ゼロからの高校物理 / 物理基礎 / 力と運動の法則

運動の法則

要点

慣性の法則合力が 0 なら、止まっている物体は止まり続け、動いている物体は等速直線運動を続ける
運動方程式ma = FF は物体にはたらく力の合力です。
力の単位1 N = 1 kg·m/s²
重力重力の大きさ = mg自由落下の運動方程式 m × g =(重力の大きさ)から。

1慣性の法則

物体にはたらく力の合力が 0 なら、止まっている物体は止まり続け、動いている物体は同じ速さでまっすぐ進み続けます。

床の上の箱を、あなたが手で押してから、手を離します。箱はしばらく床の上をすべりますが、だんだん遅くなって、やがて止まります。

箱が止まるのは、床が箱に摩擦力を加えるからです。摩擦力は、面に沿って、すべる向きと逆向きにはたらきます。箱の動きを妨げる向きです。

摩擦がない床(なめらかな床)なら、手を離した後の箱には、動きを妨げる力がはたらきません。箱にはたらく力は、地球が箱を引く力(重力)と、床が箱を押す力(垂直抗力)だけです。箱は上下には動かないので、この2つはつり合っていて、合力は 0 です。このとき箱は、手を離したときの速さのまま、まっすぐすべり続けます。同じ速さでまっすぐ進む運動を、等速直線運動といいます。

物体にはたらく力の合力が 0 なら、止まっている物体は止まり続け、動いている物体は等速直線運動を続けます。これを慣性の法則といいます。物体が、今の運動の様子(止まっている、または同じ速さでまっすぐ進む)を続けようとする性質を慣性といいます。

反対に、合力が 0 でない物体は、速さか向きが変わります(次の項目で調べます)。だから、ずっと止まっている物体にはたらく力の合力は 0 です。等速直線運動を続けている物体にはたらく力も、合力は 0 で、つり合っています。

横から見た図。床の上の箱をあなたの手が押してから離す。床の下に、手を離した位置を 0 とした 0 から 4.5 メートルの物差し。手を離してから 1 秒ごとの箱の前の端の位置に点を残し、箱の上に速度の紫の矢印、あらい床ではすべっている間、箱の下の面から左向きに摩擦力の黄土の矢印 あらい床 手を離した位置 速度 床が箱に加える摩擦力 計測は 4.0 s までです

点は、手を離してから 1 秒ごとの箱の位置です。摩擦力の矢印の長さは、大きさを表しません。

手を離してからの時間 t — 箱の速さ v —

やってみよう

「あらい床」のボタンが押された状態で、「押して放す」を押してください。箱が止まったときの、手を離してからの時間 t を読んでください。次に、「なめらかな床」のボタンを押して、もう一度「押して放す」を押してください。4.0 s 後の速さ v はいくつですか。

分かること

あらい床では、手を離してから 2.0 s で止まりました。なめらかな床では、4.0 s 後も 1.0 m/s のままでした。

確認

等速直線運動をしている物体にはたらく力の合力は、いくつですか。

答え

0 です。合力が 0 でなければ、物体の速さか向きが変わってしまうからです。

2力・質量と加速度

物体の加速度は、物体にはたらく力に比例し、物体の質量に反比例します。

力がはたらいて速さが変わるとき、物体には加速度があります。加速度は、1 秒あたりの速度の変化です(単位 m/s²)。力と加速度の関係を、なめらかな床の上の台車で調べます。

なめらかな床の上の台車に、水平なひもを付けます。あなたがひもを引いて、ひもが台車を一定の力で引くようにします。台車にはたらく重力と垂直抗力は、上下につり合っています。水平の向きにはたらく力は、ひもが台車を引く力だけです。

質量 1.0 kg の台車を引く力を変えて、加速度を調べると、次のようになります。

ひもが台車を引く力 [N]1.02.03.0
加速度 [m/s²]1.02.03.0

力を2倍・3倍にすると、加速度も2倍・3倍になります。加速度は力に比例します。

引く力を 2.0 N に決めて、台車の質量を変えると、次のようになります。

台車の質量 [kg]1.02.0
加速度 [m/s²]2.01.0

質量を2倍にすると、加速度は 1/2 倍になります。加速度は質量に反比例します。質量が大きい物体ほど、同じ力で引いても加速しにくくなります。質量は、物体の慣性の大きさを表しています。

なめらかな床の上の台車。台車の右の面に付けた水平なひもの右の端をあなたの手が握る。台車の右の面から右向きに、ひもが台車を引く力 F の藍の矢印、台車の上に右向きに加速度 a の橙の矢印 なめらかな床 m あなたの手 ひもが台車を引く力 F 加速度 a 加速度 0

藍の矢印がひもが台車を引く力、橙の矢印が台車の加速度です。この図では、台車の水平の向きの力だけを描いています(重力と垂直抗力はつり合っています)。

引く力 F N 台車の質量 m kg 加速度 a m/s²

やってみよう

台車の質量 m を 4.0 kg にし、引く力 F を 2.0 N にしてください。次に、F を 8.0 N に変えてください。加速度 a は、いくつからいくつになり、何倍になりましたか。

分かること

a は 0.50 m/s² から 2.00 m/s² になり、4倍になりました。

確認

同じ力で引くとき、質量が2倍の台車の加速度は何倍ですか。

答え

1/2 倍です。加速度は質量に反比例するからです。

3運動方程式

質量 m の物体に、合力 F がはたらくと、加速度 a は ma = F を満たします。この式を運動方程式といいます。

項目2で、加速度は力に比例し、質量に反比例することが分かりました。これを1つの式で書くと、a = F ÷ m です(比例の定数が 1 になるように、力の単位 N が決めてあります。この項目の後半で説明します)。両辺に m を掛けて、次の形にします。

ma = F
m は物体の質量(kg)、a は加速度(m/s²)、F は物体にはたらく力の合力(N)です。ma は m × a のことです。

この式を運動方程式といいます。項目2の表の 1.0 kg・3.0 N なら、1.0 × a = 3.0 から a = 3.0 m/s² で、表の値と同じです。

運動方程式の F は、1つの力ではなく、物体にはたらく力の合力です。加速度の向きは、合力の向きと同じです。

運動方程式がそのまま成り立つように、力の単位 N は決められています。質量 1 kg の物体に、1 m/s² の加速度を生じさせる力の大きさが 1 N です。

1 N = 1 kg·m/s²
kg·m/s² は「キログラム メートル毎秒毎秒」と読みます。kg × m/s² のことです。

静かに放して落ちる物体(自由落下する物体)には、重力だけがはたらきます(空気の抵抗は考えません)。自由落下の加速度は、どの物体でも同じで、g = 9.8 m/s² です。この g を重力加速度の大きさといいます。運動方程式 ma = F に、a = g と、合力 F = 重力の大きさ を入れると、m × g =(重力の大きさ)です。だから、質量 m の物体にはたらく重力の大きさは mg です。

確認

なめらかな床の上の台車が左へ動いています。台車にはたらく力の合力は、右向きです。台車の加速度は、右向きと左向きのどちらですか。

答え

右向きです。加速度の向きは、合力の向きと同じだからです。

例題

なめらかな水平な床の上に、質量 2.0 kg の台車があります。台車に、水平に 6.0 N の力を加えました。台車の加速度の大きさを求めなさい。

  1. 台車にはたらく重力と垂直抗力はつり合っているので、合力は水平の 6.0 N の力だけです。
  2. 運動方程式 ma = F に入れて、2.0 × a = 6.0 です。
  3. a = 6.0 ÷ 2.0 = 3.0 m/s² です。

答え: 3.0 m/s²(力を加えた向き)

4運動方程式の立て方

運動方程式は、物体を1つ決め、はたらく力をすべて描き、正の向きを決めてから、ma =(正の向きの力の合計)−(負の向きの力の合計)の形で立てます。

運動方程式は、次の4つの手順で立てます。

右辺は、正の向きを決めたときの合力です。

正の向きは、物理で決まっているのではなく、問題を解く人が自分で決める約束です。加速度の向き(止まっていた物体なら、動き出す向き)を正にすると、a が正の数で出ます。動いている向きなど、ほかの向きを正にしてもかまいません。そのとき a が負の数で出たら、加速度は正と逆の向きです。

質量 1.0 kg のおもりに糸を付け、あなたが糸を上へ引きます。① 考える物体は、おもりです。② おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(重力。下向きに mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N)と、糸がおもりを引く力(張力。上向きに T)の2つです。③ 上向きを正とします。

張力が T = 11.8 N のとき、④ の式は 1.0 × a = 11.8 − 9.8 です。a = 2.0 m/s² です。正の数なので、加速度は上向きです。

張力が T = 9.8 N のとき、1.0 × a = 9.8 − 9.8 = 0 で、a = 0 です。加速度が 0 なので、おもりは止まっているか、等速直線運動をしています。項目1の慣性の法則と同じです。

質量 1.0 キログラムのおもりの上の面から真上へ伸びる糸の上の端を、あなたの手が握る。おもりの上の面から上向きに糸がおもりを引く力 T の藍の矢印、おもりの中心から下向きに地球がおもりを引く力 mg の赤い矢印、おもりの左に加速度の橙の矢印。図の右上に上が正の印 あなたの手 1.0 kg 糸がおもりを引く力 T 地球がおもりを引く力 mg 加速度 加速度 0 上が正

おもりにはたらく力だけを描いています。上向きを正の向きにしています。おもりが上へ動いているか下へ動いているかは、この図では決めていません。

糸の張力 T N 合力 T − mg N 加速度 a m/s²

やってみよう

糸の張力 T を 7.8 N にしてください。次に、T を 13.8 N に変えてください。加速度の向きと大きさは、どう変わりましたか。

分かること

加速度は、下向きに 2.0 m/s²(−2.0 m/s²)から、上向きに 4.0 m/s²(+4.0 m/s²)になりました。

確認

糸でつるしたおもりの運動方程式を、下向きを正の向きとして立てたところ、a = −3.0 m/s² と出ました。おもりの加速度は、上向きと下向きのどちらですか。

答え

上向きです。a が負なので、加速度は正の向き(下向き)と逆向きです。

例題

質量 2.0 kg のおもりに糸を付け、糸が上向きに 25.6 N の力でおもりを引いて、おもりをつり上げます。おもりの加速度の向きと大きさを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

  1. 考える物体は、おもりです。
  2. おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(下向きに mg = 2.0 × 9.8 = 19.6 N)と、糸がおもりを引く力(上向きに 25.6 N)の2つです。
  3. 上向きを正とします。
  4. 運動方程式は 2.0 × a = 25.6 − 19.6 です。
  5. 2.0 × a = 6.0 なので、a = 3.0 m/s² です。正の数なので、上向きです。

答え: 上向きに 3.0 m/s²

練習問題

重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。空気の抵抗は考えません。

パターン1 運動方程式の基本

問1なめらかな水平な床の上に、質量 4.0 kg の台車があります。台車に付けたひもを、水平に 6.0 N の力で引きました。台車の加速度の大きさを求めなさい。

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1.5 m/s²

重力と垂直抗力はつり合っているので、合力はひもが台車を引く力 6.0 N。運動方程式 ma = F から、4.0 × a = 6.0。a = 6.0 ÷ 4.0 = 1.5 m/s²

問2なめらかな水平な床の上にある、質量 2.5 kg の台車を、水平に引いて 1.2 m/s² の加速度で動かします。台車を引く力の大きさを求めなさい。

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3.0 N

合力は台車を引く力 F だけ。運動方程式 ma = F に、m = 2.5 kg、a = 1.2 m/s² を入れて、F = 2.5 × 1.2 = 3.0 N

パターン2 鉛直方向の運動

問3質量 1.0 kg のおもりに糸を付け、糸が上向きに 15.8 N の力でおもりを引いています。おもりの加速度の向きと大きさを求めなさい。

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上向きに 6.0 m/s²

おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(下向きに mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N)と、糸がおもりを引く力(上向きに 15.8 N)。上向きを正として、運動方程式は 1.0 × a = 15.8 − 9.8 = 6.0。a = 6.0 m/s² で、正の数なので上向き

問4質量 2.0 kg のおもりを糸でつるし、下向きに 1.8 m/s² の加速度で下ろしています。このときの糸の張力の大きさを求めなさい。

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約 16 N

おもりにはたらく力は、地球がおもりを引く力(下向きに mg = 2.0 × 9.8 = 19.6 N)と、糸がおもりを引く力(上向きに T)。加速度の向きの下向きを正とすると、運動方程式は 2.0 × 1.8 = 19.6 − T。3.6 = 19.6 − T から、T = 19.6 − 3.6 = 16.0 ≒ 16 N(2 桁に丸めて)。T は mg = 19.6 N より小さい

パターン3 等加速度直線運動との組み合わせ

このパターンでは、等加速度直線運動(加速度が一定で、まっすぐ進む運動)の式 v = v0 + at と v2 − v02 = 2ax を使います。v0(ブイ・ゼロ)は初めの速度、v は t 秒後の速度、x はその間の変位です。

問5なめらかな水平な床の上に、質量 2.0 kg の台車が止まっています。台車に、水平に 4.0 N の力を加え続けました。力を加え始めてから 3.0 s 後の、台車の速さを求めなさい。

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6.0 m/s

運動方程式 ma = F から、2.0 × a = 4.0、a = 2.0 m/s²。止まっていたので v0 = 0。v = v0 + at = 0 + 2.0 × 3.0 = 6.0 m/s

問6なめらかな水平な床の上を、質量 2.0 kg の台車が右向きに 3.0 m/s で進んでいます。台車に、左向きに 1.5 N の力を加え続けて止めました。力を加え始めてから止まるまでに、台車は何 m 進みましたか。

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6.0 m

右向きを正とする。合力は左向きの 1.5 N なので、運動方程式は 2.0 × a = −1.5、a = −0.75 m/s²(加速度は左向き)。v0 = +3.0 m/s、止まるので v = 0。v2 − v02 = 2ax から、02 − 3.02 = 2 × (−0.75) × x。−9.0 = −1.5x で、x = 6.0 m

つまずきやすいところ

まとめ

要点

慣性の法則合力が 0 なら、止まっている物体は止まり続け、動いている物体は等速直線運動を続ける
運動方程式ma = FF は物体にはたらく力の合力です。
力の単位1 N = 1 kg·m/s²
重力重力の大きさ = mg自由落下の運動方程式 m × g =(重力の大きさ)から。

物理基礎 第2章 力と運動の法則

  1. 力の合成と分解(作図)
  2. 力の合成と分解(三角比)
  3. 重力と弾性力
  4. 垂直抗力・張力・摩擦力
  5. 力のつり合いと作用・反作用
  6. 運動の法則
  7. 斜面上の運動
  8. 2つの物体の運動
  9. 摩擦と運動
  10. 摩擦と運動(2)
  11. 運動方程式の応用
  12. 運動方程式の応用(2)
  13. 空気抵抗と終端速度
  14. 圧力と浮力

高校物理の単元の一覧