要点
動滑車でつるした物体は、ひもの端を引いた長さの半分だけ動き、加速度もひもの端の半分です。ひもは、動滑車を左右の 2 本で合わせて 2T の力で引きます。
天井や台に固定されていて動かない滑車を 定滑車、ひもにかけて物体と一緒に動く滑車を 動滑車 といいます。ひもの一方の端を天井に留め、ひもを動滑車の下に通して、天井の定滑車にかけます。動滑車におもりをつるし、あなたがひものもう一方の端を握って下へ引きます。このページの滑車は、どれも軽くてなめらかに回るとします。この項目の図で、ひもの端を引いた長さと、おもりが上がった長さを比べます。
動滑車をつるしているひもは、動滑車の左側と右側の 2 本の部分です。ひもの端を 0.20 m 引き下げると、定滑車から手までの部分が 0.20 m 長くなります。ひもの長さは変わらないので、動滑車の左右の 2 本の部分は、合わせて 0.20 m 短くなります。2 本が同じだけ短くなるので、1 本あたり 0.10 m 短くなり、動滑車とおもりは 0.10 m 上がります。同じように考えると、次の表になります。
| ひもの端を引いた長さ [m] | 0.20 | 0.60 | 1.0 |
|---|---|---|---|
| おもりが上がった長さ [m] | 0.10 | 0.30 | 0.50 |
おもりが上がる長さは、いつも、ひもの端を引いた長さの半分です。
ひもの端を 1 s に 0.60 m ずつ引く(速さ 0.60 m/s)と、おもりは 1 s に 0.30 m ずつ上がります(速さ 0.30 m/s)。ひもの端の速さが 1 s ごとに 2.0 m/s ずつ増える(加速度 2.0 m/s²)なら、おもりの速さは 1 s ごとに 1.0 m/s ずつ増えます(加速度 1.0 m/s²)。おもりの加速度は、ひもの端の加速度の半分です。
動滑車は、左右の 2 本のひもに、それぞれ上へ T の力で引かれます(軽いひもなので、どちらも同じ T です)。だから、ひもが動滑車を引く力は合わせて 2T です。動滑車の質量は考えないので、おもりの運動方程式は、上向きを正にして ma = 2T − mg です。たとえば 2.0 kg のおもりをゆっくり(加速度 0 で)持ち上げるときは、2T = 2.0 × 9.8 = 19.6 N で、T = 9.8 N です。おもりの重さの半分の力で持ち上げられますが、ひもを引く長さは、おもりが上がる長さの 2 倍になります。
ひもの端を引くと、動滑車の左右の 2 本のひもが同じだけ短くなります。
やってみよう
ひもの端を引いた長さを 0.40 m にしてください。おもりは何 m 上がりましたか。次に、0.80 m にしてください。おもりは何 m 上がりましたか。そのとき、動滑車の左右の「短くなった分」の括弧の長さは、おもりの「上がった長さ」の矢印と比べて、長いですか、短いですか、同じですか。
0.40 m では 0.20 m、0.80 m では 0.40 m 上がりました。左右の括弧は、どちらも「上がった長さ」の矢印と同じ長さです。左右のひもが 1 本ずつ短くなった分だけ、おもりが上がるからです。
確認
動滑車でつるしたおもりの加速度は、ひもの端の加速度の何倍ですか。
1/2 倍です。上がる長さがいつも半分なので、速さも加速度も半分になります。
例題
なめらかな水平な台の上に質量 2.5 kg の物体 A を置き、軽い糸を付けます。糸を台の右の端の軽い定滑車にかけて下へ伸ばし、軽い動滑車の下を通して、糸の先を台の右側の天井に留めました。動滑車には質量 4.0 kg の物体 B をつるします。静かに手を離したときの、A の加速度の大きさ aA、B の加速度の大きさ aB、糸の張力の大きさ T を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: aA = 5.6 m/s²、aB = 2.8 m/s²、T = 14 N
あらい床の上の板を引くときは、床の摩擦力を (mA + mB)g の垂直抗力から求めます。そのうえで、一緒に動くと仮定して、上の物体に要る静止摩擦力が最大摩擦力以下かを確かめます。
あらい床の上に板 A を置き、その上に箱 B をのせます。床と A の間も、A と B の間も、あらい面です。A に付けたひもを、あなたが水平に右へ力 F で引きます。B には、何も付けません。静止摩擦係数を μ(ミュー)、動摩擦係数を μ′(ミュー・プライム)で表します。このページでは、どの面の値かを「床と A の間の μ」「A と B の間の μ′」のように言葉で添えて書き分けます。この項目の図で、A が床の上を動き出す力と、B が A の上をすべり出す力を探します。
A の上には B がのっていて、B は A を下へ、B の重さと同じ大きさ mBg の力で押しています。だから、床が A を押す力(垂直抗力)は、A の重さと B の重さの和 (mA + mB)g です。床が A に加える摩擦力は、この垂直抗力から求めます。最大摩擦力(止まっている間の静止摩擦力がなれる、いちばん大きな値)は (床と A の間の μ) × (mA + mB)g、動摩擦力(すべっている間の摩擦力)は (床と A の間の μ′) × (mA + mB)g です。
引く力 F が小さいうちは、床の静止摩擦力が F と同じ大きさで左向きにはたらき、A は動きません。A が止まっている間は、B を動かそうとする力もないので、A と B の間の摩擦力は 0 です。F が床の最大摩擦力を超えると、A は床の上を動き出します。
A が動き出したら、まず A と B が一緒に動くと仮定して、加速度 a を求めます。A と B をまとめて1つの物体と見ると、水平の力は、ひもが引く力 F(右向き)と、床の動摩擦力(左向き)です。A と B の間の摩擦力は、まとめると打ち消し合います。右を正にして、(mA + mB)a = F − (床と A の間の μ′) × (mA + mB)g です。B を動かす水平の力は、A が B に加える静止摩擦力 f だけなので、mBa = f です。
求めた f が、A と B の間の最大摩擦力 (A と B の間の μ) × mBg 以下なら、仮定どおり一緒に動きます。超えたら、B は A の上をすべります。そのときは、A と B の間の摩擦力を動摩擦力 (A と B の間の μ′) × mBg にします。A と B の加速度は違うので aA・aB と書き分け、A と B で別々に運動方程式を立てます。
板 A 2.0 kg、箱 B 2.0 kg、床と A の間の静止摩擦係数 0.20・動摩擦係数 0.10、A と B の間の静止摩擦係数 0.30・動摩擦係数 0.25 とします。床が A を押す力は (2.0 + 2.0) × 9.8 = 39.2 N です。床の最大摩擦力は 0.20 × 39.2 = 7.84 N です。F = 10 N で引くと、10 N はこれを超えるので、A は動きます。動いている間の床の動摩擦力は 0.10 × 39.2 = 3.92 N です。一緒に動くと仮定すると、(2.0 + 2.0) × a = 10 − 3.92 = 6.08 で、a = 1.52 ≒ 1.5 m/s² です。B に要る静止摩擦力は、f = 2.0 × 1.52 = 3.04 ≒ 3.0 N です。A と B の間の最大摩擦力は 0.30 × 2.0 × 9.8 = 5.88 N です。3.04 N はこれ以下なので、仮定どおり一緒に動きます。
A と B にはたらく水平の力だけを描いています。
やってみよう
① 引く力 F を 2.0 N にしてください。次に、F を 6.0 N に変えてください。床が A に加える摩擦力の矢印は、どう変わりましたか。様子の表示は変わりましたか。② 次に、F を 8.0 N から 2.0 N ずつ大きくしてください。様子が「B がすべる」に変わったのは、F が何 N のときですか。
① 床の摩擦力の矢印は、F の矢印と一緒に長くなりました(どちらの F でも、F の矢印と同じ長さで逆向きです)。様子はどちらも「止まったまま」で、a = 0.00 m/s² のままです。② 16 N で「B がすべる」に変わりました。14 N では B に要る静止摩擦力が 5.04 N で最大摩擦力 5.88 N 以下ですが、16 N では 6.04 N になって超えるためです。
確認
床の上の板 A が床から受ける垂直抗力は、A の重さだけですか。
いいえ。上にのった B が A を押す力も加わるので、A と B の重さの和 (mA + mB)g です。
例題
あらい水平な床の上に質量 3.0 kg の板 A を置き、その上に質量 2.0 kg の箱 B をのせました。床と A の間の静止摩擦係数は 0.30、動摩擦係数は 0.20、A と B の間の静止摩擦係数は 0.45 です。A に付けたひもを水平に 18 N で引きました。B は A と一緒に動きますか。一緒に動くなら、加速度の大きさ a と、B が A から受ける摩擦力の大きさ f を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: 一緒に動く。a ≒ 1.6 m/s²、f ≒ 3.3 N(引く向き)
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。ひも・滑車はどれも軽く、滑車はなめらかに回るとします。
問1ひもの一方の端を天井に留め、ひもを動滑車の下に通して天井の定滑車にかけ、動滑車に質量 6.0 kg のおもりをつるしました。ひものもう一方の端を下へ引いて、おもりをゆっくり 0.30 m 持ち上げます。ひもを引く力の大きさと、ひもの端を引く長さを求めなさい。動滑車の質量は考えません。
引く力 T ≒ 29 N、引く長さ 0.60 m
ゆっくり持ち上げるので、おもりにはたらく力はつり合う。ひもが動滑車を引く力は 2T なので、2T = 6.0 × 9.8 = 58.8 N、T = 29.4 ≒ 29 N。おもりが上がる長さは、ひもの端を引いた長さの半分なので、引く長さは 0.30 × 2 = 0.60 m
(ひもの端を引いた長さ 0.60 m で、おもりが上がった長さ 0.30 m と出ます)
問2問1 と同じ通し方(ひもの一方の端を天井に留め、動滑車の下に通して天井の定滑車にかける)で、動滑車に質量 2.0 kg のおもりをつるし、ひものもう一方の端を下へ一定の力 12 N で引きました。おもりの加速度の大きさと、ひもの端の加速度の大きさを求めなさい。動滑車の質量は考えません。
おもり 2.2 m/s²、ひもの端 4.4 m/s²
軽いひもなので、張力はどこでも T = 12 N。おもり(と動滑車)には、上向きに 2T = 24 N、下向きに 2.0 × 9.8 = 19.6 N がはたらく。上向きを正として、2.0 × a = 24 − 19.6 = 4.4、a = 2.2 m/s²。ひもの端の加速度はおもりの 2 倍で、2 × 2.2 = 4.4 m/s²
問3あらい水平な床の上に質量 2.0 kg の板 A を置き、その上に質量 2.0 kg の箱 B をのせました。床と A の間の動摩擦係数は 0.10 です。A に付けたひもを水平に 12 N で引くと、A は床の上をすべり、B は A と一緒に動きました。加速度の大きさ a と、B が A から受ける摩擦力の大きさ f を求めなさい。
a ≒ 2.0 m/s²、f ≒ 4.0 N
床が A を押す力は (2.0 + 2.0) × 9.8 = 39.2 N。床の動摩擦力は 0.10 × 39.2 = 3.92 N(左向き)。引く向きを正とし、A と B をまとめて、(2.0 + 2.0) × a = 12 − 3.92 = 8.08、a = 2.02 ≒ 2.0 m/s²。B を動かす水平の力は A から受ける摩擦力だけなので、f = 2.0 × 2.02 = 4.04 ≒ 4.0 N
(引く力 F = 12 N で、「一緒に動く」、a = 2.02 m/s²、A が B に加える摩擦力 4.04 N と出ます)
問4あらい水平な床の上に質量 4.0 kg の板 A を置き、その上に質量 1.0 kg の箱 B をのせました。B に付けたひもを水平に 7.0 N で引くと、B は A の上をすべり、A は床の上で止まったままでした。A と B の間の動摩擦係数は 0.35、床と A の間の静止摩擦係数は 0.20 です。(1) B の加速度の大きさを求めなさい。(2) 床が A に加える静止摩擦力の大きさと向きを求めなさい。
(1) a ≒ 3.6 m/s² (2) 静止摩擦力 ≒ 3.4 N、引く向きと逆向き
B が A から受ける垂直抗力は 1.0 × 9.8 = 9.8 N、B が受ける動摩擦力は 0.35 × 9.8 = 3.43 N(引く向きと逆向き)。(1) 引く向きを正として、1.0 × a = 7.0 − 3.43 = 3.57、a = 3.57 ≒ 3.6 m/s²。(2) 作用・反作用で、A は B から 3.43 N の摩擦力を引く向きに受ける。A は止まっているので、床の静止摩擦力は同じ大きさ 3.43 ≒ 3.4 N で、引く向きと逆向き。(確かめ: 床が A を押す力は (4.0 + 1.0) × 9.8 = 49 N、床の最大摩擦力は 0.20 × 49 = 9.8 N。3.43 N はこれ以下なので、A は止まったままでいられる)
要点
物理基礎 第2章 力と運動の法則