要点
斜面の上のばね振り子は、つり合いの位置を中心に単振動します。周期は T = 2π√m/k で、斜面の傾きによりません。
実験台の上に、なめらかな斜面のある台を置きます。斜面の上の端にばねの端を留め、ばねの下の端に物体をつないで、斜面の上に置きます。物体を斜面に沿って少し引いて放すと、物体は斜面に沿って往復します。斜面の傾きの角を θ(シータ)と書きます。
このページでは、次の3つの手順で周期を求めます。
F = −Kx は、物体をつり合いの位置へ戻す力(復元力)の式です。K は正の比例定数で、マイナスは「ずらした向きと逆向き」という意味です。この形の力を受ける物体は、つり合いの位置を中心に単振動し、周期は T = 2π√m/K です(m は物体の質量)。
この項目では、ばねが伸びる向き(斜面に沿って下向き)を正の向きとします。d は、つり合いの位置での、ばねの自然の長さからの伸びです。x は、つり合いの位置からのずれです。ばねの自然の長さからの伸びではありません。x だけずれた所では、ばねの伸びは d + x です。ばねの弾性力の大きさは、ばね定数 k と伸びの積です。伸びが d なら kd です。
物体にはたらく力は、重力 mg、斜面が押す力(垂直抗力)、ばねの弾性力です。重力を、斜面に沿った分力 mg sin θ(斜面に沿って下向き)と、斜面に垂直な分力 mg cos θ に分けます。斜面に垂直な向きでは、垂直抗力と mg cos θ がつり合っています。斜面に沿った向きでは、弾性力 kd(斜面に沿って上向き)と mg sin θ がつり合います。だから、つり合いの位置では kd = mg sin θ です。
傾き 30° の斜面で、質量 2.0 kg の物体を、ばね定数 70 N/m のばねにつないだとします。斜面に沿った分力は mg sin 30° = 2.0 × 9.8 × 0.500 = 9.8 N です。つり合いの位置では 70 × d = 9.8 なので、d = 0.14 m です。つり合いの位置から 0.050 m 下(x = +0.050 m)では、ばねの伸びは 0.14 + 0.050 = 0.19 m で、弾性力は斜面に沿って上向きに 70 × 0.19 = 13.3 N です。合力は、上向きに 13.3 − 9.8 = 3.5 N です。0.050 m 上(x = −0.050 m)も同じように調べると、次の表になります。
| 位置 x [m] | −0.050(上) | 0(つり合いの位置) | +0.050(下) |
|---|---|---|---|
| ばねの伸び [m] | 0.090 | 0.14 | 0.19 |
| 弾性力(斜面に沿って上向き)[N] | 6.3 | 9.8 | 13.3 |
| 斜面に沿った分力(下向き)[N] | 9.8 | 9.8 | 9.8 |
| 合力 [N](伸びる向きを正) | +3.5 | 0 | −3.5 |
合力の大きさ 3.5 N は、70 × 0.050 = 3.5 N と同じです。合力は、いつもつり合いの位置へ戻す向きです。
つり合いの位置から x の所では、斜面に沿った合力は F = mg sin θ − k(d + x) = mg sin θ − kd − kx です。kd = mg sin θ なので、mg sin θ − kd は 0 になり、F = −kx が残ります。
F = −kx は F = −Kx の形で、K = k です。だから、斜面の上のばね振り子は、つり合いの位置を中心に単振動し、周期は T = 2π√m/k です。式に θ は入っていません。傾きで変わるのは、つり合いの位置(伸び d)だけです。
次の図で、斜面の傾きを変えると、つり合いの位置での伸びと周期のどちらが変わるかを確かめます。
横から見た図です。斜面はなめらかです。物体は、つり合いの位置から斜面に沿って 0.10 m 引いた所から放します。放す前と、止めた後に物体を止めている力は描いていません。物差しは、物体の真ん中の点の位置で読む、ばねの自然の長さからの伸びです(つり合いの位置からのずれ x ではありません)。0° は水平のばね振り子、90° は鉛直のばね振り子と同じです。破線の矢印は重力の分力です。図では、3 往復したところで物体を止めています(実際は往復を続けます)。
やってみよう
傾きを 30° にして「放す」を押し、伸び d と周期 T を読んでください。次に、傾きを 60° にして同じようにしてください。伸び d と周期 T のうち、変わったのはどちらですか。
伸び d は 0.16 m から 0.28 m に変わりましたが、周期 T はどちらも 1.1 s でした。
確認
斜面の上のばね振り子は、どこを中心に往復しますか。
つり合いの位置です。ばねが自然の長さになる位置ではありません。
例題
傾き 30° のなめらかな斜面の上の端に、ばね定数 35 N/m のばねを留め、下の端に質量 0.50 kg の物体をつなぎました。(1) つり合いの位置での、ばねの伸び d を求めなさい。(2) 物体を斜面に沿って少し引いて放したときの、単振動の周期を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s²、円周率は 3.14、sin 30° = 0.500 とします。
答え: (1) 0.070 m (2) 0.75 s
つり合いの位置で2本とも自然の長さのとき、台車をずらすと、2本のばねの力はどちらも戻す向きにはたらきます。K = k1 + k2 として周期を求めます。
実験台のなめらかな水平の面の上に、台車を置きます。台車の左と右に1本ずつばねをつなぎ、ばねの外側の端を、台に固定した板に留めます。台車が真ん中にあるとき、2本のばねはどちらも自然の長さだとします。
左のばねのばね定数を k1、右のばねのばね定数を k2 と書きます。小さい数字の 1・2 は、左のばねと右のばねを区別するための番号です。この項目では、右を正の向きとします。
台車が真ん中にあるとき、2本のばねはどちらも自然の長さなので、弾性力は 0 です。上下の向きの力(重力と垂直抗力)はつり合っています。だから、真ん中がつり合いの位置です。ここからのずれを x とします。
台車を右へ x ずらすと、左のばねは x 伸びます。伸びたばねは縮もうとして、台車を左へ引きます。大きさは k1x です。右のばねは x 縮みます。縮んだばねは伸びようとして、台車を左へ押します。大きさは k2x です。2本の力は、どちらも左向き(つり合いの位置へ戻す向き)です。
横から見た図です。面はなめらかです。右を正の向きとします。重力と垂直抗力は省いています。
左のばねを 20 N/m、右のばねを 30 N/m とし、台車を右へ 0.10 m ずらします(x = +0.10 m)。左のばねが引く力は 20 × 0.10 = 2.0 N、右のばねが押す力は 30 × 0.10 = 3.0 N で、どちらも左向きです。合力は左向きに 2.0 + 3.0 = 5.0 N で、F = −5.0 N です。これは (20 + 30) × 0.10 = 5.0 N と同じです。左へ 0.10 m ずらすと(x = −0.10 m)、左のばねは縮んで右へ押し、右のばねは伸びて右へ引きます。合力は右向きに 5.0 N(F = +5.0 N)です。
右を正にすると、合力は F = −k1x − k2x = −(k1 + k2)x です。これは F = −Kx の形で、K = k1 + k2 です。だから台車は真ん中を中心に単振動し、周期は T = 2π√m/(k1 + k2) です。ばねが1本のとき(K = k1)より K が大きいので、周期は短くなります。
次の図で、右のばねを付け替えて放し、周期がどう変わるかを確かめます。
横から見た図です。面はなめらかです。つり合いの位置では、2本のばねはどちらも自然の長さです。台車を 0.10 m 右へ引いて放します。図では、3 往復したところで台車を止めています(実際は往復を続けます)。
やってみよう
右のばねの「なし」のボタンを押してから「放す」を押し、周期 T を読んでください。次に、「48 N/m」のボタンを押して同じようにしてください。周期は何倍になりましたか。
1.6 s から 0.8 s になり、1/2 倍(半分)になりました。K が 16 N/m から 16 + 48 = 64 N/m の 4 倍になり、√4 = 2 なので、周期は半分です。
確認
2本のばねではさんだ台車を右へずらしたとき、縮んだ右のばねは、台車を右へ押しますか、左へ押しますか。
左へ押します。縮んだばねは伸びようとして、台車をつり合いの位置のほうへ押し返します。
例題
なめらかな水平の床の上で、質量 0.40 kg の物体の左に、ばね定数 40 N/m のばねを、右に、ばね定数 50 N/m のばねをつなぎ、ばねの外側の端を壁に固定しました。物体が真ん中にあるとき、2本のばねはどちらも自然の長さです。物体を少しずらして放したときの、単振動の周期を求めなさい。円周率は 3.14 とします。
答え: 0.42 s
重力加速度の大きさは 9.8 m/s²、円周率は 3.14 とします。sin 30° = 0.500、sin 60° ≒ 0.866 を使ってかまいません。摩擦と空気の抵抗は考えません。① つり合いの位置 ② x ずらしたときの合力 ③ K を読んで周期、の順に解いてみましょう。
問1傾き 60° のなめらかな斜面の上の端に、ばね定数 60 N/m のばねを留め、下の端に質量 0.80 kg の物体をつなぎました。(1) つり合いの位置での、ばねの伸びを求めなさい。(2) 物体を斜面に沿って少し引いて放したときの、単振動の周期を求めなさい。
(1) 0.11 m (2) 0.73 s
① 斜面に沿った分力は mg sin 60° = 0.80 × 9.8 × 0.866 = 6.789… N。kd = mg sin θ から d = 6.789… ÷ 60 = 0.1131… ≒ 0.11 m
② ばねが伸びる向き(斜面に沿って下)を正にすると、合力は F = mg sin θ − k(d + x) = −kx
③ K = k = 60 N/m。T = 2π√m/k = 6.28 × √0.80 ÷ 60 = 6.28 × √0.01333… = 6.28 × 0.1154… = 0.725… ≒ 0.73 s
問2ばね定数 30 N/m のばねに、質量 0.60 kg の物体をつなぎます。このばね振り子を、(a) なめらかな水平の床の上、(b) 傾き 30° のなめらかな斜面の上、(c) 天井からつるした鉛直の向き、の3通りに置きました。(a)〜(c) のそれぞれについて、つり合いの位置でのばねの伸びと、単振動の周期を求めなさい。
伸び (a) 0 m (b) 0.098 m (c) 0.20 m。周期はどれも 0.89 s
① つり合いの位置での伸びは、(a) ばねの向きに重力の分力がないので、自然の長さの位置がつり合いの位置で 0 m。(b) kd = mg sin 30° から d = 0.60 × 9.8 × 0.500 ÷ 30 = 2.94 ÷ 30 = 0.098 m。(c) kd = mg から d = 0.60 × 9.8 ÷ 30 = 5.88 ÷ 30 = 0.196 ≒ 0.20 m
② どれも、つり合いの位置から x ずらしたときの合力は F = −kx
③ K = k なので、周期はどれも T = 6.28 × √0.60 ÷ 30 = 6.28 × √0.020 = 6.28 × 0.1414… = 0.888… ≒ 0.89 s
問3なめらかな水平の床の上で、質量 0.60 kg の物体の左に、ばね定数 50 N/m のばねを、右に、ばね定数 25 N/m のばねをつなぎ、ばねの外側の端を壁に固定しました。物体が真ん中にあるとき、2本のばねはどちらも自然の長さです。物体を少しずらして放したときの、単振動の周期を求めなさい。
0.56 s
① 真ん中では2本のばねの弾性力が 0 なので、真ん中がつり合いの位置
② 右を正にして x ずらすと、F = −50x − 25x = −75x
③ K = 75 N/m。T = 6.28 × √0.60 ÷ 75 = 6.28 × √0.0080 = 6.28 × 0.08944… = 0.561… ≒ 0.56 s
問4なめらかな水平の床の上で、質量 0.36 kg の物体の左に、ばね定数 40 N/m のばねを、右に、ばね定数 60 N/m のばねをつなぎ、ばねの外側の端を壁に固定しました。物体が止まっているとき、左のばねは自然の長さより 0.12 m 伸びていて、右のばねも伸びています。(1) 物体が止まっているときの、右のばねの伸びを求めなさい。(2) 物体を少しずらして放したときの、単振動の周期を求めなさい。
(1) 0.080 m (2) 0.38 s
① 止まっている位置がつり合いの位置。左のばねは物体を左へ 40 × 0.12 = 4.8 N 引き、右のばねは右へ引く。つり合っているので、右のばねも 4.8 N で引く。右のばねの伸びは 4.8 ÷ 60 = 0.080 m
② 右を正にして x ずらすと、左のばねの伸びは 0.12 + x で、左へ 40(0.12 + x) 引く。右のばねの伸びは 0.080 − x で、右へ 60(0.080 − x) 引く。合力は F = −40(0.12 + x) + 60(0.080 − x) = −4.8 − 40x + 4.8 − 60x = −100x
③ K = 100 N/m。T = 6.28 × √0.36 ÷ 100 = 6.28 × √0.0036 = 6.28 × 0.060 = 0.3768 ≒ 0.38 s
2本とも伸ばしてつないでも、つり合いの位置での 4.8 N どうしは打ち消し合い、ずらしたときに変わる分(40x と 60x)だけが残ります。
要点
物理 第4章 円運動と単振動