要点
物体にはたらく力の合力が 0 なら、止まっている物体は止まり続け、動いている物体は同じ速さでまっすぐ進み続けます。
床の上の箱を、あなたが手で押してから、手を離します。箱はしばらく床の上をすべりますが、だんだん遅くなって、やがて止まります。
箱が止まるのは、床が箱に摩擦力を加えるからです。摩擦力は、面に沿って、すべる向きと逆向きにはたらきます。箱の動きを妨げる向きです。
摩擦がない床(なめらかな床)なら、手を離した後の箱には、動きを妨げる力がはたらきません。箱にはたらく力は、地球が箱を引く力(重力)と、床が箱を押す力(垂直抗力)だけです。箱は上下には動かないので、この2つはつり合っていて、合力は 0 です。このとき箱は、手を離したときの速さのまま、まっすぐすべり続けます。同じ速さでまっすぐ進む運動を、等速直線運動といいます。
物体にはたらく力の合力が 0 なら、止まっている物体は止まり続け、動いている物体は等速直線運動を続けます。これを慣性の法則といいます。物体が、今の運動の様子(止まっている、または同じ速さでまっすぐ進む)を続けようとする性質を慣性といいます。
反対に、合力が 0 でない物体は、速さか向きが変わります(次の項目で調べます)。だから、ずっと止まっている物体にはたらく力の合力は 0 です。等速直線運動を続けている物体にはたらく力も、合力は 0 で、つり合っています。
点は、手を離してから 1 秒ごとの箱の位置です。摩擦力の矢印の長さは、大きさを表しません。
やってみよう
「あらい床」のボタンが押された状態で、「押して放す」を押してください。箱が止まったときの、手を離してからの時間 t を読んでください。次に、「なめらかな床」のボタンを押して、もう一度「押して放す」を押してください。4.0 s 後の速さ v はいくつですか。
あらい床では、手を離してから 2.0 s で止まりました。なめらかな床では、4.0 s 後も 1.0 m/s のままでした。
確認
等速直線運動をしている物体にはたらく力の合力は、いくつですか。
0 です。合力が 0 でなければ、物体の速さか向きが変わってしまうからです。
物体の加速度は、物体にはたらく力に比例し、物体の質量に反比例します。
力がはたらいて速さが変わるとき、物体には加速度があります。加速度は、1 秒あたりの速度の変化です(単位 m/s²)。力と加速度の関係を、なめらかな床の上の台車で調べます。
なめらかな床の上の台車に、水平なひもを付けます。あなたがひもを引いて、ひもが台車を一定の力で引くようにします。台車にはたらく重力と垂直抗力は、上下につり合っています。水平の向きにはたらく力は、ひもが台車を引く力だけです。
質量 1.0 kg の台車を引く力を変えて、加速度を調べると、次のようになります。
| ひもが台車を引く力 [N] | 1.0 | 2.0 | 3.0 |
|---|---|---|---|
| 加速度 [m/s²] | 1.0 | 2.0 | 3.0 |
力を2倍・3倍にすると、加速度も2倍・3倍になります。加速度は力に比例します。
引く力を 2.0 N に決めて、台車の質量を変えると、次のようになります。
| 台車の質量 [kg] | 1.0 | 2.0 |
|---|---|---|
| 加速度 [m/s²] | 2.0 | 1.0 |
質量を2倍にすると、加速度は 1/2 倍になります。加速度は質量に反比例します。質量が大きい物体ほど、同じ力で引いても加速しにくくなります。質量は、物体の慣性の大きさを表しています。
藍の矢印がひもが台車を引く力、橙の矢印が台車の加速度です。この図では、台車の水平の向きの力だけを描いています(重力と垂直抗力はつり合っています)。
やってみよう
台車の質量 m を 4.0 kg にし、引く力 F を 2.0 N にしてください。次に、F を 8.0 N に変えてください。加速度 a は、いくつからいくつになり、何倍になりましたか。
a は 0.50 m/s² から 2.00 m/s² になり、4倍になりました。
確認
同じ力で引くとき、質量が2倍の台車の加速度は何倍ですか。
1/2 倍です。加速度は質量に反比例するからです。
質量 m の物体に、合力 F がはたらくと、加速度 a は ma = F を満たします。この式を運動方程式といいます。
項目2で、加速度は力に比例し、質量に反比例することが分かりました。これを1つの式で書くと、a = F ÷ m です(比例の定数が 1 になるように、力の単位 N が決めてあります。この項目の後半で説明します)。両辺に m を掛けて、次の形にします。
この式を運動方程式といいます。項目2の表の 1.0 kg・3.0 N なら、1.0 × a = 3.0 から a = 3.0 m/s² で、表の値と同じです。
運動方程式の F は、1つの力ではなく、物体にはたらく力の合力です。加速度の向きは、合力の向きと同じです。
運動方程式がそのまま成り立つように、力の単位 N は決められています。質量 1 kg の物体に、1 m/s² の加速度を生じさせる力の大きさが 1 N です。
静かに放して落ちる物体(自由落下する物体)には、重力だけがはたらきます(空気の抵抗は考えません)。自由落下の加速度は、どの物体でも同じで、g = 9.8 m/s² です。この g を重力加速度の大きさといいます。運動方程式 ma = F に、a = g と、合力 F = 重力の大きさ を入れると、m × g =(重力の大きさ)です。だから、質量 m の物体にはたらく重力の大きさは mg です。
確認
なめらかな床の上の台車が左へ動いています。台車にはたらく力の合力は、右向きです。台車の加速度は、右向きと左向きのどちらですか。
右向きです。加速度の向きは、合力の向きと同じだからです。
例題
なめらかな水平な床の上に、質量 2.0 kg の台車があります。台車に、水平に 6.0 N の力を加えました。台車の加速度の大きさを求めなさい。
答え: 3.0 m/s²(力を加えた向き)
運動方程式は、物体を1つ決め、はたらく力をすべて描き、正の向きを決めてから、ma =(正の向きの力の合計)−(負の向きの力の合計)の形で立てます。
運動方程式は、次の4つの手順で立てます。
右辺は、正の向きを決めたときの合力です。
正の向きは、物理で決まっているのではなく、問題を解く人が自分で決める約束です。加速度の向き(止まっていた物体なら、動き出す向き)を正にすると、a が正の数で出ます。動いている向きなど、ほかの向きを正にしてもかまいません。そのとき a が負の数で出たら、加速度は正と逆の向きです。
質量 1.0 kg のおもりに糸を付け、あなたが糸を上へ引きます。① 考える物体は、おもりです。② おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(重力。下向きに mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N)と、糸がおもりを引く力(張力。上向きに T)の2つです。③ 上向きを正とします。
張力が T = 11.8 N のとき、④ の式は 1.0 × a = 11.8 − 9.8 です。a = 2.0 m/s² です。正の数なので、加速度は上向きです。
張力が T = 9.8 N のとき、1.0 × a = 9.8 − 9.8 = 0 で、a = 0 です。加速度が 0 なので、おもりは止まっているか、等速直線運動をしています。項目1の慣性の法則と同じです。
おもりにはたらく力だけを描いています。上向きを正の向きにしています。おもりが上へ動いているか下へ動いているかは、この図では決めていません。
やってみよう
糸の張力 T を 7.8 N にしてください。次に、T を 13.8 N に変えてください。加速度の向きと大きさは、どう変わりましたか。
加速度は、下向きに 2.0 m/s²(−2.0 m/s²)から、上向きに 4.0 m/s²(+4.0 m/s²)になりました。
確認
糸でつるしたおもりの運動方程式を、下向きを正の向きとして立てたところ、a = −3.0 m/s² と出ました。おもりの加速度は、上向きと下向きのどちらですか。
上向きです。a が負なので、加速度は正の向き(下向き)と逆向きです。
例題
質量 2.0 kg のおもりに糸を付け、糸が上向きに 25.6 N の力でおもりを引いて、おもりをつり上げます。おもりの加速度の向きと大きさを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: 上向きに 3.0 m/s²
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。空気の抵抗は考えません。
問1なめらかな水平な床の上に、質量 4.0 kg の台車があります。台車に付けたひもを、水平に 6.0 N の力で引きました。台車の加速度の大きさを求めなさい。
1.5 m/s²
重力と垂直抗力はつり合っているので、合力はひもが台車を引く力 6.0 N。運動方程式 ma = F から、4.0 × a = 6.0。a = 6.0 ÷ 4.0 = 1.5 m/s²
問2なめらかな水平な床の上にある、質量 2.5 kg の台車を、水平に引いて 1.2 m/s² の加速度で動かします。台車を引く力の大きさを求めなさい。
3.0 N
合力は台車を引く力 F だけ。運動方程式 ma = F に、m = 2.5 kg、a = 1.2 m/s² を入れて、F = 2.5 × 1.2 = 3.0 N
問3質量 1.0 kg のおもりに糸を付け、糸が上向きに 15.8 N の力でおもりを引いています。おもりの加速度の向きと大きさを求めなさい。
上向きに 6.0 m/s²
おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(下向きに mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N)と、糸がおもりを引く力(上向きに 15.8 N)。上向きを正として、運動方程式は 1.0 × a = 15.8 − 9.8 = 6.0。a = 6.0 m/s² で、正の数なので上向き
問4質量 2.0 kg のおもりを糸でつるし、下向きに 1.8 m/s² の加速度で下ろしています。このときの糸の張力の大きさを求めなさい。
約 16 N
おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(下向きに mg = 2.0 × 9.8 = 19.6 N)と、糸がおもりを引く力(上向きに T)。加速度の向きの下向きを正とすると、運動方程式は 2.0 × 1.8 = 19.6 − T。3.6 = 19.6 − T から、T = 19.6 − 3.6 = 16.0 ≒ 16 N(2 桁に丸めて)。T は mg = 19.6 N より小さい
このパターンでは、等加速度直線運動(加速度が一定で、まっすぐ進む運動)の式 v = v0 + at と v2 − v02 = 2ax を使います。v0(ブイ・ゼロ)は初めの速度、v は t 秒後の速度、x はその間の変位です。
問5なめらかな水平な床の上に、質量 2.0 kg の台車が止まっています。台車に、水平に 4.0 N の力を加え続けました。力を加え始めてから 3.0 s 後の、台車の速さを求めなさい。
6.0 m/s
運動方程式 ma = F から、2.0 × a = 4.0、a = 2.0 m/s²。止まっていたので v0 = 0。v = v0 + at = 0 + 2.0 × 3.0 = 6.0 m/s
問6なめらかな水平な床の上を、質量 2.0 kg の台車が右向きに 3.0 m/s で進んでいます。台車に、左向きに 1.5 N の力を加え続けて止めました。力を加え始めてから止まるまでに、台車は何 m 進みましたか。
6.0 m
右向きを正とする。合力は左向きの 1.5 N なので、運動方程式は 2.0 × a = −1.5、a = −0.75 m/s²(加速度は左向き)。v0 = +3.0 m/s、止まるので v = 0。v2 − v02 = 2ax から、02 − 3.02 = 2 × (−0.75) × x。−9.0 = −1.5x で、x = 6.0 m
要点
物理基礎 第2章 力と運動の法則