要点
2つの物体がつながって動くときは、物体ごとに力を描き、物体ごとに運動方程式を立てます。
なめらかな水平な床の上に、物体 A と物体 B を置き、軽い糸でつなぎます。A の右側には別のひもを付け、あなたがそのひもを水平に右へ引きます。A の質量を mA(エム・エー)、B の質量を mB(エム・ビー)と書きます。小さい A・B は、どちらの物体かを表す名前です。糸はたるまず、伸びもしないので、A と B は一緒に動きます。だから、A と B の加速度は同じ大きさです。この大きさを a とします。
運動方程式 ma = F(F は物体にはたらく力の合力)は、① 物体を決める、② はたらく力をすべて描く、③ 正の向きを決める、④ ma =(正の向きの力の合計)−(負の向きの力の合計)を書く、の手順で立てます。2つの物体があるときは、① で A と B を分けて、物体ごとに考えます。
糸が A を引く力と、糸が B を引く力は、同じ大きさ T です。軽い糸の張力は、糸のどこでも同じ大きさだからです。
④ 物体ごとに運動方程式を書きます。
2つの式を足すと、T と −T が消えて、(mA + mB)a = F になります。この式から a が求まります。a が分かったら、B の式 mBa = T に入れて T を求めます。
mA = 2.0 kg、mB = 3.0 kg、F = 10 N とします。足した式から、(2.0 + 3.0) × a = 10 で、a = 2.0 m/s² です。B の式から、T = 3.0 × 2.0 = 6.0 N です。足した式 (mA + mB)a = F は、A と B をまとめて1つの物体と見た式と同じです。a はこれで早く求まりますが、この式には T が出てきません。
A と B にはたらく水平の力だけを描いています(上下の重力と垂直抗力はつり合っています)。
やってみよう
B の質量の「1.0 kg」のボタンを押し、引く力 F を 6.0 N にしてください。次に、F を 12 N に変えてください。加速度 a と張力 T は、それぞれいくつからいくつになりましたか。
a は 2.00 m/s² から 4.00 m/s² に、T は 2.00 N から 4.00 N になりました。
確認
A を引く力 F と、A と B をつなぐ糸の張力 T は、同じ大きさですか。
いいえ、T のほうが小さくなります。T は B だけを加速させる分の力で、F は A と B の両方を加速させる力だからです。
例題
なめらかな水平な床の上で、質量 4.0 kg の物体 A と質量 1.0 kg の物体 B を軽い糸でつなぎ、A に付けたひもを水平に 15 N で引きました。加速度の大きさ a と、A と B をつなぐ糸の張力の大きさ T を求めなさい。
答え: a = 3.0 m/s²、T = 3.0 N
接して並べた2つの物体を押すときも、物体ごとに運動方程式を立てます。2つの物体が押し合う力は、同じ大きさで逆向きです。
なめらかな水平な床の上に、物体 A と物体 B を接して並べます(左が A、右が B)。あなたが A を左から、水平に右へ力 F で押します。A と B は、接したまま一緒に動きます。だから、加速度は同じ大きさ a です。
A は B を右へ押し、B は A を左へ押します。「A が B を押す力」と「B が A を押す力」は、作用・反作用の組です。作用・反作用の2つの力は、同じ大きさで逆向きです。この大きさを f とします。
項目1と同じ手順で、物体ごとに考えます。
項目1と同じく、2つの式を足すと f が消えて、(mA + mB)a = F です。a を求めてから、B の式で f を求めます。
A と B にはたらく水平の力だけを描いています。
確認
質量のちがう A と B を接して並べています。あなたが A の側から押す代わりに、反対の B の側から、同じ大きさの力で左へ押します。A と B が押し合う力の大きさは、変わりますか。
変わります。押し合う力は、押されていない側の物体を加速させる分の力なので、その物体の質量で決まるからです。
例題
なめらかな水平な床の上に、質量 1.0 kg の物体 A と質量 3.0 kg の物体 B を接して並べ、A の側から水平に 8.0 N で押しました。加速度の大きさ a と、A と B が押し合う力の大きさ f を求めなさい。
答え: a = 2.0 m/s²、f = 6.0 N
滑車をはさむと A と B の動く向きは違いますが、物体ごとに動く向きを正にとれば、加速度は同じ a で、物体ごとに運動方程式を立てられます。
天井に軽い滑車を付け、軽い糸をかけて、両端に物体 A と物体 B をつるします。滑車はなめらかに回り、滑車の質量は考えません。mA が mB より大きいとき、A は下へ、B は上へ動きます。糸はたるまず伸びないので、A と B の加速度は同じ大きさ a です。
A は下へ、B は上へ動くので、1つの向きを正にすると、片方の加速度が負になって扱いにくくなります。そこで、物体ごとに、その物体が動く向きを正にします。A は下向きを正、B は上向きを正です。こうすると、どちらの加速度も同じ正の数 a で書けます。
滑車をはさんでも、1本の軽い糸なので、糸が A を引く力と糸が B を引く力は、どちらも同じ大きさ T です。
2つの式を足すと T が消えて、(mA + mB)a = (mA − mB)g です。
mA = 4.0 kg、mB = 3.0 kg とします。足した式から、(4.0 + 3.0) × a = (4.0 − 3.0) × 9.8 で、7.0 × a = 9.8、a = 1.4 m/s² です。B の式から、T = mBa + mBg = 3.0 × 1.4 + 3.0 × 9.8 = 4.2 + 29.4 = 33.6 ≒ 34 N です(2 桁に丸めて)。
赤が重力、藍が糸の張力、橙が加速度です。物体は動かさず、加速度の矢印で動く向きを表しています。
やってみよう
A の質量の「1.0 kg」と、B の質量の「4.0 kg」のボタンを押してください。次に、2つを入れかえて、A の質量の「4.0 kg」と、B の質量の「1.0 kg」のボタンを押してください。動く向き、加速度の大きさ a、張力 T は、それぞれどうなりましたか。
動く向きは「A は上へ、B は下へ」から「A は下へ、B は上へ」に変わりました。a = 5.88 m/s²、T = 15.68 N は、どちらも変わりませんでした。
確認
mA = mB のとき、糸の張力 T は、A の重力 mAg と比べて、大きいですか、小さいですか、同じですか。
同じ大きさです。足した式の右辺 (mA − mB)g が 0 になって a = 0 なので、A の式 mAa = mAg − T から T = mAg になるからです。
例題
天井の軽い滑車に軽い糸をかけ、両端に質量 3.0 kg の物体 A と質量 1.0 kg の物体 B をつるして、静かに手を離しました。加速度の大きさ a と、糸の張力の大きさ T を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: a = 4.9 m/s²、T ≒ 15 N
台の上の A と、滑車からつるした B をつないだときも、物体ごとに動く向きを正にして運動方程式を立てます。
なめらかな水平な台の上に物体 A を置き、軽い糸を付けます。糸を台の右の端の軽い滑車にかけ、もう一方の端に物体 B をつるします。手を離すと、A は台の上を右へ、B は下へ動きます。加速度は、どちらも同じ大きさ a です。
2つの式を足すと T が消えて、(mA + mB)a = mBg です。
mA = 4.0 kg、mB = 3.0 kg とします。足した式から、(4.0 + 3.0) × a = 3.0 × 9.8 で、7.0 × a = 29.4、a = 4.2 m/s² です。A の式から、T = 4.0 × 4.2 = 16.8 ≒ 17 N です。
A は台の上で動く向きの力(糸の張力)だけ、B は重力と糸の張力を描いています。A の重力と垂直抗力はつり合っているので描いていません。
やってみよう
A の質量の「1.0 kg」と、B の質量の「1.0 kg」のボタンを押してください。次に、B の質量の「4.0 kg」のボタンを押してください。加速度の大きさ a と張力 T は、それぞれいくつからいくつになりましたか。
a は 4.90 m/s² から 7.84 m/s² に、T は 4.90 N から 7.84 N になりました。
確認
B がつるされて下向きに加速しているとき、糸の張力 T は、B の重力 mBg より大きいですか、小さいですか。
小さいです。B は下向きに加速しているので、B にはたらく下向きの重力が、上向きの張力より大きいからです。
例題
なめらかな水平な台の上に質量 4.0 kg の物体 A を置き、軽い糸で、台の端の軽い滑車を通して質量 4.0 kg の物体 B をつるしました。静かに手を離したときの加速度の大きさ a と、糸の張力の大きさ T を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
答え: a = 4.9 m/s²、T ≒ 20 N
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。面・台はどれもなめらかで、糸と滑車はどれも軽いとします。
問1なめらかな水平な床の上で、質量 2.0 kg の物体 A と質量 2.0 kg の物体 B を軽い糸でつなぎ、A に付けたひもを水平に 8.0 N で引きました。加速度の大きさ a と、A と B をつなぐ糸の張力の大きさ T を求めなさい。
a = 2.0 m/s²、T = 4.0 N
引く向きを正とする。A: 2.0 × a = 8.0 − T、B: 2.0 × a = T。足して (2.0 + 2.0) × a = 8.0、a = 2.0 m/s²。B の式から T = 2.0 × 2.0 = 4.0 N
問2なめらかな水平な床の上に、物体 A(1.0 kg)、物体 B(2.0 kg)、物体 C(3.0 kg)をこの順に並べ、A と B、B と C を、それぞれ軽い糸でつなぎました。A に付けたひもを、C と反対の向きに水平に 12 N で引きました。A と B をつなぐ糸の張力 T1 と、B と C をつなぐ糸の張力 T2 の大きさを求めなさい。
T1 = 10 N、T2 = 6.0 N
引く向きを正とする。3つの物体は同じ加速度 a で動く。A: 1.0 × a = 12 − T1、B: 2.0 × a = T1 − T2、C: 3.0 × a = T2。3つの式を足すと T1 と T2 が消えて、(1.0 + 2.0 + 3.0) × a = 12、a = 2.0 m/s²。C の式から T2 = 3.0 × 2.0 = 6.0 N。B の式から T1 = 2.0 × 2.0 + 6.0 = 10 N
問3天井の軽い滑車に軽い糸をかけ、両端に質量 5.0 kg の物体 A と質量 2.0 kg の物体 B をつるして、静かに手を離しました。加速度の大きさ a と、糸の張力の大きさ T を求めなさい。
a = 4.2 m/s²、T = 28 N
A は下向き、B は上向きを正とする。A: 5.0 × a = 5.0 × 9.8 − T、B: 2.0 × a = T − 2.0 × 9.8。足して (5.0 + 2.0) × a = (5.0 − 2.0) × 9.8、7.0 × a = 29.4、a = 4.2 m/s²。B の式から T = 2.0 × 4.2 + 2.0 × 9.8 = 8.4 + 19.6 = 28 N
問4天井の軽い滑車に軽い糸をかけ、両端に質量 3.0 kg の物体 A と質量 2.0 kg の物体 B をつるして、静かに手を離しました。手を離してから 2.5 s 後の、A の速さを求めなさい。使う式は、等加速度直線運動の v = v0 + at(v0 は初めの速度、v は t 秒後の速度)です。
4.9 m/s
A は下向き、B は上向きを正とする。A: 3.0 × a = 3.0 × 9.8 − T、B: 2.0 × a = T − 2.0 × 9.8。足して (3.0 + 2.0) × a = (3.0 − 2.0) × 9.8、5.0 × a = 9.8、a = 1.96 m/s²。静かに手を離したので v0 = 0。v = 0 + 1.96 × 2.5 = 4.9 m/s
問5なめらかな水平な台の上に質量 6.0 kg の物体 A を置き、軽い糸で、台の端の軽い滑車を通して質量 1.0 kg の物体 B をつるしました。静かに手を離したときの加速度の大きさ a と、糸の張力の大きさ T を求めなさい。
a = 1.4 m/s²、T = 8.4 N
A は右向き、B は下向きを正とする。A: 6.0 × a = T、B: 1.0 × a = 1.0 × 9.8 − T。足して (6.0 + 1.0) × a = 9.8、a = 1.4 m/s²。A の式から T = 6.0 × 1.4 = 8.4 N
問6なめらかな水平な台の上に質量 4.0 kg の物体 A を置き、軽い糸で、台の端の軽い滑車を通して質量 1.0 kg の物体 B をつるしました。B の下の面は、床から 0.98 m の高さにあります。静かに手を離してから、B が床に着くまでの時間を求めなさい。A は、B が床に着くまで滑車にぶつからないとします。使う式は、等加速度直線運動の x = v0t + ½at2(x は t 秒間の変位)です。
1.0 s
A は右向き、B は下向きを正とする。A: 4.0 × a = T、B: 1.0 × a = 1.0 × 9.8 − T。足して (4.0 + 1.0) × a = 9.8、a = 1.96 m/s²。B は v0 = 0 から下へ 0.98 m 動くので、0.98 = 0 + ½ × 1.96 × t2。t2 = 1.0、t = 1.0 s
要点
物理基礎 第2章 力と運動の法則