ゼロからの高校物理 / 物理基礎 / 力と運動の法則

運動方程式の応用(2)

要点

動く長さ動滑車の動く長さ・速さ・加速度は、ひもの端の半分ひもの一方の端を留めたとき。
2本のひもひもが動滑車を引く力は 2T動滑車が軽く、左右のひもが平行なとき。T はひもの張力の大きさです。
床が押す力重ねた物体の下の板を床が押す力は (mA + mB)g上下にほかの力がないとき。
一緒に動くか一緒と仮定して求めた静止摩擦力が μN 以下か確かめる

1動滑車

動滑車でつるした物体は、ひもの端を引いた長さの半分だけ動き、加速度もひもの端の半分です。ひもは、動滑車を左右の 2 本で合わせて 2T の力で引きます。

天井や台に固定されていて動かない滑車を 定滑車、ひもにかけて物体と一緒に動く滑車を 動滑車 といいます。ひもの一方の端を天井に留め、ひもを動滑車の下に通して、天井の定滑車にかけます。動滑車におもりをつるし、あなたがひものもう一方の端を握って下へ引きます。このページの滑車は、どれも軽くてなめらかに回るとします。この項目の図で、ひもの端を引いた長さと、おもりが上がった長さを比べます。

動滑車をつるしているひもは、動滑車の左側と右側の 2 本の部分です。ひもの端を 0.20 m 引き下げると、定滑車から手までの部分が 0.20 m 長くなります。ひもの長さは変わらないので、動滑車の左右の 2 本の部分は、合わせて 0.20 m 短くなります。2 本が同じだけ短くなるので、1 本あたり 0.10 m 短くなり、動滑車とおもりは 0.10 m 上がります。同じように考えると、次の表になります。

ひもの端を引いた長さ [m]0.200.601.0
おもりが上がった長さ [m]0.100.300.50

おもりが上がる長さは、いつも、ひもの端を引いた長さの半分です。

ひもの端を 1 s に 0.60 m ずつ引く(速さ 0.60 m/s)と、おもりは 1 s に 0.30 m ずつ上がります(速さ 0.30 m/s)。ひもの端の速さが 1 s ごとに 2.0 m/s ずつ増える(加速度 2.0 m/s²)なら、おもりの速さは 1 s ごとに 1.0 m/s ずつ増えます(加速度 1.0 m/s²)。おもりの加速度は、ひもの端の加速度の半分です。

動滑車は、左右の 2 本のひもに、それぞれ上へ T の力で引かれます(軽いひもなので、どちらも同じ T です)。だから、ひもが動滑車を引く力は合わせて 2T です。動滑車の質量は考えないので、おもりの運動方程式は、上向きを正にして ma = 2T − mg です。たとえば 2.0 kg のおもりをゆっくり(加速度 0 で)持ち上げるときは、2T = 2.0 × 9.8 = 19.6 N で、T = 9.8 N です。おもりの重さの半分の力で持ち上げられますが、ひもを引く長さは、おもりが上がる長さの 2 倍になります。

天井の左に留めたひもが、動滑車の下を通り、天井の右の定滑車にかかって、あなたの手まで下りている図。動滑車の下におもり。おもりの左に、引く前のおもりの下の面を 0 とした上向きの物差し、手の右に、引く前の握る位置を 0 とした下向きの物差し。手の横に引いた長さ、おもりの横に上がった長さの青緑の矢印。動滑車の左右のひもの横に、短くなった分の括弧 定滑車 おもり 動滑車 短くなった分 短くなった分 あなたの手 上がった長さ 引いた長さ

ひもの端を引くと、動滑車の左右の 2 本のひもが同じだけ短くなります。

引いた長さ m おもりが上がった長さ m

やってみよう

ひもの端を引いた長さを 0.40 m にしてください。おもりは何 m 上がりましたか。次に、0.80 m にしてください。おもりは何 m 上がりましたか。そのとき、動滑車の左右の「短くなった分」の括弧の長さは、おもりの「上がった長さ」の矢印と比べて、長いですか、短いですか、同じですか。

分かること

0.40 m では 0.20 m、0.80 m では 0.40 m 上がりました。左右の括弧は、どちらも「上がった長さ」の矢印と同じ長さです。左右のひもが 1 本ずつ短くなった分だけ、おもりが上がるからです。

確認

動滑車でつるしたおもりの加速度は、ひもの端の加速度の何倍ですか。

答え

1/2 倍です。上がる長さがいつも半分なので、速さも加速度も半分になります。

例題

なめらかな水平な台の上に質量 2.5 kg の物体 A を置き、軽い糸を付けます。糸を台の右の端の軽い定滑車にかけて下へ伸ばし、軽い動滑車の下を通して、糸の先を台の右側の天井に留めました。動滑車には質量 4.0 kg の物体 B をつるします。静かに手を離したときの、A の加速度の大きさ aA、B の加速度の大きさ aB、糸の張力の大きさ T を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

A B 右へ aA 下へ aB
  1. A が右へ x 動くと、A から定滑車までの糸が x 短くなるので、定滑車より下の、動滑車の左右の 2 本が合わせて x 長くなります。2 本は x/2 ずつ長くなるので、B は x/2 下がります。動く長さがいつも半分なので、aA = 2aB です。
  2. A は右向き、B は下向きを正にします。A にはたらく水平の力は、糸が A を引く力 T(右向き)だけです。B(と動滑車)には、地球が B を引く力 4.0 × 9.8 = 39.2 N(下向き)と、動滑車の左右の糸が引く力 2T(上向き)がはたらきます。
  3. A: 2.5 × aA = T、B: 4.0 × aB = 39.2 − 2T です。
  4. aA = 2aB を A の式に入れると、T = 2.5 × 2aB = 5.0 × aB です。
  5. これを B の式に入れて、4.0 × aB = 39.2 − 10 × aB です。14 × aB = 39.2 で、aB = 2.8 m/s² です。
  6. aA = 2 × 2.8 = 5.6 m/s²、T = 5.0 × 2.8 = 14 N です。

答え: aA = 5.6 m/s²、aB = 2.8 m/s²、T = 14 N

2重ねた物体(あらい床)

あらい床の上の板を引くときは、床の摩擦力を (mA + mB)g の垂直抗力から求めます。そのうえで、一緒に動くと仮定して、上の物体に要る静止摩擦力が最大摩擦力以下かを確かめます。

あらい床の上に板 A を置き、その上に箱 B をのせます。床と A の間も、A と B の間も、あらい面です。A に付けたひもを、あなたが水平に右へ力 F で引きます。B には、何も付けません。静止摩擦係数を μ(ミュー)、動摩擦係数を μ′(ミュー・プライム)で表します。このページでは、どの面の値かを「床と A の間の μ」「A と B の間の μ′」のように言葉で添えて書き分けます。この項目の図で、A が床の上を動き出す力と、B が A の上をすべり出す力を探します。

A の上には B がのっていて、B は A を下へ、B の重さと同じ大きさ mBg の力で押しています。だから、床が A を押す力(垂直抗力)は、A の重さと B の重さの和 (mA + mB)g です。床が A に加える摩擦力は、この垂直抗力から求めます。最大摩擦力(止まっている間の静止摩擦力がなれる、いちばん大きな値)は (床と A の間の μ) × (mA + mB)g、動摩擦力(すべっている間の摩擦力)は (床と A の間の μ′) × (mA + mB)g です。

引く力 F が小さいうちは、床の静止摩擦力が F と同じ大きさで左向きにはたらき、A は動きません。A が止まっている間は、B を動かそうとする力もないので、A と B の間の摩擦力は 0 です。F が床の最大摩擦力を超えると、A は床の上を動き出します。

A が動き出したら、まず A と B が一緒に動くと仮定して、加速度 a を求めます。A と B をまとめて1つの物体と見ると、水平の力は、ひもが引く力 F(右向き)と、床の動摩擦力(左向き)です。A と B の間の摩擦力は、まとめると打ち消し合います。右を正にして、(mA + mB)a = F − (床と A の間の μ′) × (mA + mB)g です。B を動かす水平の力は、A が B に加える静止摩擦力 f だけなので、mBa = f です。

求めた f が、A と B の間の最大摩擦力 (A と B の間の μ) × mBg 以下なら、仮定どおり一緒に動きます。超えたら、B は A の上をすべります。そのときは、A と B の間の摩擦力を動摩擦力 (A と B の間の μ′) × mBg にします。A と B の加速度は違うので aA・aB と書き分け、A と B で別々に運動方程式を立てます。

板 A 2.0 kg、箱 B 2.0 kg、床と A の間の静止摩擦係数 0.20・動摩擦係数 0.10、A と B の間の静止摩擦係数 0.30・動摩擦係数 0.25 とします。床が A を押す力は (2.0 + 2.0) × 9.8 = 39.2 N です。床の最大摩擦力は 0.20 × 39.2 = 7.84 N です。F = 10 N で引くと、10 N はこれを超えるので、A は動きます。動いている間の床の動摩擦力は 0.10 × 39.2 = 3.92 N です。一緒に動くと仮定すると、(2.0 + 2.0) × a = 10 − 3.92 = 6.08 で、a = 1.52 ≒ 1.5 m/s² です。B に要る静止摩擦力は、f = 2.0 × 1.52 = 3.04 ≒ 3.0 N です。A と B の間の最大摩擦力は 0.30 × 2.0 × 9.8 = 5.88 N です。3.04 N はこれ以下なので、仮定どおり一緒に動きます。

あらい床の上の板 A(2.0 キログラム)と、その上の箱 B(2.0 キログラム)。B は A の上にじかにのっている。A の右の面のひもの端をあなたの手が握る。ひもが A を引く力 F の藍の矢印(右向き)。A の枠の中に、下の面の近くに左向きの床が A に加える摩擦力と、上の面のすぐ下の右寄りに左向きの B が A に加える摩擦力の黄土の矢印。B の枠の中の下の面のすぐ上の左寄りに、右向きの A が B に加える摩擦力。A の右下と B の上に、右向きの加速度の橙の矢印 あらい床(床と A の間: μ = 0.20、μ′ = 0.10) A 2.0 kg B 2.0 kg A と B の間:μ = 0.30、μ′ = 0.25 あなたの手 ひもが A を引く力 F A が B に加える摩擦力 B が A に加える摩擦力 床が A に加える摩擦力 A の加速度 B の加速度 加速度 0 加速度 0

A と B にはたらく水平の力だけを描いています。

様子 加速度 a = m/s² 加速度 A m/s²、B m/s² A が B に加える摩擦力の大きさ N

やってみよう

① 引く力 F を 2.0 N にしてください。次に、F を 6.0 N に変えてください。床が A に加える摩擦力の矢印は、どう変わりましたか。様子の表示は変わりましたか。② 次に、F を 8.0 N から 2.0 N ずつ大きくしてください。様子が「B がすべる」に変わったのは、F が何 N のときですか。

分かること

① 床の摩擦力の矢印は、F の矢印と一緒に長くなりました(どちらの F でも、F の矢印と同じ長さで逆向きです)。様子はどちらも「止まったまま」で、a = 0.00 m/s² のままです。② 16 N で「B がすべる」に変わりました。14 N では B に要る静止摩擦力が 5.04 N で最大摩擦力 5.88 N 以下ですが、16 N では 6.04 N になって超えるためです。

確認

床の上の板 A が床から受ける垂直抗力は、A の重さだけですか。

答え

いいえ。上にのった B が A を押す力も加わるので、A と B の重さの和 (mA + mB)g です。

例題

あらい水平な床の上に質量 3.0 kg の板 A を置き、その上に質量 2.0 kg の箱 B をのせました。床と A の間の静止摩擦係数は 0.30、動摩擦係数は 0.20、A と B の間の静止摩擦係数は 0.45 です。A に付けたひもを水平に 18 N で引きました。B は A と一緒に動きますか。一緒に動くなら、加速度の大きさ a と、B が A から受ける摩擦力の大きさ f を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

  1. 床が A を押す力は、(3.0 + 2.0) × 9.8 = 49 N です。
  2. 床の最大摩擦力は 0.30 × 49 = 14.7 N です。18 N はこれを超えるので、A は動き出します。
  3. 床の動摩擦力は 0.20 × 49 = 9.8 N(左向き)です。
  4. 引く向きを正にして、一緒に動くと仮定します。(3.0 + 2.0) × a = 18 − 9.8 = 8.2 で、a = 1.64 ≒ 1.6 m/s² です。
  5. B の式 2.0 × a = f から、f = 2.0 × 1.64 = 3.28 ≒ 3.3 N です。
  6. A と B の間の最大摩擦力は 0.45 × 2.0 × 9.8 = 8.82 N です。f = 3.28 N はこれ以下なので、仮定どおり一緒に動きます。

答え: 一緒に動く。a ≒ 1.6 m/s²、f ≒ 3.3 N(引く向き)

練習問題

重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。ひも・滑車はどれも軽く、滑車はなめらかに回るとします。

パターン1 動滑車

問1ひもの一方の端を天井に留め、ひもを動滑車の下に通して天井の定滑車にかけ、動滑車に質量 6.0 kg のおもりをつるしました。ひものもう一方の端を下へ引いて、おもりをゆっくり 0.30 m 持ち上げます。ひもを引く力の大きさと、ひもの端を引く長さを求めなさい。動滑車の質量は考えません。

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引く力 T ≒ 29 N、引く長さ 0.60 m

ゆっくり持ち上げるので、おもりにはたらく力はつり合う。ひもが動滑車を引く力は 2T なので、2T = 6.0 × 9.8 = 58.8 N、T = 29.4 ≒ 29 N。おもりが上がる長さは、ひもの端を引いた長さの半分なので、引く長さは 0.30 × 2 = 0.60 m

(ひもの端を引いた長さ 0.60 m で、おもりが上がった長さ 0.30 m と出ます)

問2問1 と同じ通し方(ひもの一方の端を天井に留め、動滑車の下に通して天井の定滑車にかける)で、動滑車に質量 2.0 kg のおもりをつるし、ひものもう一方の端を下へ一定の力 12 N で引きました。おもりの加速度の大きさと、ひもの端の加速度の大きさを求めなさい。動滑車の質量は考えません。

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おもり 2.2 m/s²、ひもの端 4.4 m/s²

軽いひもなので、張力はどこでも T = 12 N。おもり(と動滑車)には、上向きに 2T = 24 N、下向きに 2.0 × 9.8 = 19.6 N がはたらく。上向きを正として、2.0 × a = 24 − 19.6 = 4.4、a = 2.2 m/s²。ひもの端の加速度はおもりの 2 倍で、2 × 2.2 = 4.4 m/s²

パターン2 重ねた物体(あらい床)

問3あらい水平な床の上に質量 2.0 kg の板 A を置き、その上に質量 2.0 kg の箱 B をのせました。床と A の間の動摩擦係数は 0.10 です。A に付けたひもを水平に 12 N で引くと、A は床の上をすべり、B は A と一緒に動きました。加速度の大きさ a と、B が A から受ける摩擦力の大きさ f を求めなさい。

答えを見る

a ≒ 2.0 m/s²、f ≒ 4.0 N

床が A を押す力は (2.0 + 2.0) × 9.8 = 39.2 N。床の動摩擦力は 0.10 × 39.2 = 3.92 N(左向き)。引く向きを正とし、A と B をまとめて、(2.0 + 2.0) × a = 12 − 3.92 = 8.08、a = 2.02 ≒ 2.0 m/s²。B を動かす水平の力は A から受ける摩擦力だけなので、f = 2.0 × 2.02 = 4.04 ≒ 4.0 N

(引く力 F = 12 N で、「一緒に動く」、a = 2.02 m/s²、A が B に加える摩擦力 4.04 N と出ます)

問4あらい水平な床の上に質量 4.0 kg の板 A を置き、その上に質量 1.0 kg の箱 B をのせました。B に付けたひもを水平に 7.0 N で引くと、B は A の上をすべり、A は床の上で止まったままでした。A と B の間の動摩擦係数は 0.35、床と A の間の静止摩擦係数は 0.20 です。(1) B の加速度の大きさを求めなさい。(2) 床が A に加える静止摩擦力の大きさと向きを求めなさい。

答えを見る

(1) a ≒ 3.6 m/s² (2) 静止摩擦力 ≒ 3.4 N、引く向きと逆向き

B が A から受ける垂直抗力は 1.0 × 9.8 = 9.8 N、B が受ける動摩擦力は 0.35 × 9.8 = 3.43 N(引く向きと逆向き)。(1) 引く向きを正として、1.0 × a = 7.0 − 3.43 = 3.57、a = 3.57 ≒ 3.6 m/s²。(2) 作用・反作用で、A は B から 3.43 N の摩擦力を引く向きに受ける。A は止まっているので、床の静止摩擦力は同じ大きさ 3.43 ≒ 3.4 N で、引く向きと逆向き。(確かめ: 床が A を押す力は (4.0 + 1.0) × 9.8 = 49 N、床の最大摩擦力は 0.20 × 49 = 9.8 N。3.43 N はこれ以下なので、A は止まったままでいられる)

つまずきやすいところ

まとめ

要点

動く長さ動滑車の動く長さ・速さ・加速度は、ひもの端の半分ひもの一方の端を留めたとき。
2本のひもひもが動滑車を引く力は 2T動滑車が軽く、左右のひもが平行なとき。T はひもの張力の大きさです。
床が押す力重ねた物体の下の板を床が押す力は (mA + mB)g上下にほかの力がないとき。
一緒に動くか一緒と仮定して求めた静止摩擦力が μN 以下か確かめる

物理基礎 第2章 力と運動の法則

  1. 力の合成と分解(作図)
  2. 力の合成と分解(三角比)
  3. 重力と弾性力
  4. 垂直抗力・張力・摩擦力
  5. 力のつり合いと作用・反作用
  6. 運動の法則
  7. 斜面上の運動
  8. 2つの物体の運動
  9. 摩擦と運動
  10. 摩擦と運動(2)
  11. 運動方程式の応用
  12. 運動方程式の応用(2)
  13. 空気抵抗と終端速度
  14. 圧力と浮力

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