要点
等速円運動をする物体には、円の中心を向く合力がはたらいています。この合力を向心力といい、大きさは F = mrω2 = mv2/r です。
なめらかな水平の台の上で、質量 0.50 kg の球に長さ 0.50 m の糸を付け、糸の端を台の中心のくぎに留めます。球は、くぎのまわりを、半径 0.50 m の円の上で、一定の速さ 3.0 m/s で回っています。このように、円の上を一定の速さで回る運動を、等速円運動といいます。
速度の向きは、その点で円に引いた接線(円にその 1 点だけで触れる直線)に沿った、進む向きです。等速円運動では、速さは一定でも、速度の向きが変わり続けます。だから加速度があり、その向きは円の中心です。これを向心加速度といいます。向心加速度の大きさ a は、円の半径 r と速さ v を使って、a = v2/r です。角速度 ω(オメガ)は、1 s あたりに回る角です(単位 rad/s)。v = rω なので、a = rω2 とも書けます。この球では、a = v2/r = 3.02 ÷ 0.50 = 18 m/s² です。
運動方程式 ma = F は、「質量 × 加速度 = 合力」で、加速度と合力は同じ向きです。だから、等速円運動をする物体にはたらく力の合力は、円の中心を向いています。合力の大きさは、向心加速度 a = rω2 = v2/r に質量 m を掛けて、次の式になります。
この球では、F = ma = 0.50 × 18 = 9.0 N で、中心を向いています。
円の中心を向くこの合力を、向心力といいます。向心力は、重力や糸が引く力と並ぶ、別の種類の力ではありません。物体にはたらいている力の合力に付けた呼び名です。
球にはたらく重力と、台が押す力(垂直抗力)は、上下の向きでつり合っています。水平の向きにはたらく力は、糸が引く力だけです。だから、この球では、糸が引く力 9.0 N が向心力です。
糸を切ると、球には水平の向きの力がはたらかなくなります。力がはたらかない物体や、はたらく力がつり合っている物体は、そのときの速度のまま進み続けます(慣性の法則)。
下の図で、球を回す速さを変えると糸が引く力がどう変わるか、糸を切ると球がどう動くかを確かめます。
上から見た図です。重力と垂直抗力は描いていません(上下でつり合っています)。動きは実際の 1/2 の速さで見せています。
やってみよう
回す速さを 1.0 m/s にして、糸が引く力を読んでください。次に、2.0 m/s に変えてください。糸が引く力は何倍になりましたか。そのあと「糸を切る」を押して、球がどの向きへ進むかを見てください。
1.0 N から 4.0 N へ、4 倍になりました。F = mv2/r なので、速さが 2 倍になると力は 2 × 2 = 4 倍です。糸を切ると、球は切った瞬間の速度の向き(切った点での円の接線の向き)にまっすぐ進みます。糸の向き(半径の向き)にまっすぐ外へ飛び出すのではありません。
確認
向心力は、重力や糸が引く力とは別の、もう 1 つの力ですか。
いいえ。はたらいている力の合力の呼び名で、図の球では糸が引く力が向心力です。
例題
なめらかな水平面の上で、質量 0.20 kg の球に長さ 0.40 m の糸を付け、糸の端を固定して、角速度 5.0 rad/s で等速円運動させました。糸が球を引く力の大きさを求めなさい。
答え: 2.0 N
向心力になる力は場面ごとに違います。はたらく力をすべて描き、中心向きの成分の和を mrω2 と等しいとおきます。
項目1 の球では、糸が引く力が向心力でした。向心力になる力は、場面によって違います。次の 2 つの場面で見てみます。
水平に回る円い台(回転台)が、一定の角速度 3.0 rad/s で回っています。中心から 0.30 m の所に、質量 0.10 kg の小さな物体を置きます。物体は台の上ですべらず、台と一緒に回っています。
物体にはたらく力は、重力、台が押す力(垂直抗力)、台の面からの静止摩擦力です。重力と垂直抗力は上下の向きで、つり合っています。物体が円の中心向きに加速するには、中心向きの力が要ります。水平の向きの力を出せるのは、台の面だけです。だから、静止摩擦力が中心を向き、これが向心力になります。
天井から糸でおもりをつるし、おもりが水平な円の上を回るようにします。糸は、円すい(とんがり帽子の形)の側面をなぞるように回ります。これを円すい振り子といいます。おもりにはたらく力は、重力と、糸が引く力の 2 つです。糸が引く力の大きさを S と書きます。円の中心は、おもりと同じ高さで、糸をつるした点の真下にあります。重力と糸が引く力の合力が、水平に円の中心を向き、これが向心力になります。
向心力になる力は、次の手順で見つけます。
回転台の物体(中心から 0.30 m、0.10 kg)と台の間の静止摩擦係数を、μ(ミュー)= 0.50 とします。中心向きに必要な力は、mrω2 = 0.10 × 0.30 × 3.02 = 0.27 N です。静止摩擦力には上限があり、すべり出す直前の最大摩擦力は f0 = μN です(N は垂直抗力の大きさ)。台の上の物体では、上下のつり合いから N = mg なので、重力加速度の大きさ g = 9.8 m/s² を使って、f0 = 0.50 × 0.10 × 9.8 = 0.49 N です。必要な 0.27 N は 0.49 N より小さいので、静止摩擦力 0.27 N が向心力になり、物体はすべらずに回ります。
置く位置を外にするほど、r が大きくなり、必要な力 mrω2 が大きくなります。必要な力が最大摩擦力 0.49 N を超えると、静止摩擦力では足りません。物体は台の上をすべり、台に対して外側へずれていきます。
下の図で、物体を置く位置を変えて、すべらずに台と一緒に回れるかを確かめます。
物体は 0.10 kg、静止摩擦係数は 0.50 で、最大摩擦力は 0.49 N です。物体の大きさは考えません。すべった後の動きは目安です。
やってみよう
置く位置を 0.30 m から少しずつ外へ変えて、物体がすべらずに台と一緒に回れる、一番外側の位置を探してください。そのときの、中心向きに必要な力はいくつですか。
0.50 m です。必要な力は 0.45 N で、最大摩擦力 0.49 N より小さいです。0.60 m では必要な力が 0.54 N になり、最大摩擦力を超えるのですべります。
確認
回転台の上ですべらずに回っている物体には、重力・垂直抗力・静止摩擦力がはたらいています。このうち、向心力になっているのはどれですか。
静止摩擦力です。重力と垂直抗力は上下の向きで、中心向きの成分がありません。
例題
長さ 0.40 m の糸の先に、質量 0.10 kg のおもりを付けて天井からつるし、円すい振り子にしました。糸は鉛直の向きと 60° の角をなしています。糸が引く力の大きさ S と、おもりの角速度 ω を求めなさい。重力加速度の大きさは 9.8 m/s²、三角比の値は cos 60° = 0.50 です。
答え: 糸が引く力 2.0 N、角速度 7.0 rad/s
重力加速度の大きさは 9.8 m/s² とします。
問1なめらかな水平の台の上で、質量 0.50 kg の球に長さ 0.50 m の糸を付け、糸の端を台の中心のくぎに留めて、速さ 4.0 m/s で等速円運動させました。球の向心加速度の大きさと、糸が球を引く力の大きさを求めなさい。
向心加速度 32 m/s²、糸が引く力 16 N
向心加速度は a = v2/r = 4.02 ÷ 0.50 = 32 m/s²。重力と垂直抗力は上下でつり合うので、中心向きの力は糸が引く力だけ。糸が引く力は F = ma = 0.50 × 32 = 16 N
問2なめらかな水平面の上で、質量 0.20 kg の球に糸を付け、糸の端を固定して、半径 0.50 m の円の上で等速円運動させます。糸は、引く力が 10 N を超えると切れます。糸が切れずに回せる最大の速さを求めなさい。
5.0 m/s
糸が引く力が向心力なので、F = mv2/r。F が 10 N のときが最大の速さなので、10 = 0.20 × v2 ÷ 0.50。v2 = 10 × 0.50 ÷ 0.20 = 25 なので、v = 5.0 m/s
問3水平に回る回転台の、中心から 0.20 m の所に、質量 0.050 kg の物体を置きました。物体と台の間の静止摩擦係数は 0.40 です。回転台の角速度を少しずつ大きくしていきます。物体がすべらずに台と一緒に回れる、最大の角速度を求めなさい。
4.4 rad/s
向心力は静止摩擦力。上下のつり合いから垂直抗力は N = mg なので、最大摩擦力は μmg。すべらない最大の角速度では、mrω2 = μmg。両辺の m を消すと rω2 = μg なので、ω2 = μg ÷ r = 0.40 × 9.8 ÷ 0.20 = 19.6。ω = √19.6 = 4.42… ≒ 4.4 rad/s
質量 m は式から消えるので、答えは物体の質量によりません。
問4天井から糸でつるした質量 0.20 kg のおもりが、円すい振り子として、半径 0.40 m の水平な円の上を等速円運動しています。糸は鉛直の向きと 45° の角をなしています。おもりの速さを求めなさい。三角比の値は sin 45° = cos 45° です。
2.0 m/s
おもりにはたらく力は重力 mg と糸が引く力 S。上下のつり合いから S cos 45° = mg。中心向きでは S sin 45° = mv2/r。sin 45° = cos 45° なので、S sin 45° = S cos 45° = mg。だから mg = mv2/r で、両辺の m を消すと v2 = gr = 9.8 × 0.40 = 3.92。v = √3.92 = 1.97… ≒ 2.0 m/s
要点
物理 第4章 円運動と単振動