く押すか弱く押すかで、はたらきが変わります。この強さのちがいを表すのが、力の大きさです。同じ強さでも、右へ押すか左へ押すかで、はたらきは逆になります。この押す向きを表すのが、力の向きです。だから、力を表すには、大きさだけでなく向きも言う必要があります。
そこで、力を矢印で表します。矢印の長さで、力の大きさを表します。2倍の力なら、2倍の長さの矢印です。矢印の向きで、力の向きを表します。矢印の根元は、力がはたらく点に置きます。この点を作用点といいます。手で箱を押すなら、手が箱に触れている所が作用点です。
力のように、向きと大きさをもつ量をベクトルといいます。力はベクトルです。
力の大きさ・向き・作用点の3つを、力の三要素といいます。作用点を通り、力の向きに引いた直線を作用線といいます。下の図では、作用線を破線で描いています。
力の大きさの単位は N です。「ニュートン」と読みます。目安として、質量 100 g の物(小さなりんごくらい)を手のひらにのせて支える力が、約 1 N です。
下の方眼の図では、1 目盛りを 1 N とします。3 N の力は、3 目盛りの長さの矢印になります。
力は、英語の force の頭文字を使って F と書きます。向きも含めた力を表すときは、F の上に矢印を付けて F と書きます。「エフ・ベクトル」と読みます。矢印を付けない F は、力の大きさだけを表します。右向きに 3 N の力なら、F は「右向きに 3 N」、F は「3 N」です。
手で箱を右へ 3 N の力で押しているところです。
確認
背の高い箱を、同じ大きさ・同じ向きの力で押します。上の端を押しても、下の端を押しても、はたらきは同じですか。
同じとは限りません。上の端を押すと箱が倒れることがあるように、作用点が違うと、はたらきが変わります。
一直線上の2つの力は、右を正の向きとして、符号をつけたまま足すと1つにまとまります。
床の上の箱に2本のひもを付け、あなたと友だちが引きます。あなたは右向きに 3 N、友だちも右向きに 2 N で引きます。この2つの力は、1人で右向きに 5 N で引くのと同じはたらきをします。
いくつかの力と同じはたらきをする1つの力を、もとの力の合力といいます。合力を求めることを、力の合成といいます。右向きに 3 N と 2 N の2つの力の合力は、右向きに 5 N です。
友だちが反対の左向きに引くこともあります。そのときに向きを区別するため、約束を決めます。このページでは、一直線上の力は、右を正の向きとします。右向きの力には +、左向きの力には − を付けます。たとえば −2 N は、「左向きに 2 N の力」という意味です。マイナスは「力が小さい」という意味ではありません。
あなたの力を F1、友だちの力を F2(小さい数字は区別の番号)と書きます。一直線上の力は、+ と − で向きを表せます。だから、矢印を付けずに、F1 = +3 N のように符号つきで書きます。符号が向き、符号を取った数が大きさです。
あなたが F1 = +3 N、友だちが F2 = +2 N で引くとき、合力は (+3) + (+2) = +5 N です。+5 N は「右向きに 5 N」です。
今度は、友だちが左向きに 2 N で引きます。F2 = −2 N です。あなたの右向きの 3 N のうち、2 N 分は、友だちの左向きの 2 N で打ち消されます。残るのは、右向きの 1 N です。符号をつけたまま足すと、(+3) + (−2) = +1 N です。足し算の答えも、右向きに 1 N になります。
どちらの場合も、符号をつけたまま足せば、合力が求まります。
あなたが右向きに 3 N、友だちが左向きに 3 N で引くと、(+3) + (−3) = 0 N です。このとき、合力は 0 です。2つの力をまとめると、力がはたらいていないのと同じになります。
下の段の矢印は、長さが力の大きさ、向きが力の向きです。3本は見やすいように上下にずらして描いていますが、根元はどれも箱です。F1 と F2 が箱にはたらく力で、合力 F はその2つをまとめた1つの力です。右を正の向きとしています。
やってみよう
あなたの力 F1 を +4 N にしてください。友だちの力 F2 を、まず +2 N にしてください。次に −2 N に変えてください。合力の大きさと向きは、どう変わりましたか。
合力は +6 N(右向きに 6 N)から +2 N(右向きに 2 N)に変わりました。
確認
逆向きの2つの力の合力は、大きいほうの力の向きを向きますか。
向きます。小さいほうの力の分だけ打ち消されて、大きいほうの力の向きの力が残るからです。
例題
箱に2本のひもを付けて、一直線上で引きます。1本は右向きに 5 N、もう1本は左向きに 2 N です。合力の向きと大きさを求めなさい。
答え: 右向きに 3 N
一直線上にない2つの力の合力は、2つの矢印の根元をそろえたとき、その2つの矢印を2辺とする平行四辺形の対角線です。
床の上の箱に2本のひもを付け、上から見ます。あなたは右向きに 4.0 N で引きます。友だちは、図の上向き(上から見ているので、奥へ向かう向き)に 3.0 N で引きます。2本のひもは、直角になっています。
2つの力は向きがそろっていないので、一直線上にありません。だから、4.0 + 3.0 = 7.0 N とも、4.0 − 3.0 = 1.0 N ともまとめられません。箱は、右と上の間の、斜めの向きに引かれます。この斜めの力を、作図で求めます。
向きのちがう力なので、矢印を付けて書きます。あなたの力を F1、友だちの力を F2、2つの合力を F と書きます。F1 は「エフ・ワン・ベクトル」と読みます。矢印のない F1、F2、F は、それぞれの力の大きさと、合力の大きさです。項目2 のような + や − は付けません。
合力は、次の3つの手順で求めます。
平行四辺形は、向かい合う辺が平行で、長さが同じ四角形です。方眼の上で 1 目盛りを 1.0 N とすると、F1 は右へ 4 目盛り、F2 は上へ 3 目盛りの矢印です。F1 の先から、F2 と同じく上へ 3 目盛りの線を引きます。F2 の先から、F1 と同じく右へ 4 目盛りの線を引きます。2本の線が交わる点が、向かい側の角です。根元から右へ 4 目盛り、上へ 3 目盛りの点です。
力が斜めの矢印でも、かき方は同じです。たとえば2つ目の力が右へ 1 目盛り・上へ 2 目盛りの矢印なら、1つ目の力の矢印の先から、右へ 1 目盛り・上へ 2 目盛り進んだ点が、向かい側の角です。
この場面では2本のひもが直角なので、平行四辺形は長方形になります。合力の矢印は、横 4 目盛り・縦 3 目盛りの長方形の対角線です。対角線の長さは、三平方の定理で √42 + 32 = √25 = 5 目盛りです。1 目盛りが 1.0 N なので、合力の大きさは 5.0 N です。式で書くと、次のようになります。
数値を入れると、F = √4.02 + 3.02 = √25 = 5.0 N です。
平行四辺形で2つの力をまとめることを、次の式で表します。
項目2の F = F1 + F2 は、2つの矢印が一直線に並ぶときの、この式の特別な場合です。
箱を上から見た図で、図の上向きは奥へ向かう向きです。藍の矢印は力で、太い矢印が合力です。破線は平行四辺形の残りの2辺です。
0° と 180° は、重なって見えないので、矢印を下へずらしています。根元はどれも箱の点です。
やってみよう
友だちの引く向きを 60° にしてください。次に 120° にしてください。合力の大きさは、それぞれいくつですか。
60° で 6.1 N、120° で 3.6 N です。2本のひもの間の角が開くほど、合力の大きさは小さくなります。
確認
2つの力の合力の大きさは、いつも2つの力の大きさの和(4.0 + 3.0 = 7.0 N)になりますか。
なりません。和になるのは、2つの力が同じ向きのときだけです。
例題
箱に2本のひもを付けて、互いに直角な向きに引きます。1本の力の大きさは 6.0 N、もう1本は 8.0 N です。合力の大きさを求めなさい。
答え: 10 N
1つの力は、それを対角線とする平行四辺形の2辺に分けられます。分けた2つの力を分力といいます。
雪の上のそりを、あなたがひもで引きます。横から見た図で考えます。ひもは、前(右)に向かって、斜め上へ張っています。ひもがそりを引く力の大きさは 5.0 N です。
斜めに引く力には、2つのはたらきがあります。1つは、そりを前へ進めるはたらきです。もう1つは、そりを上へ引き上げようとするはたらきです。この2つを別々に考えると、分かりやすくなります。
1つの力を、同じはたらきをする2つの力に分けることを、力の分解といいます。分けてできた2つの力を、もとの力の分力といいます。分解は、項目3の合成の逆です。合成は2つの力を1つにまとめ、分解は1つの力を2つに分けます。
分力は、次の3つの手順で求めます。
合成のときと同じ平行四辺形ですが、今度は、対角線(もとの力)が先に分かっていて、2辺を求めます。
方眼の 1 目盛りを 1.0 N とします。ひもの力が、根元から右へ 4 目盛り・上へ 3 目盛りの点まで伸びる矢印だとします。この矢印の長さは、三平方の定理で √42 + 32 = 5 目盛り、つまり 5.0 N です。この力を、横(前へ進める向き)と縦(上へ引き上げる向き)に分けます。横と縦は直角なので、平行四辺形は長方形になります。長方形の横の辺は 4 目盛り、縦の辺は 3 目盛りです。だから、横向きの分力は 4.0 N、縦向きの分力は 3.0 N です。方眼の上で横と縦に分けるときは、目盛りを数えるだけで分力が読めます。
横向きの 4.0 N と縦向きの 3.0 N を、項目3の方法で合成してみます。2つは直角なので、合力の大きさは √4.02 + 3.02 = 5.0 N です。向きも、もとのひもの向きになります。分力を合成すると、もとの力に戻ります。分力は、2つ合わせて、もとの力と同じはたらきをするからです。
藍の実線がひもの力、点線が分力です。破線は、ひもの力を対角線とする長方形の残りの2辺です。このページでは、ひもの力だけを描いています。
やってみよう
ひもの向きの「右へ 5」のボタンを押してください。そこから「右へ 4・上へ 3」「右へ 3・上へ 4」「上へ 5」のボタンを順に押して、ひもを立てていきます。そりを前へ進める横向きの分力は、どう変わりましたか。
横向きの分力は 5.0 N → 4.0 N → 3.0 N → 0.0 N と小さくなりました。縦向きの分力は 0.0 N → 3.0 N → 4.0 N → 5.0 N と大きくなりました。ひもの力は同じ 5.0 N でも、ひもを立てるほど、そりを前へ進めるはたらきは小さくなります。真上に引くと、前へ進めるはたらきはなくなります。
分ける2つの向きは、横と縦でなくてもかまいません。直角でない2つの向きに分けるときも、手順は上の①〜③と同じです。下の図は、右へ 6 目盛り・上へ 3 目盛りの矢印で表される力を、「横向き」と「右へ 4 目盛り・上へ 3 目盛りの斜めの向き」に分けたものです(1 目盛り = 1.0 N)。①で根元から2つの向きに破線を引き、②でもとの矢印の先から、それぞれの破線と平行な線を引くと、平行四辺形ができます。③で根元から出る2辺を読むと、横向きの分力は 2 目盛りで 2.0 N、斜めの向きの分力は √42 + 32 = 5 目盛りで 5.0 N です。
分ける2つの向きが直角でないので、平行四辺形は長方形になりません。もとの力が対角線、根元から出る2辺が分力なのは、横と縦に分けるときと同じです。
確認
2つの分力の大きさを足すと、もとの力の大きさと等しくなりますか。
等しくなりません。「右へ 4・上へ 3」では 4.0 + 3.0 = 7.0 N で、もとの力の 5.0 N とちがいます。
例題
方眼の上で、力 F を、根元から右へ 4 目盛り・上へ 3 目盛りの点まで伸びる矢印で表します。1 目盛りは 2.0 N です。この力を、横向きと縦向きの2つの分力に分けなさい。また、もとの力 F の大きさを求めなさい。
答え: 横向きの分力 8.0 N、縦向きの分力 6.0 N、もとの力 10 N
力の大きさの単位は N です。方眼の問題は、問題ごとに 1 目盛りが何 N かを書いています。
どの問題も、一直線上の力で、右を正の向きとします。
問1箱に2本のひもを付けて、一直線上で引きます。次の2つの場合について、合力の向きと大きさを求めなさい。
(1) 右向きに 1 N と、右向きに 4 N
(2) 右向きに 2 N と、左向きに 5 N
(1) 右向きに 5 N (2) 左向きに 3 N
(1) F = (+1) + (+4) = +5 N。符号が + なので右向き。(2) F = (+2) + (−5) = −3 N。符号が − なので左向き
問2箱に3本のひもを付けて、一直線上で引きます。右向きに 2 N、左向きに 4 N、右向きに 3 N です。合力の向きと大きさを求めなさい。
右向きに 1 N
3つの力も、符号をつけたまま全部足せばよい。F = (+2) + (−4) + (+3) = +1 N。符号が + なので右向き。先に右向きの2つをまとめて (+2) + (+3) = +5 N とし、次に (+5) + (−4) = +1 N としても、同じ答えになる
問3箱に2本のひもを付けて、互いに直角な向きに引きます。1本の力の大きさは 9.0 N、もう1本は 12 N です。合力の大きさを求めなさい。
15 N
2つの力は直角なので、平行四辺形は長方形で、合力はその対角線。F = √9.02 + 122 = √81 + 144 = √225 = 15 N
問4方眼(1 目盛り = 2.0 N)の上の点 O に、2つの力がはたらいています。F1 は右へ 2 目盛り・上へ 1 目盛りの矢印、F2 は右へ 1 目盛り・上へ 3 目盛りの矢印です。合力 F を作図し、その大きさを求めなさい。
合力は、O から右へ 3 目盛り・上へ 4 目盛りの矢印。大きさは 10 N
F1 の先(右へ 2・上へ 1 の点)から、F2 と同じく右へ 1・上へ 3 進むと、右へ 3・上へ 4 の点に着く。F2 の先から F1 と同じく右へ 2・上へ 1 進んでも、同じ点に着く。ここが平行四辺形の向かい側の角なので、合力は O から右へ 3 目盛り・上へ 4 目盛りの矢印。長さは三平方の定理で √32 + 42 = 5 目盛り。大きさは 5 × 2.0 = 10 N
問5方眼(1 目盛り = 1.0 N)の上の点 O に、右へ 6 目盛り・上へ 8 目盛りの矢印で表される力 F がはたらいています。この力を、横向きと縦向きの2つの分力に分けなさい。また、もとの力 F の大きさを求めなさい。
横向きの分力 6.0 N、縦向きの分力 8.0 N、もとの力 10 N
F が対角線になる長方形をかくと、横の辺は 6 目盛り、縦の辺は 8 目盛り。横向きの分力は 6 × 1.0 = 6.0 N、縦向きの分力は 8 × 1.0 = 8.0 N。F の長さは √62 + 82 = √100 = 10 目盛りなので、大きさは 10 N
問6方眼(1 目盛り = 1.0 N)の上の点 O に、右へ 7 目盛り・上へ 4 目盛りの矢印で表される力 F がはたらいています。この力を、「横向き」と「斜めの向き(右へ 3 目盛り・上へ 4 目盛りの向き。図の斜めの破線)」の2つの向きに分けなさい。それぞれの分力の大きさを求めなさい。
横向きの分力 4.0 N、斜めの向きの分力 5.0 N
分ける向きが直角でなくても、手順は同じ(項目4の、直角でない2つの向きに分けた図と同じかき方)。F の先(右へ 7・上へ 4 の点)から、横向きの破線と平行に左へ線を引くと、斜めの破線と、右へ 3・上へ 4 の点で交わる。F の先から、斜めの破線と平行に線を引くと、横向きの破線と、右へ 4 の点で交わる。これで F を対角線とする平行四辺形ができる。根元 O から出る2辺のうち、横向きの辺は 4 目盛りなので 4.0 N。斜めの向きの辺は右へ 3・上へ 4 なので、長さは √32 + 42 = 5 目盛りで 5.0 N。2つの向きは直角ではないので、平行四辺形は長方形にならない
要点
力の大きさの単位は N(ニュートン)です。
物理基礎 第2章 力と運動の法則