要点
空気の中を動く物体は、空気から、速度と逆向きの力を受けます。この力は、速く動くほど大きくなります。
自転車で速く走ると、顔に当たる風を強く感じます。空気が、あなたの体を、進む向きと逆向きに押しているからです。ゆっくり走るときは、風はほとんど感じません。
空気の中を動く物体は、空気から、速度と逆向きの力を受けます。この力を空気抵抗といいます。落ちている球なら、速度は下向きなので、空気抵抗は上向きです。落ちるのをじゃまする向きです。このページでは、風はないものとします。
空気抵抗は、物体が速く動くほど大きくなります。風のない所で止まっている物体は、空気抵抗を受けません。動摩擦力は、すべる速さによらず一定です。空気抵抗は、速さによって大きさが変わる点が違います。
このページでは、空気抵抗の大きさは速さに比例するとします。空気抵抗の大きさを f、物体の速さを v とすると、次の式で表せます。
f は摩擦力の大きさにも使う記号ですが、このページの f は、空気抵抗の大きさです。速さが大きい物体では、空気抵抗が速さの2乗に比例するとみたほうがよい場合もあります。このページでは扱いません。
k(ケー)は、ばね定数の k とは別の数で、単位も違います。k は、速さ 1 m/s あたりの空気抵抗の大きさです。たとえば k = 0.20 N/(m/s) の球なら、速さ 1.0 m/s で f = 0.20 × 1.0 = 0.20 N、速さ 2.0 m/s で f = 0.20 × 2.0 = 0.40 N です。速さが2倍になると、空気抵抗も2倍になります。
単位は N/(m/s) です。kg/s と書くこともあります。k は、物体の形や大きさと、まわりの空気で決まる数です。
k = 0.20 N/(m/s) の球です。重力の矢印の長さは、2つの場面で同じです。紫の矢印は速度です。単位が違うので、紫の矢印と力の矢印の長さは比べられません。
確認
床の上を右へ転がっているボールが受ける空気抵抗は、右向きですか、左向きですか。
左向きです。空気抵抗は、速度(右向き)と逆向きにはたらくからです。
例題
k = 0.15 N/(m/s) の小さな球が、速さ 4.0 m/s で落ちています。球が受ける空気抵抗の向きと大きさを求めなさい。空気抵抗は速さに比例するとします。
答え: 上向きに 0.60 N
空気抵抗を受けて落ちる物体は、速くなるほど空気抵抗が大きくなるので、加速度がだんだん小さくなります。
質量 m の小さな球を、高い所から静かに放します。
次の ①〜④ の手順で、運動方程式を立てます。
静かに放した直後は、速さ v = 0 です。だから空気抵抗は kv = 0 です。運動方程式は ma = mg となり、a = g です。放した直後の加速度は、空気抵抗を考えないときの落下(自由落下)と同じ 9.8 m/s² です。
球が速くなると、kv が大きくなり、右辺の mg − kv は小さくなります。だから、加速度 a はだんだん小さくなります。加速度が一定ではないので、この運動は等加速度直線運動ではありません。
質量 0.50 kg、k = 0.98 N/(m/s) の球で確かめます。重力は mg = 0.50 × 9.8 = 4.9 N です。速さ v が 0、2.0、4.0 m/s のときの空気抵抗、合力、加速度は、次の表のようになります。
| 速さ v [m/s] | 0 | 2.0 | 4.0 |
|---|---|---|---|
| 空気抵抗 kv [N] | 0 | 1.96 | 3.92 |
| 合力 mg − kv [N] | 4.90 | 2.94 | 0.98 |
| 加速度 a [m/s²] | 9.80 | 5.88 | 1.96 |
たとえば v = 2.0 m/s のとき、kv = 0.98 × 2.0 = 1.96 N、合力は 4.90 − 1.96 = 2.94 N です。運動方程式 0.50 × a = 2.94 から、a = 2.94 ÷ 0.50 = 5.88 m/s² です。速さが大きいほど、加速度は小さくなっています。
球の質量は 0.50 kg、k = 0.98 N/(m/s) です。下向きを正の向きにしています。橙の矢印は加速度で、力ではありません。
やってみよう
今の速さ v を 1.0 m/s にしてください。次に、v を 3.0 m/s に変えてください。空気抵抗 kv と加速度 a は、それぞれいくつからいくつになりましたか。
空気抵抗は 0.98 N から 2.94 N に大きくなり、加速度は 7.84 m/s² から 3.92 m/s² に小さくなりました。
確認
落ちている球が速くなっていくとき、加速度は大きくなりますか、小さくなりますか、変わりませんか。
小さくなります。速くなるほど空気抵抗 kv が大きくなり、合力 mg − kv が小さくなるからです。
例題
質量 0.20 kg、k = 0.49 N/(m/s) の小さな球が、速さ 2.0 m/s で落ちています。このときの球の加速度の大きさを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: 4.9 m/s²(下向き)
空気抵抗を受けて落ちる物体は、やがて空気抵抗と重力が同じ大きさになり、一定の速さで落ちるようになります。この速さを終端速度といいます。
項目2で、速くなるほど加速度 a は小さくなることを見ました(0.50 kg の球で、v = 2.0 m/s のとき a = 5.88 m/s²)。a が小さくなっても、a が正の間は、球は下向きに速くなり続けます。速くなる勢いが弱まるだけです。
速くなり続けると、空気抵抗 kv は重力 mg に近づいていきます。kv = mg になると、運動方程式の右辺は mg − kv = 0 で、a = 0 です。合力が 0 の物体は、等速直線運動を続けます(慣性の法則)。だから球は、それ以後、一定の速さで落ちます。このときの一定の速さを終端速度といいます。
終端速度は、記号 vf で表します。f は final(終わり)の頭文字で、ほかの速さと区別するための名前です。空気抵抗の大きさ f とは関係ありません。終端速度のとき kvf = mg なので、両辺を k で割って、次の式になります。
項目2の球(0.50 kg、k = 0.98 N/(m/s))なら、vf = 0.50 × 9.8 ÷ 0.98 = 4.9 ÷ 0.98 = 5.0 m/s です。速さが 5.0 m/s のとき、空気抵抗は 0.98 × 5.0 = 4.9 N で、重力 4.9 N と同じ大きさになります。
質量 1.0 kg、k = 0.49 N/(m/s) の球を静かに放したときの速さは、次の表のようになります。このページの式だけでは計算できないので、計算した結果だけを使います。この球の終端速度は、vf = 1.0 × 9.8 ÷ 0.49 = 20 m/s です。
| 時刻 t [s] | 0 | 2.0 | 4.0 | 6.0 | 8.0 |
|---|---|---|---|---|---|
| 速さ v [m/s] | 0 | 12.5 | 17.2 | 18.9 | 19.6 |
2.0 s ごとの速さの増え方は、12.5、4.7、1.7、0.7 m/s と、だんだん小さくなっています。
この表を、v-t グラフに点として打ちます。横軸が時刻 t、縦軸が速さ v です。たとえば点(2.0 s, 12.5 m/s)は、「放してから 2.0 s 後に、下向きに速さ 12.5 m/s で落ちている」という意味です。点を、なめらかな曲線で結びます。
v-t グラフの傾きは、加速度を表します。放した直後は a = g なので、曲線は、自由落下の直線 v = 9.8t と同じ傾きで出発します。加速度がだんだん小さくなるので、曲線の傾きもだんだん小さくなります。曲線は、v = 20 m/s の高さの水平な線(終端速度の線)に、どんどん近づいていきます。8.0 s ではまだ 19.6 m/s ですが、ほとんど終端速度で落ちています。
質量 1.0 kg、k = 0.49 N/(m/s) の球です。下向きを正の向きにしています。
下向きを正の向きにしています。点線は、空気抵抗がないとき(自由落下)の v-t グラフです。球の枠は、球といっしょに下りながら見た様子です。横線が上へ流れる速さが、球の速さを表します。重力は地球が球を引く力、空気抵抗は空気が球に加える力です。
やってみよう
比例定数 k の「0.98 N/(m/s)」と、質量 m の「0.25 kg」のボタンを押して、「落とす」を押し、終端速度 vf を読んでください。次に、「1.0 kg」のボタンを押して、もう一度「落とす」を押してください。質量を4倍にすると、終端速度は何倍になりましたか。
vf は 2.5 m/s から 10.0 m/s になり、4倍になりました。k が同じなら、終端速度は質量に比例します。
確認
質量は同じままで、空気抵抗の比例定数 k が2倍の球にすると、終端速度は何倍になりますか。
1/2 倍です。vf = mg ÷ k なので、k が2倍になると vf は半分になります。
例題
質量 0.30 kg、k = 0.49 N/(m/s) の小さな球を、高い所から静かに放しました。この球の終端速度を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: 6.0 m/s
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。どの問題も、空気抵抗は速さに比例する(f = kv)とし、鉛直下向きを正の向きとします。
問1質量 0.50 kg、k = 0.98 N/(m/s) の小さな球が、速さ 1.5 m/s で落ちています。このときの球の加速度の大きさを求めなさい。
6.9 m/s²
重力は mg = 0.50 × 9.8 = 4.9 N、空気抵抗は kv = 0.98 × 1.5 = 1.47 N。運動方程式 ma = mg − kv から、0.50 × a = 4.9 − 1.47 = 3.43。a = 3.43 ÷ 0.50 = 6.86 ≒ 6.9 m/s²(2 桁に丸めて)
問2質量 0.30 kg、k = 0.98 N/(m/s) の小さな球を、高い所から静かに放しました。球の加速度の大きさが、重力加速度の大きさの半分(4.9 m/s²)になるのは、球の速さがいくつのときですか。
1.5 m/s
重力は mg = 0.30 × 9.8 = 2.94 N。a = 4.9 m/s² のとき、運動方程式 ma = mg − kv は 0.30 × 4.9 = 2.94 − 0.98 × v。1.47 = 2.94 − 0.98v から、0.98v = 2.94 − 1.47 = 1.47。v = 1.47 ÷ 0.98 = 1.5 m/s
問3質量 0.50 kg、k = 0.49 N/(m/s) の小さな球を、高い所から静かに放しました。この球の終端速度を求めなさい。
10 m/s
終端速度のとき a = 0 なので、kvf = mg。0.49 × vf = 0.50 × 9.8 = 4.9。vf = 4.9 ÷ 0.49 = 10 m/s
「図で確かめる」を押したら、図の「落とす」を押してください。
問4質量 0.40 kg の小さな球を、高い所から静かに放したところ、やがて 4.0 m/s の一定の速さで落ちるようになりました。空気抵抗の比例定数 k を求めなさい。
0.98 N/(m/s)
一定の速さ 4.0 m/s が終端速度なので、このとき a = 0 で、kvf = mg。k × 4.0 = 0.40 × 9.8 = 3.92。k = 3.92 ÷ 4.0 = 0.98 N/(m/s)
問5ある小さな球を、高い所から静かに放したときの v-t グラフが、下の図の実線です。点線は、空気抵抗がないとき(自由落下)の v-t グラフ v = 9.8t です。
(1) この球の終端速度を、グラフから読み取りなさい。
(2) 放した直後の、この球の加速度の大きさを求めなさい。
(1) 5.0 m/s (2) 9.8 m/s²
(1) 速さは 5 m/s の方眼の線に近づき、それより大きくならないので、終端速度は 5.0 m/s。(2) 放した直後は v = 0 で、空気抵抗 kv が 0 なので、ma = mg から a = g = 9.8 m/s²。グラフでも、実線は点線(傾き 9.8 m/s²)と同じ傾きで出発している
このグラフは、質量 0.25 kg、k = 0.49 N/(m/s) の球のものです。「図で確かめる」を押したら、図の「落とす」を押してください。
問6同じ大きさ・同じ形で、材料の違う小さな球 A と B を、高い所から静かに放しました。下の図は、A と B の v-t グラフです。2つの球の空気抵抗の比例定数 k は同じとします。
(1) A と B のどちらが重いですか。理由も答えなさい。
(2) A の質量は、B の質量の何倍ですか。
(1) A。終端速度が大きいほうが重いから (2) 2.0 倍
(1) 終端速度は vf = mg ÷ k で、k が同じなら質量 m に比例する。グラフから、A の終端速度は 15 m/s、B は 7.5 m/s で、A のほうが大きいので、A のほうが重い。(2) 終端速度が 15 ÷ 7.5 = 2.0 倍なので、質量も 2.0 倍
要点
物理基礎 第2章 力と運動の法則