ゼロからの高校物理 / 物理基礎 / 力と運動の法則

垂直抗力・張力・摩擦力

要点

垂直抗力面に垂直に、面が物体を押す力
張力糸に沿って、糸が物体を引く力軽い糸では、糸のどこでも同じ大きさ。
摩擦力面に沿って、すべる(すべろうとする)向きと逆向き
床の上の物体N = mg水平な床の上で止まっていて、ほかに上下の向きの力がないとき。
つるした物体T = mg1本の糸でつるして止まっているとき。

1面から受ける力(垂直抗力)

物体が面に触れていると、面は物体を、面に垂直な向きに押します。この力を垂直抗力といいます。

机の上に本を置きます。本には、下向きの重力がはたらいています。それでも本は落ちません。机が本を上へ押しているからです。面に触れている物体を、面が押す力を垂直抗力といいます。

「垂直」は、面と直角という意味です。垂直抗力は、面に垂直に、面から物体を押す向きにはたらきます。水平な机や床の上の物体なら、垂直抗力は真上の向きです。壁に押し付けた物体なら、垂直抗力は水平で、壁から離れる向きです。斜面の上の物体なら、垂直抗力は斜面に垂直で、斜面から離れる向きです。真上ではありません。矢印の根元は、物体が面に触れている所に置きます。

垂直抗力 机 垂直抗力 壁 真上 垂直抗力 斜面

緑の矢印が垂直抗力です。この図では垂直抗力だけを描いています。矢印の長さは大きさを表しません。

垂直抗力の大きさは、記号 N で表します。英語で「垂直」を表す Normal の頭文字です。斜体の N は垂直抗力の大きさ、立体の N は単位のニュートンです。たとえば「N = 9.8 N」は、「垂直抗力の大きさは 9.8 ニュートン」という意味です。

水平な床の上に、質量 1.0 kg の箱が止まっています。重力の大きさは、質量 m と重力加速度の大きさ g(9.8 m/s²)を掛けた mg です。箱には、下向きの重力 mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N と、上向きの垂直抗力 N がはたらいています。止まっている物体では、はたらく力の合力は 0 です。上向きの力と下向きの力が1つずつで合力が 0 になるのは、2つの大きさが同じときです。だから N = 9.8 N です。

この箱を、あなたの手で上から 4.0 N で押します。箱は止まったままです。箱にはたらく下向きの力は、重力 9.8 N と手の力 4.0 N の2つです。下向きの力の合計は 9.8 + 4.0 = 13.8 N です。上向きの力は垂直抗力だけです。合力が 0 なので、N は下向きの力の合計と同じ大きさで、N = 13.8 ≒ 14 N です(2 桁に丸めて)。垂直抗力の大きさは、いつも mg とは限りません。手で押したり引いたりすると変わります。

箱 A の上に箱 B を重ねて止めたときは、A と B をまとめて1つの物体と見ます。A が床から受ける垂直抗力は、A と B の質量の合計で求めた重力と同じ大きさです。

水平な台の上の箱を、あなたの手が上から押すか上へ引く図(上へ引くときは手を描かず、引く所に点を置く)。箱の中心から下向きに重力 mg の赤い矢印、箱の上の面から手の力の藍の矢印、箱の下の面から上向きに垂直抗力 N の緑の矢印。矢印の長さは力の大きさに比例する 台 m 垂直抗力 N 重力 mg 手が押す力

赤が重力、藍があなたの手の力、緑が台からの垂直抗力です。3本の矢印は、重ならないように左右に少しずらして描いています。上へ引くときは手を描かず、手が引く所を点で示しています。

重力の大きさ mg N 手の力 垂直抗力の大きさ N N

やってみよう

質量 m を 2.0 kg にし、手の力を「上から押す 6.0 N」にしてください。次に、手の力を「上へ引く 4.0 N」に変えてください。垂直抗力の大きさ N は、いくつからいくつになりましたか。

分かること

N は 25.6 N から 15.6 N になりました。

確認

あなたが手で板を天井に押し付けています。板が天井から受ける垂直抗力は、どちら向きですか。

答え

下向きです。垂直抗力は、面に垂直に、面から離れる向きにはたらくからです。

例題

水平な床の上に、質量 1.5 kg の箱があります。箱の上の面に付けたひもを、あなたが真上へ 4.0 N で引きましたが、箱は床から離れず、止まったままでした。箱が床から受ける垂直抗力の大きさを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

  1. 箱の重力の大きさは、mg = 1.5 × 9.8 = 14.7 N です(下向き)。
  2. 上向きの力は、ひもの力 4.0 N と垂直抗力 N の2つです。
  3. 箱は止まっているので合力は 0 で、上向きの力の合計が下向きの重力と同じ大きさになります。N + 4.0 = 14.7 です。
  4. N = 14.7 − 4.0 = 10.7 ≒ 11 N です(2 桁に丸めて)。

答え: 約 11 N

2糸から受ける力(張力)

ぴんと張った糸は、つながっている物体を、糸に沿って引きます。この力を張力といいます。

天井から糸でおもりをつるします。おもりには、下向きの重力がはたらいています。それでもおもりは落ちません。糸がおもりを上へ引いているからです。ぴんと張った糸が、つながっている物体を引く力を張力といいます。

張力は、糸に沿って、物体から糸のほうへ引く向きにはたらきます。つるしたおもりなら、糸は真上へ伸びているので、張力は上向きです。床の上の箱に付けた糸を斜め上へ引くと、張力も斜め上の向きです。糸は物体を引くことはできますが、押すことはできません。矢印の根元は、糸が物体に付いている所に置きます。

張力の大きさは、記号 T で表します。英語で張力を表す Tension の頭文字です。

質量 1.0 kg のおもりを、1本の糸でつるして止めます。おもりには、下向きの重力 mg = 1.0 × 9.8 = 9.8 N と、上向きの張力 T がはたらいています。おもりは止まっているので、合力は 0 です。上向きの T と下向きの mg は同じ大きさなので、T = 9.8 N です。

このページでは、糸の重さは考えません。重さを考えない糸を軽い糸といいます。軽い糸では、張力は糸のどこでも同じ大きさです。糸の一方の端があなたの手、もう一方の端が箱なら、糸が手を引く力と、糸が箱を引く力は同じ大きさです。おもり A の下に、糸でおもり B をつるしたときは、上の糸は A と B をまとめてつるしています。上の糸の張力は、A と B の質量の合計で求めた重力と同じ大きさです。

張力 T 重力 mg (a) あなた 張力 T (b) 糸が箱を引く力 T 同じ大きさ 糸が手を引く力 T (c)

藍の矢印が張力、赤の矢印が重力です。(b) と (c) では張力だけを描いています。矢印の長さは大きさを表しません(ただし (c) の2本は、同じ大きさなので同じ長さで描いています)。

確認

天井から軽い糸でおもりをつるしています。糸がおもりを引く力は 2.0 N です。糸が天井を引く力の大きさは、いくつですか。

答え

2.0 N です。軽い糸の張力は、糸のどこでも同じ大きさだからです。

例題

質量 0.30 kg のおもりを、1本の軽い糸で天井からつるしたところ、おもりは止まりました。糸の張力の大きさを求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

  1. おもりの重力の大きさは、mg = 0.30 × 9.8 = 2.94 N です(下向き)。
  2. おもりにはたらく上向きの力は、張力 T だけです。
  3. おもりは止まっているので合力は 0 で、T = mg です。
  4. T = 2.94 ≒ 2.9 N です(2 桁に丸めて)。

答え: 約 2.9 N

3面に沿って受ける力(摩擦力)

面は、その上をすべる物体に、面に沿って、すべる向きと逆向きの力を加えます。この力を摩擦力といいます。

床の上で箱を右へ押し出して、手を離します。箱は右へすべりますが、やがて止まります。箱を止めたのは床です。床が、すべる箱の動きを妨げる力を加えています。面に沿ってはたらき、物体のすべりを妨げる力を摩擦力といいます。

摩擦力は、面に沿って、物体がすべる向きと逆向きにはたらきます。右へすべっている箱なら、摩擦力は左向きです。矢印の根元は、物体が面に触れている所に置きます。

動く向き 摩擦力 床

箱は右へすべっています。紫の矢印は動く向き、黄土の矢印は摩擦力です。この図では摩擦力だけを描いています。矢印の長さは大きさを表しません。

摩擦力は、すべっている物体だけでなく、止まっている物体にもはたらくことがあります。斜面の上に箱を置くと、箱は斜面に沿ってすべり下りようとします。それでも箱が止まっていることがあります。このとき、摩擦力は、箱がすべろうとする向き(斜面に沿って下向き)と逆の、斜面に沿って上向きにはたらいています。

摩擦がない面をなめらかな面、摩擦がある面をあらい面といいます。問題文では、この言葉で面の様子を表します。なめらかな斜面の上に置いた箱は、止まっていられずに、すべり下ります。

摩擦力の大きさは、このページでは扱いません。向きだけを考えます。

左下から右上へ上がるあらい斜面の上の箱。箱の上に斜面に沿った動く向きの紫の矢印、箱が斜面に触れている面から斜面に沿った摩擦力の黄土の矢印 あらい斜面 動く向き 止まっている 摩擦力

紫の矢印は動く向き、黄土の矢印は摩擦力です。矢印の長さは大きさを表しません。この図では摩擦力だけを描いています。「すべり上がる」は、箱を斜面の下から押し上げて、手を離した後の様子です。

摩擦力の向き:

やってみよう

箱の様子の「すべり下りる」のボタンを押してください。次に「すべり上がる」のボタンを押してください。摩擦力の向きは、どう変わりましたか。

分かること

摩擦力は、斜面に沿って上向きから、斜面に沿って下向きに変わりました。

確認

なめらかな床の上をすべっている箱に、摩擦力ははたらきますか。

答え

はたらきません。なめらかな面は、摩擦がない面だからです。

練習問題

重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。糸はどれも軽い糸(重さを考えない糸)とします。

パターン1 垂直抗力の大きさ

問1水平な台の上に、質量 0.50 kg の箱があります。あなたが手で箱を上から 8.0 N で押しましたが、箱は止まったままでした。箱が台から受ける垂直抗力の大きさを求めなさい。

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約 13 N

重力の大きさは mg = 0.50 × 9.8 = 4.9 N(下向き)。手の力 8.0 N も下向き。上向きの力は垂直抗力 N だけ。止まっているので合力は 0 で、N = 4.9 + 8.0 = 12.9 ≒ 13 N

問2水平な床の上に、質量 3.0 kg の箱 A を置き、その上に質量 2.0 kg の箱 B を重ねました。2つの箱は止まっています。箱 A が床から受ける垂直抗力の大きさを求めなさい。

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49 N

A と B をまとめて1つの物体と見ると、質量は 3.0 + 2.0 = 5.0 kg。床からの垂直抗力は、まとめた物体の重力と同じ大きさで、N = 5.0 × 9.8 = 49 N

パターン2 張力の大きさ

問3質量 0.50 kg のおもりを、1本の糸で天井からつるしたところ、おもりは止まりました。糸の張力の大きさを求めなさい。

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4.9 N

重力の大きさは mg = 0.50 × 9.8 = 4.9 N。おもりは止まっているので合力は 0 で、T = mg = 4.9 N

問4天井から糸1でおもり A(質量 0.40 kg)をつるし、A の下に糸2でおもり B(質量 0.60 kg)をつるしました。A と B は止まっています。糸1と糸2の張力の大きさを、それぞれ求めなさい。

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糸1 9.8 N、糸2 約 5.9 N

糸2は B だけをつるしているので、糸2の張力 T2 は、T2 = 0.60 × 9.8 = 5.88 ≒ 5.9 N。糸1は A と B をまとめてつるしているので、まとめた質量は 0.40 + 0.60 = 1.0 kg で、糸1の張力 T1 は、T1 = 1.0 × 9.8 = 9.8 N

パターン3 力の向き

問5あらい床の上の箱に糸を付け、あなたが糸を水平に左へ引いています。箱は左へすべっています。箱にはたらく張力と摩擦力の向きを、それぞれ答えなさい。

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張力は左向き(糸に沿って、あなたの手のほう)、摩擦力は右向き(すべる向きと逆)

張力は糸に沿って、物体から糸のほうへ引く向きなので左向き。摩擦力は面に沿って、すべる向きと逆向きなので、左へすべる箱では右向き

張力 摩擦力 動く向き

矢印の長さは大きさを表しません。

問6あなたが手で黒板消しを、あらい縦の壁に水平に押し付けています。黒板消しは止まっています。黒板消しが壁から受ける垂直抗力と摩擦力の向きを、それぞれ答えなさい。

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垂直抗力は水平で、壁から離れる向き(手の力と逆向き)。摩擦力は上向き

垂直抗力は、面に垂直に、面から物体を押す向き。縦の壁に垂直なのは水平の向きで、壁から離れる向きになる。黒板消しには下向きの重力がはたらくので、壁に沿って下へすべろうとしている。止まっていても、すべろうとしている向きと逆に摩擦力がはたらく。だから摩擦力は上向き(手で押す向きの逆ではない)

垂直抗力 摩擦力

矢印の長さは大きさを表しません。この図では、壁から受ける2つの力だけを描いています。

つまずきやすいところ

まとめ

要点

垂直抗力面に垂直に、面が物体を押す力
張力糸に沿って、糸が物体を引く力軽い糸では、糸のどこでも同じ大きさ。
摩擦力面に沿って、すべる(すべろうとする)向きと逆向き
床の上の物体N = mg水平な床の上で止まっていて、ほかに上下の向きの力がないとき。
つるした物体T = mg1本の糸でつるして止まっているとき。

物理基礎 第2章 力と運動の法則

  1. 力の合成と分解(作図)
  2. 力の合成と分解(三角比)
  3. 重力と弾性力
  4. 垂直抗力・張力・摩擦力
  5. 力のつり合いと作用・反作用
  6. 運動の法則
  7. 斜面上の運動
  8. 2つの物体の運動
  9. 摩擦と運動
  10. 摩擦と運動(2)
  11. 運動方程式の応用
  12. 運動方程式の応用(2)
  13. 空気抵抗と終端速度
  14. 圧力と浮力

高校物理の単元の一覧