ゼロからの高校物理 / 物理 / 円運動と単振動

慣性力と遠心力

要点

慣性力F = −maa は乗っている乗り物の加速度。慣性力の大きさは ma です。
遠心力F = mrω2 = mv2r回転の中心から外向き。ω・v は地面から見た値です。
使うとき慣性力・遠心力は、加速している乗り物と一緒に動く人から見るときだけ考える
見かけの重さエレベーターの加速度が上向きなら体重計の表示は大きく、下向きなら小さくなる

1加速する電車の中で見えること

同じおもりの動きでも、ホームに立つ友だちから見るか、電車に乗っているあなたから見るかで、見え方が違います。

まっすぐなレールの上に、止まっている電車があります。電車の天井から、質量 0.50 kg のおもりを糸でつるします(つり革の代わりです)。あなたは電車に乗っています。友だちは、ホームに立っています。電車は、右へ一定の加速度 2.0 m/s² で動き出します。この項目では、電車の進む向き(右)を正の向きとし、右を「前」、左を「後ろ」と呼びます。

このページでは、ホームの友だちから見るときと、電車の中のあなたから見るときを分けて考えます。運動方程式 ma = F(質量 × 加速度 = 物体にはたらく力の合力)は、地面に立っている人(友だち)から見た運動で成り立つ式です。

電車が動き出すと、つるしたおもりの糸はどうなると思いますか。予想してから、次の動画を見てください。

0:00 / 0:16
電車の天井から、糸でおもりをつるしています。止まっていた電車が、右へ一定の加速度で動き出します。前半(0:00〜0:08)はホームの友だちから、後半(0:08〜0:16)は電車の中のあなたから見た様子です。赤の矢印は重力、藍の矢印は糸が引く力です。

やってみよう

(1) 電車が動き出すと、糸はどちらへ傾きましたか。(2) 場面2(0:08 から)の、糸が傾いた後を見てください。あなたから見て、おもりは動いていますか。(3) 場面2 の、糸が傾いた後のおもりの2本の矢印(重力と糸が引く力)を見てください。2本はちょうど逆向きですか。この2つの力の合力は 0 になりますか。

分かること

(1) 後ろ(左)へ傾きました(実際には少し揺れてから落ち着きますが、動画では揺れを省いています)。(2) 動いていません。糸が傾いたまま、電車の中で止まっています。(3) 逆向きではありません。糸が引く力は斜め前(右上)を向いているので、前向き(右向き)の成分があり、それを打ち消す力が描かれていません。合力は 0 になりません。

ホームの友だちから見ると、おもりは電車と一緒に、右へ 2.0 m/s² で速くなっていきます。加速しているので、運動方程式 ma = F から、おもりにはたらく力の合力は右向きで、大きさは 0.50 × 2.0 = 1.0 N です。この合力を作っているのは、糸が引く力の前向き(右向き)の成分です。糸が後ろへ傾いたのは、糸が引く力に、おもりを前へ引っぱる成分が要るからです。鉛直の向きには、おもりは動きません。糸が引く力の鉛直の成分(上向き)は、重力 0.50 × 9.8 = 4.9 N とつり合っています。

確認

ホームの友だちから見ると、電車が動き出した後のおもりは止まっていますか。

答え

いいえ。電車と同じ加速度で、右へ速くなっていきます。

2慣性力

加速している乗り物の中から見るときは、乗り物の加速度と逆向きに、大きさ ma の力がはたらいていると考えると、力のつり合いが使えます。この力を慣性力といいます。

前の項目の電車(加速度は右へ 2.0 m/s²)の中のあなたから見ると、0.50 kg のおもりは止まっています。ところが、おもりにはたらく重力と糸が引く力の合力は、右向きに 1.0 N で、0 ではありません。止まっている物体にはたらく力の合力は 0 のはずなので、このままでは、あなたから見たおもりの様子を力のつり合いで説明できません。

そこで、電車の中のあなたから見るときは、おもりに左向き(後ろ向き)に 1.0 N の力がもう1つはたらいていると考えます。そう考えると、合力は 1.0 − 1.0 = 0 N になり、おもりが止まって見えることと合います。

このように、加速している乗り物の中から見るときに考える力を慣性力といいます。名前は「慣性」から来ています。物体には、今の運動の様子を続けようとする性質があり、これを慣性といいます。電車が前へ加速しても、おもりは今の速さのまま進もうとします。そのため、電車の中から見ると、おもりは後ろへ押されたように見えます。

慣性力を加えている物はありません。糸でも地球でもなく、何かがおもりに触れて押しているわけでもありません。加速している乗り物の中から見たときだけ考える力なので、見かけの力といいます。押している物がないので、慣性力には反作用がありません。

慣性力を式で書くと、次のようになります。

F = −ma

m は慣性力を受ける物体(ここではおもり)の質量、a はあなたが乗っている乗り物(ここでは電車)の加速度です。文字の上の矢印は、向きも表す印です。右辺のマイナスは、「a と逆向き」という意味です。慣性力の大きさは ma です(大きさだけを表すときは、矢印を付けずに F と書きます)。

この電車では、a は右向きに 2.0 m/s² です。慣性力は左向き(後ろ向き)で、大きさは 0.50 × 2.0 = 1.0 N です。この項目の最初に足した力と同じです。

慣性力は、加速している乗り物と一緒に動くあなたから見るときだけ考えます。ホームの友だちから見るときは、慣性力を考えません。

次の図は、電車の中のあなたから見た様子です。電車の加速度を変えて、おもりの傾く向きと慣性力の向きがどう変わるかを確かめます。

電車の中の天井から、0.50キログラムのおもりを長い糸でつるした図。電車の加速度を変えると、おもりが加速度と逆の側へ傾き、おもりにはたらく重力(赤の実線)、糸が引く力(藍の実線)、慣性力(藍の破線)の矢印と、天井の上の電車の加速度の矢印が変わる ← 後ろ 前 → 電車の加速度 0.50 kg 重力 糸が引く力 慣性力

電車の中のあなたから見た図です。電車は右(前)へ走っていて、加速度は右向きを正とします(負のときはブレーキ)。破線の矢印は見かけの力(慣性力)、実線の藍の矢印は糸が引く力です。

慣性力の大きさ 慣性力の向き

やってみよう

電車の加速度を +2.0 m/s² から −2.0 m/s² にしてください(右へ走っている電車がブレーキをかけているときです)。おもりは前と後ろのどちらへ傾きますか。慣性力はどちらを向き、大きさは何 N ですか。

分かること

おもりは前(右)へ傾きます。慣性力は前向き(右向き)で、大きさは 1.0 N です。電車の加速度が左向きになったので、慣性力はその逆の右向きになりました。

確認

20 m/s の一定の速さでまっすぐ走っている電車の中で、慣性力ははたらきますか。

答え

いいえ。電車の加速度が 0 なので、慣性力も 0 です。

例題

右へ一定の加速度 2.0 m/s² で走っている電車の床に、質量 5.0 kg の箱を置きました。箱は床に対してすべらず、電車の中で止まっています。箱が床から受ける静止摩擦力の大きさと向きを、電車の中のあなたから見て求めなさい。

  1. 電車の中から見るので、箱には慣性力がはたらくと考えます。電車の加速度は右向きなので、慣性力は左向き(後ろ向き)です。
  2. 慣性力の大きさは、ma = 5.0 × 2.0 = 10 N です。
  3. 水平の向きにはたらく力は、慣性力と静止摩擦力だけです(重力と垂直抗力は鉛直の向きでつり合っています)。
  4. あなたから見て箱は止まっているので、静止摩擦力は慣性力とつり合い、右向き(前向き)に 10 N です。

答え: 10 N、右向き(電車の進む向き)

3エレベーターの中の見かけの重さ

エレベーターの加速度が上向きのとき、エレベーターの中から見ると、あなたには下向きの慣性力がはたらきます。そのため、体重計の表示は止まっているときより大きくなります。

エレベーターの床に体重計を置き、質量 50 kg のあなたが乗ります。この項目では、上を正の向きとします。体重計の表示は、体重計があなたを押す力(垂直抗力)の大きさです。このページでは、体重計の表示を kg ではなく N で書きます。エレベーターが止まっているとき、あなたにはたらく力は、重力(下向き 50 × 9.8 = 490 N)と、体重計が押す力(上向き)だけです。つり合っているので、体重計の表示は 490 N です。

止まっているエレベーターのかごの中で、床に置いた体重計に50キログラムのあなたが乗っている。体重計の表示は490ニュートン。上が正の向き 3 490 N 50 kg 上が正の向き

エレベーターの加速度の向きは、動いている向きではなく、速度が変わる向きです。上へ動いていても、速くなっているのか、遅くなっているのかで、加速度の向きは逆になります。

エレベーターの加速度が上向きに 1.0 m/s² のときを考えます。エレベーターの中から見ると、あなたは体重計の上で止まっています。あなたには、加速度と逆向き(下向き)に、大きさ 50 × 1.0 = 50 N の慣性力がはたらきます。上向きの力は体重計が押す力、下向きの力は重力 490 N と慣性力 50 N です。つり合うので、体重計が押す力は 490 + 50 = 540 N です。

エレベーターの加速度が下向きに 1.0 m/s² のときは、慣性力は上向きに 50 N です。上向きの力は体重計が押す力と慣性力 50 N、下向きの力は重力 490 N です。つり合うので、体重計が押す力は 490 − 50 = 440 N です。

加速するエレベーターの中で体重計が示す値を、見かけの重さといいます。あなたの質量(50 kg)と重力(490 N)は、エレベーターが動いても変わりません。変わるのは、体重計があなたを押す力です。

次の図で、エレベーターの動き方を選んで、体重計の表示が大きくなるのはどの動き方のときかを確かめます。

エレベーターのかごの中で、体重計に乗った50キログラムのあなたを横から見た図。かごの左に、かごの動く向きと加速度の矢印。かごの右に、あなたを点で表して、あなたにはたらく重力(赤)、体重計が押す力(緑)、慣性力(藍の破線)の矢印を描いた力の図。エレベーターの動き方を5通りから選ぶと、体重計の表示、体重計が押す力の矢印の長さ、慣性力の矢印の向き、動く向きと加速度の矢印が変わる。重力の矢印は変わらない 動く向き 加速度 440 N あなた 50 kg あなたにはたらく力 あなた 重力 止まっているとき 体重計が押す力 慣性力

エレベーターの中のあなたから見た図です。上向きを正とします。破線の矢印は見かけの力(慣性力)です。

エレベーターの加速度 慣性力 体重計の表示

やってみよう

「エレベーターの動き方」の5つのボタンを1つずつ押して、体重計の表示を読んでください。表示が止まっているとき(490 N)より大きくなる動き方を、すべて答えてください。そのとき、紫の「動く向き」と橙の「加速度」の矢印は、それぞれどちらを向いていますか。

分かること

「上へ動き出す」と「下へ動いていて止まる直前」で、どちらも 540 N です。「上へ動き出す」は動く向きも加速度も上向きです。「下へ動いていて止まる直前」は、動く向きは下向きですが、加速度は上向きです。体重計の表示は、動く向きではなく加速度の向きで決まります。

確認

体重計の表示が、止まっているとき(490 N)より小さくなりました。エレベーターの加速度は、上向きと下向きのどちらですか。

答え

下向きです。慣性力が上向きになり、体重計が押す力が小さくてすむからです。

例題

上向きに 2.0 m/s² の加速度で動いているエレベーターの天井から、ばねはかりで質量 1.0 kg のおもりをつるしました。おもりはエレベーターの中で止まって見えます。ばねはかりがおもりを引く力の大きさを、エレベーターの中のあなたから見て求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

  1. 上を正の向きとします。エレベーターの中から見るので、おもりには慣性力がはたらくと考えます。
  2. エレベーターの加速度は上向きなので、慣性力は下向きで、大きさは 1.0 × 2.0 = 2.0 N です。
  3. 重力は下向きに 1.0 × 9.8 = 9.8 N です。
  4. おもりは止まって見えるので、上向きのばねはかりの力は、下向きの重力と慣性力の和とつり合います。9.8 + 2.0 = 11.8 N です。
  5. 与えた数(2.0 m/s²、1.0 kg)が 2 桁なので、答えも 2 桁に丸めて 11.8 ≒ 12 N とします。

答え: 12 N

4遠心力

回転台と一緒に回るあなたから見るときに考える慣性力を、遠心力といいます。

人が乗れる大きな回転台が、一定の角速度 1.0 rad/s で回り続けています。角速度は、1 秒あたりに回る角です。角をラジアン(rad)で測るので、角速度の単位は rad/s です。回転台の中心にあなたが立ち、中心から 1.0 m の所に質量 2.0 kg の箱を置きました。箱はすべらずに、台と一緒に回っています。中心に立つあなたは、その場で向きを変えるだけです。友だちは、回転台の外の地面に立っています。

地面の友だちから見ると、箱は半径 1.0 m の円の上を、一定の速さで回っています(等速円運動)。等速円運動の加速度は円の中心向きで、大きさは a = rω2 です(r は半径、ω(オメガ)は角速度)。この箱では 1.0 × 1.02 = 1.0 m/s² です。運動方程式から、箱にはたらく力の合力は中心向きで、大きさは mrω2 = 2.0 × 1.0 × 1.02 = 2.0 N です(この中心向きの合力を向心力といいます)。箱が台から受ける水平の向きの力は、静止摩擦力だけです。だから、静止摩擦力が中心向きに 2.0 N はたらいています。

次の動画は、この回転台を真上から見たものです。前半は地面の友だちから、後半は台と一緒に回るあなたから見ています。

0:00 / 0:16
一定の角速度で回る回転台を、真上から見ています。台の中心にあなたが立ち、台の上に箱が置いてあります。前半(0:00〜0:08)は地面の友だちから、後半(0:08〜0:16)は台と一緒に回るあなたから見た様子です。黄土色の矢印は、箱が台から受ける静止摩擦力です。

やってみよう

場面2(0:08 から)を見てください。(1) あなたから見て、箱は動いていますか。(2) 地面のタイルの目地と友だちは、時計回りと反時計回りのどちらに回って見えますか。(3) 場面2 で箱に描かれている水平の力は、中心向きの静止摩擦力だけです。この力だけだとすると、箱は止まっていられますか。

分かること

(1) 動いていません。箱は、画面で、いつも台の中心の右の同じ所にあります。(2) 時計回りです。台は反時計回りに回っているので、台と一緒に回るあなたから見ると、周りが逆に回って見えます。(3) 止まっていられません。中心向きの力だけでは、合力が 0 になりません。

台と一緒に回るあなたから見ると、箱は止まっています。止まって見えることと合わせるために、項目2 の電車と同じように、慣性力を考えます。回転台のうち箱が置いてある所は、中心向きに 1.0 m/s² で加速しています。慣性力は、その加速度と逆向きなので、中心から外向きです。慣性力の大きさは、ma = 2.0 × 1.0 = 2.0 N です。外向きの慣性力 2.0 N と、中心向きの静止摩擦力 2.0 N がつり合うので、あなたから見て箱は止まっています。

回転台と一緒に回るあなたから見るときに考える、中心から外向きの慣性力を遠心力といいます。加速度の大きさ a = rω2 を ma に入れると、遠心力の大きさは次の式になります。

F = mrω2 = mv2r

r は回転の中心からの距離、ω は台の角速度です。v は地面から見た箱の速さで、v = rω から、この箱では 1.0 × 1.0 = 1.0 m/s です。mv2/r = 2.0 × 1.02 ÷ 1.0 = 2.0 N で、mrω2 と同じ値になります。

遠心力も慣性力の1つなので、見かけの力です。

次の図で、友だちから見たときとあなたから見たときの、箱にはたらく水平の力を並べます。

(a) 地面の友だちから見た回転台を真上から見た図。中心から1.0メートルの所に2.0キログラムの箱があり、箱から中心へ向かう静止摩擦力2.0ニュートンの矢印と、箱の上に中心向きの加速度1.0メートル毎秒毎秒の矢印がある (a) 地面の友だちから見る 中心 1.0 m 2.0 kg 静止摩擦力 2.0 N 加速度 1.0 m/s²

合力は中心向きに 2.0 N(= mrω2)

(b) 台と一緒に回るあなたから見た回転台を真上から見た図。中心から1.0メートルの所に2.0キログラムの箱があり、箱から中心へ向かう静止摩擦力2.0ニュートンの矢印と、箱から外向きの遠心力2.0ニュートンの破線の矢印がある (b) 台と一緒に回るあなたから見る 中心 1.0 m 2.0 kg 静止摩擦力 2.0 N 遠心力 2.0 N

合力は 0(箱は止まって見える)

真上から見た図なので、重力と垂直抗力(鉛直の向きで、つり合っています)は描いていません。破線の矢印は見かけの力(遠心力)です。

確認

回転台を、動画とは逆の時計回りに回すと、箱にはたらく遠心力の向きは変わりますか。

答え

変わりません。どちら回りでも、遠心力は回転の中心から外向きです。

例題

角速度 2.0 rad/s で回る回転台の上の、中心から 0.50 m の所に、質量 0.30 kg の物体を置きました。物体はすべらずに台と一緒に回っています。台と一緒に回る人から見て、物体にはたらく遠心力の大きさと、物体が台から受ける静止摩擦力の大きさと向きを求めなさい。

  1. 遠心力の大きさは、F = mrω2 = 0.30 × 0.50 × 2.02 = 0.60 N です。向きは中心から外向きです。
  2. 台と一緒に回る人から見ると、物体は止まっています。水平の向きの力は、遠心力と静止摩擦力だけです。
  3. 2つがつり合うので、静止摩擦力は遠心力と逆向き(中心向き)で、大きさは 0.60 N です。

答え: 遠心力 0.60 N、静止摩擦力 0.60 N(中心向き)

5どちらから見て解くか

加速する乗り物の問題は、地面の友だちから見ても、乗り物の中のあなたから見ても解けて、同じ式になります。ただし、最初に1つの見方を選び、最後まで混ぜません。

項目1・2 の電車をもう一度使います。電車は右へ 2.0 m/s² で加速し、天井から質量 0.50 kg のおもりを糸でつるしています。右を正の向きとします。この場面で、糸が引く力の水平の成分と鉛直の成分を、2通りの見方で求めます。

地面の友だちから見ると、おもりは右へ 2.0 m/s² で加速しています。力は、重力と糸が引く力の2つです。水平の向き: 運動方程式から、糸が引く力の水平の成分 = ma = 0.50 × 2.0 = 1.0 N(右向き)です。鉛直の向き: おもりは上下に動かないので、糸が引く力の鉛直の成分 = 重力 = 0.50 × 9.8 = 4.9 N です。

電車の中のあなたから見ると、おもりは止まっています。力は、重力と糸が引く力と、後ろ向きの慣性力 ma の3つです。水平の向き: つり合いから、糸が引く力の水平の成分 − ma = 0 です。移項すると、糸が引く力の水平の成分 = ma = 1.0 N で、友だちから見たときと同じ式になります。鉛直の向き: 慣性力は水平なので、友だちから見たときと同じく、糸が引く力の鉛直の成分 = 4.9 N です。

2つの見方は同じ式になるので、どちらを選んでも答えは同じです。乗り物の中で止まっている物体を調べるときは、あなたから見ると、力のつり合いの式だけで解けます。どちらの見方を選んだかを最初に決め、最後まで変えません。友だちから見ているのに慣性力を描くと、同じ ma を2回数えることになり、答えがずれます。

(a) ホームの友だちから見た、右へ加速する電車の中のおもり。糸は後ろへ傾き、おもりから重力4.9ニュートンと糸が引く力の矢印が出ている。おもりの右に離して、おもりの加速度2.0メートル毎秒毎秒の右向きの矢印がある (a) ホームの友だちから見る 電車の加速度 2.0 m/s² 重力 4.9 N 糸が引く力 おもりの加速度2.0 m/s²
(b) 電車の中のあなたから見た同じおもり。おもりから重力4.9ニュートン、糸が引く力、左向きの慣性力1.0ニュートン(破線)の3本の矢印が出ている。おもりは止まって見える (b) 電車の中のあなたから見る 電車の加速度 2.0 m/s² 重力 4.9 N 糸が引く力 慣性力 1.0 N おもりは止まって見える

右を正の向きとします。破線の矢印は見かけの力(慣性力)です。(a) の加速度の矢印は力ではないので、おもりから離して描いています。

確認

電車の中のあなたから見て式を立てるとき、おもりの加速度はいくつとしますか。

答え

0 m/s² です。あなたから見ると、おもりは止まっているからです。

例題

質量 0.30 kg の小さな球を糸でつるし、糸が鉛直から 45° 傾いたまま、球が水平な円(半径 0.90 m)の上を一定の速さで回るようにしました(このような振り子を円すい振り子といいます)。球の速さを、球と一緒に回る人から見て(遠心力を使って)求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。

0.90 m 45° 重力 糸が引く力 遠心力

破線の矢印は見かけの力(遠心力)です。

  1. 球と一緒に回る人から見ると、球は止まっています。球にはたらく力は、重力、糸が引く力、遠心力の3つです。
  2. 鉛直の向き: 糸が引く力の鉛直の成分は、重力 0.30 × 9.8 = 2.94 N とつり合います。
  3. 糸は鉛直から 45° 傾いているので、糸が引く力の水平の成分と鉛直の成分は同じ大きさです(直角二等辺三角形の2辺)。水平の成分も 2.94 N です。
  4. 水平の向き: 糸が引く力の水平の成分(中心向き)と遠心力 mv2/r(外向き)がつり合うので、0.30 × v2 ÷ 0.90 = 2.94 です。
  5. v2 = 2.94 × 0.90 ÷ 0.30 = 8.82 なので、v = √8.82 ≒ 2.97 ≒ 3.0 m/s です。

答え: 3.0 m/s

練習問題

重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。電車の問題は電車の進む向きを正、エレベーターの問題は上を正の向きとします。どの問題も、乗り物の中の人から見て、慣性力・遠心力を使って解いてみましょう。

パターン1 加速する電車の中

問1右へ走っている電車がブレーキをかけ、左向きに 1.5 m/s² の加速度で遅くなっています。電車の床に置いた質量 4.0 kg の箱は、床に対してすべらずに止まっています。箱が床から受ける静止摩擦力の大きさと向きを求めなさい。

答えを見る

6.0 N、左向き(電車の進む向きと逆向き)

電車の加速度は左向きなので、慣性力は右向き(前向き)で、大きさは 4.0 × 1.5 = 6.0 N。電車の中から見て箱は止まっているので、静止摩擦力は慣性力とつり合い、左向きに 6.0 N

問2電車の床に、質量 2.0 kg の箱を置きます。箱と床の間の静止摩擦係数は 0.30 です。止まっていた電車が右へ一定の加速度で動き出すとき、箱が床の上をすべり出さない最大の加速度の大きさを求めなさい。

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2.9 m/s²

電車の加速度を a とすると、電車の中から見て、箱には左向きに慣性力 2.0 × a がはたらく。すべらないとき、静止摩擦力(右向き)は慣性力とつり合う。床が箱を押す力(垂直抗力)は 2.0 × 9.8 = 19.6 N なので、最大摩擦力は 0.30 × 19.6 = 5.88 N。すべり出す直前は 2.0 × a = 5.88 で、a = 2.94 ≒ 2.9 m/s²

パターン2 エレベーターの中

問3下向きに 1.8 m/s² の加速度で動いているエレベーターの中で、質量 60 kg の人が体重計に乗っています。体重計の表示(体重計が人を押す力の大きさ)を求めなさい。

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480 N

エレベーターの加速度は下向きなので、慣性力は上向きで、大きさは 60 × 1.8 = 108 N。重力は 60 × 9.8 = 588 N(下向き)。エレベーターの中から見て人は止まっているので、体重計が押す力 + 108 = 588 から、体重計が押す力 = 480 N

問4エレベーターの天井から、質量 2.0 kg のおもりを糸でつるします。この糸は、引く力が 26 N を超えると切れます。エレベーターが上向きに加速するとき、糸が切れない最大の加速度の大きさを求めなさい。

答えを見る

3.2 m/s²

エレベーターの加速度を上向きに a とすると、エレベーターの中から見て、おもりには下向きに慣性力 2.0 × a がはたらく。おもりは止まって見えるので、糸が引く力 = 2.0 × 9.8 + 2.0 × a = 19.6 + 2.0 × a。これが 26 N になるのは、2.0 × a = 26 − 19.6 = 6.4 のときで、a = 3.2 m/s²

パターン3 遠心力

問5回転台の上の、中心から 0.25 m の所に、質量 0.10 kg の物体を置きます。物体と台の間の静止摩擦係数は 0.60 です。台の角速度をゆっくり大きくしていくとき、物体がすべり出さない最大の角速度を、台と一緒に回る人から見て求めなさい。

答えを見る

4.8 rad/s

角速度を ω とすると、台と一緒に回る人から見て、物体には外向きに遠心力 0.10 × 0.25 × ω2 がはたらく。すべらないとき、静止摩擦力(中心向き)は遠心力とつり合う。垂直抗力は 0.10 × 9.8 = 0.98 N なので、最大摩擦力は 0.60 × 0.98 = 0.588 N。すべり出す直前は 0.10 × 0.25 × ω2 = 0.588 で、ω2 = 23.52、ω = √23.52 = 4.849… ≒ 4.8 rad/s

問6長さ 0.50 m の糸の先に質量 0.40 kg の小さな球を付け、円すい振り子にしました。球は、糸をつるした点の 0.40 m 下の水平面の上で、半径 0.30 m の円を一定の速さで回っています。球の速さを、球と一緒に回る人から見て求めなさい。

0.50 m 0.40 m 0.30 m
答えを見る

1.5 m/s

球にはたらく力は、重力 0.40 × 9.8 = 3.92 N(下向き)、糸が引く力、遠心力(外向き)。糸が引く力は糸と同じ向きなので、水平の成分 : 鉛直の成分 = 0.30 : 0.40 になる。鉛直の向きのつり合いから、鉛直の成分 = 3.92 N。水平の成分 = 3.92 × 0.30 ÷ 0.40 = 2.94 N。水平の向きのつり合いから、0.40 × v2 ÷ 0.30 = 2.94、v2 = 2.94 × 0.30 ÷ 0.40 = 2.205、v = √2.205 ≒ 1.48 ≒ 1.5 m/s

0.50 m 0.40 m 0.30 m 鉛直の成分 3.92 N 水平の成分 2.94 N 糸が引く力 重力 3.92 N 遠心力

つまずきやすいところ

まとめ

要点

慣性力F = −maa は乗っている乗り物の加速度。慣性力の大きさは ma です。
遠心力F = mrω2 = mv2r回転の中心から外向き。ω・v は地面から見た値です。
使うとき慣性力・遠心力は、加速している乗り物と一緒に動く人から見るときだけ考える
見かけの重さエレベーターの加速度が上向きなら体重計の表示は大きく、下向きなら小さくなる

物理 第4章 円運動と単振動

  1. 等速円運動
  2. 等速円運動(向心力)
  3. 慣性力と遠心力
  4. 鉛直面内の円運動
  5. 単振動
  6. 単振動(速度・加速度,復元力)
  7. ばね振り子と単振り子
  8. 単振動のエネルギー
  9. 単振動の応用
  10. 単振動の応用(2)

高校物理の単元の一覧